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昨日の参議院予算委で、与党議員は早期英語教育をさらに進めるよう要求

2011-12-07 04:46:45 | 教育関連

昨日の参議院予算委員会で、与党の民主党は何を問題にしていたかというと、

「日本にもっと外国人が入ってくるように!(それで外国人が日本でお金をもっと使ってもらえるように)」

ということであった。その流れなのか強引なのか、最後は日本の小学校以下での英語教育についての質問であった。

 

<民主党 牧山ひろえ議員>

 

 

<また画像が大きくて失礼。日本と、シンガポール・韓国の英語教育の比較の図>

 

まあステレオタイプというか何というか、相も変わらず、

・「外国では幼児期からバイリンガル教育を行っている!」

・「英語は世界語だ!」

・「試験のための英語教育はムダだ!」

の三点セットである。しかも三点目は、中川文科大臣まで認めてしまった。

 

中川文科大臣:「受験を意識した形での英語への取り組みでは、(外国人に英語が)通じないと。」

 

与党からの質問だと思って、好き勝手なことを言ってますな相変わらず(苦笑)。日本に来た外国人に英語を通じさせたければ、中学でも高校でも、「外国人に道を聞かれたら」というロールプレイを必須として入れればいいだけである。何も、幼児期から英語教育を徹底的に行わなければならない必要はどこにもない。

裏を返せば、日本人のほとんどは、英語教育の中で、「もし外国人に道を聞かれたら」というロールプレイをやっていないだけのことだ。

これ以外にも、

・写真を撮ってくれと頼まれたら

・日本の文化をいくつか英語で説明する

という「ロールプレイ」を、中高の英語のどこかに入れればよい。それだけで、この議員が心配している「海外からの外国人が、日本で英語が通じない」状況はなくせる。

 

しかしこの議員、神奈川選出ということで、いかにもありがちな

「早く英語を勉強すれば早くしゃべれるようになる」

と信じて疑わない、典型的な「英語教育せかしママ」である。「日本語教育も大切だ」と言ってはいたが、では英語と日本語を幼少期からがっつり教えると、その他の科目は減らしていいのか?その理由は??小学生英語の教員養成や免許はどうするの?などなど、プランに付随する重要な制度面での提案が、与党議員でありながら全くない。くどいが、与党議員であるならば、質問するときにあらかじめ文科省の役人たちに、小学校で英語教育をもっと充実させるにはどうしたらいいか、現状の問題点を聞いてくるなどの地道な作業が必要である。そんなことを私ごときに指摘される程度の、実にレベルの低い質問であった。

 

「英語教育せかしママ」とは、

・とにかく早い段階から、

・英語を、文法ではなく会話中心に教えれば、

・ものごころつく頃には英語をペラペラ話せる、聞ける

と思い込み、学校や教育界に何とかそういう「早期英語教育」をねじ込もうとするママたちだと定義できる。しかし、こういうママたちには欠けている、決定的なポイントが一つある。それは、早期教育全てに当てはまることだ。すなわち、

 

・その子の「脳の器」が、「晩成型」ではなく、「早熟型」でなければならない

 

ということだ。現場で何を教えていても、とりあえずうわべのパターンだけをマネしようとするのが「早熟型」で、「わかった!」という理解感なしには前に進めないのが「晩成型」だと分類できる。現場の感覚だけで語って申し訳ないが、早熟型は早く覚える代わりに早く忘れ、晩成型は覚えるのに時間がかかるが、覚えたことは忘れにくいという一般的特徴を持つ。

早期英語教育にとっては、その子の脳がある程度、パターンプラクティスに耐えうる「早熟型の脳」であることが重要だ。さらに、相手とコミュニケートするためには、ごく早い段階から、「三単現のS」や「過去形」や「助動詞のcan や willなど」まで教えなければならない。そうなると、当然、文法用語をできるだけ使わないのであれば、ほぼ毎日英語をやらなければならないということになる。そりゃそうだ。文法を教えないのだから、さまざまなルールを「習うより慣れろ」という形で子どもたちに「押しつけ」なければならないのだから。

 

ある子が中学受験をめざす場合も、私ならその子が、中学受験に必要な学習内容にどれだけ「食いつき」を見せるか、という点を重視する。中学受験に必要な知識は、特に理科や社会、算数の特殊算などに見られるように、一般的な中学や高校レベルを超えている部分がある。例えば日本地理に対する詳しさは、中高よりも、中学入試の社会の方がよほど細かい。そういう細かい暗記に対して、好奇心を持って接することができない子供は、そもそも中学受験に向かないのだ。だから少なくとも私は、そういう子供には中学受験は勧めていない。

 

幼児、あるいは小学校低学年からの、「みっちり型」の英語教育は、ある意味でこの「激しい詰め込み教育」に似ている。パターンプラクティスの中で徐々に教えるとは言え、今まで習った「音」と「その音が役立つ状況」をセットで覚え、それを再現する練習をしなければならないのだから。さらに、自ら他人に英語で何かを語るためには、語りたいことを、英語では何と言うのかを自分で調べる必要すら出てくる。そうなると、電子辞書であっても、和英辞典が使える必要が出てくる。そうなると、結局は「三単現」や「過去形」や「原形」などの「文法用語」が必要となってしまうのだ(そうでなければ、辞書で引いた言葉を自分で会話に使うことができない)。

