巨人戦が最終戦だったので第1部は録画してまだチラチラとしか観ていないが、9時から始まった第2部の「市民討論」は、以前の「市民討論」と全く同じように、いわゆる「放射脳」な方々にはガス抜きにもならなかった1時間半であった。
まずは、fact面の整理から。
ベラルーシのウラジーミル・バベンコ氏が「日本よりずっと低いデース!」とドヤ顔で自慢していた放射性物質の規制値は、今から「10~12年くらい前」に、以下の数値に設定されたとのこと。チェルノブイリ原発事故は25年前であるから、原発事故が起こってから少なくとも12年以上経ってから、以下の規制値に決められたということだ。
<日本とベラルーシの放射性セシウムの基準値(現時点)>
以前この記事に書いたように、「牛乳」だと、ベラルーシでは1リットルあたり100ベクレルで、日本では1リットルあたり200ベクレル。
「牛肉、羊肉」だと、日本とベラルーシは同じ数値で500ベクレル。
「野菜・穀類」は、ベラルーシでは野菜が100ベクレル/キログラムで、日本の500ベクレル/キログラムよりはるかに低く見えるが、よく見ると、ベラルーシの、穀物の基準値が示されていない。
あ、ここに載っていた。穀物は、370ベクレル/キログラムである。チェルノブイリ原発事故が今から25年前に起こったことを考えると、この数値は「日本よりはるかに低い」とは全然言えないということは以前この記事にも書いたし、その結論は、この「情報」を見ても変わらない。わざと情報を「 」でくくったのは、これはベラルーシがソ連時代だったときの数値であるから、数値として正しいかどうかがわからない可能性があるからだ。
ところが、チェルノブイリ原発事故が起こった1年後の規制値は、以下の真ん中の列に示されているように、日本の現在の暫定規制値よりはるかに高かったとのこと。上にリンクを貼ったページで言えば、「TPL-88」の数値である。
<チェルノブイリ原発事故が起こった1年後(1987)に設定されたベラルーシの基準値。
赤い波線は私。>
特に、「肉・卵・魚・その他」の高さが突出している。ベラルーシでは1850~3000ベクレル/キログラムなのが、今の日本では500ベクレル/キログラムである。
牛乳も、チェルノブイリ1年後のベラルーシの方が、福島原発事故後7ヶ月の今の日本の約1.8倍という規制値である。
くどいが、バベンコ氏が、
「日本の規制値は高くて信じられナーイ!!」
と騒ぐような規制値では全然ない。
「ベラルーシの以前の規制値を忘れたーノォーデスカァ?日本でCT受けていきマスかぁ?放射線使いマスけどぉ」
とでも答えてあげればよいのだ。
番組後半で、「測った全ての測定値を公開してほしい!その上で、『私の家はベラルーシで行く!』と自分で決めたい」などという意見が出ていたが、「あなたの家がベラルーシで行く!」ということは、この図の真ん中の列の数字で行くということであって、右側の列で行くということではない。放射脳な人にもわかりやすく言うのなら、今では日本より規制値がやや低くなっているベラルーシでさえ、原発事故の1年後の改訂数値は、下げた上でも、この真ん中の列の数値だったのだから。
次に、討論で開いた口がふさがらなかった点。
上の話とかぶるが、1時間半の間、多くの「市民」が、
「測った数値を全て公開して下さい!その数値を見て、消費者が一人一人の基準で買うものを決めますから!」
と繰り返し政府などに求めていた点。少しは具体化して考えなよ。そういう要求は、あらゆる食品に、「このパックは14ベクレル」とか「このパックは132ベクレル」とか表示しろと言っているのと同じこと。スーパーで、そんな食品が並んだら、消費者は1ベクレルでも低い食品をめがけて殺到するだけである。こういう意見を繰り返し言えるというのは、「こういう政策をとったら、こういう事態になるだろう」という想像力が恐ろしいほど貧困である証拠であるがゆえに、当ブログでも「放射脳な方」という言葉を使わせていただいた。番組に出ていた放射線医学総合研究所の人も、
「全数を測って全数について放射線値を表示することは、物理的にも時間的にも不可能です。ですから、どうか放射線について勉強していただいて、暫定規制値以下なら安全であるということを理解していただきたい。我々も、伝える努力を今後とも続けていきたい。」
と、ごくごく控えめに言っていた。
<放射線医学総合研究所 杉浦紳之氏>
生産者の悲鳴としても、「基準値があっても、『もっと低いものを下さい。1ベクレルのものでもダメです』という声があるんですよ」という発言が出、胸に刺さるが、全体の流れとしては、放射脳な方々の脳には全くそのメッセージが入っていっていないようであった。
ある市民が「政府を信頼できなくなっているからこういう事態になっているんですよ!」と言っていた。私は民主党はダイキライだが、それでも声を大にして言いたい。政府が何党だろうが、放射線が人体に与えるメカニズムを理解しようという気持ちがなければ、信頼もへったくれもない。その意味で、現在の局面でまず「勉強」すべきなのは、国民の方である。
逆に、政府が信頼されるようになっても、先週のストロンチウム発見であるなどの、