 

「じゃあシンガポールや韓国ではどうなんだ!」と思うであろう。答えは簡単だ。韓国は日本どころではない格差社会であるし、シンガポールも、ついて来られない子は置いていく。結果として日本以上の格差社会になっている。

 

不況風、格差あらわ 株式会社国家シンガポール(2) (朝日さん 2009年4月11日、リンク切れ)

こちらのサイト様から引用させていただいた。

 

「最悪の場合、景気回復には4~6年かかるかもしれない。我が国の経済が輸出に依存しているからだ」。リー・クアンユー顧問相は3月21日、講演でシンガポール経済の先行きについて厳しい見通しを示した。

国内市場が小さく、石油化学、電子機器、医薬品など産業の大半が輸出向けだ。世界不況の直撃を受け、独立以来最悪の不況となるとの見方が強まっている。国民への職の確保を使命とする「株式会社国家」。しかし、10年半ばまでに10万人近くが失業し、失業率が過去20年で最悪の5%になるとの予測も出ている。



西部にある集合住宅に暮らすライ・シュークアンさん(36)はパソコンや携帯電話などのケースを機械で成形する仕事をしていたが、昨年4月、失業した。給料の安い中国やインドネシアからの労働者が担当するようになったためだ。実はライさんが教育係だった。「私の知識や技術を一生懸命に教えたら、自分がクビになってしまった」

以前は2千シンガポールドル(Sドル、1Sドル=約65円)の月収を得ていた。今はフードコートで働く妻(35)の月収と、住居の一部屋を貸して得る収入を合わせても半分に満たない。食べ盛りの8歳と7歳の息子を抱え、「好きなだけ食べさせてあげられないのがつらい」と妻。貧しくても教育だけは受けさせたいと夫婦は願う。

ライさんは、なぜ他国から来た人が職を奪うのか、と憤る。「国民に仕事を保障するのが政府の役割じゃないのか。外国人が私たちの仕事を奪い、より広い家に住み、ぜいたくに暮らすのは納得がいかない」

世界から富裕層や人材を集めてきたシンガポールは、貧富の格差が激しい。所得格差を示す08年のジニ係数は0.46。社会不安定化の警戒ラインと言われる0.4を超えている。

ライさん一家は、子供をこれ以上産まないことを条件に、政府が5万Sドルの一時金や就学費用などを援助する「HOPE」という支援策を受けることにした。妻は2月末、政府の補助で不妊手術を受けた。「自分が稼げれば、妻にこんな手術を受けさせることもなかった」とライさんは悔やむ。今年1月時点でのHOPE受給世帯は前年より約300増え、1700世帯を超えた。

「とにかく必要なのは仕事。国民が安心して働けるようにしてほしい」。ライさんは訴えている。

(後略)

 

ということは、韓国もシンガポールも、みんなが英語がペラペラで、そのことが国民のhappinessに必ずしもつながっていない、ということでもある。

 

ここまで見ていけば、最初に書いたように、中高のどこかで、「道案内」のロールプレイをとりあえず入れることにして、あとはじっくり、人材育成やどこを削るかの話も含めて、早期英語教育の是非を議論していけばよかろう。

 

しつこいが、この程度の議論を、与党議員が提起できないというレベルの低さは何なのか。「予算委員会で、実質的な予算の話をしろ!」などといきり立っている民主党信者よ。民主党議員と内閣のこのレベルの低さを、めんたま見開いてよく見ておくがいい!!

 



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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
英語で語れない人の量産体制が・・・ (ykimata)
2011-12-08 08:19:39
「英語教育せかしママ」いいネーミングですね、頂戴します。

発音がDJみたいにかっこいい=英語ができる
これで儲かってる早期英語教室もあるんでいいお客です。

でも、ビジネスで四苦八苦しながら使ってると
コミュニケーションツールなんで
「英語が話せる」ことよりも「英語で語れる」ことが重要と
ネイティブに言われたことがあります。
返信する
英語で語れるためには (白河)
2011-12-09 05:02:00
コメントありがとうございます。

「英語で語れる」ためには、ますます「文法」や「語彙力」が必要なはずなんですが、少なくとも国会レベルでは、受験英語は「英語で語れる」には「障害」になっているようですね。


A Native: What's your favorite movie?

A Japanese: Star Wars!

A Native: In what point do you like the movie?

A Japanese: The main character is very good!

A Native: Tell me in more details. In what point?

A Japanese: ・・・・

A Native: That's why Japanese are yellow monkeys. Ha Ha!

「文法」や「語彙」を軽視したまま、この「・・・・」を避けることなんぞできるんですかねえ?少なくとも私にはムリです(笑)。


ま、民主党議員はこの程度のバカ揃いってことですな。
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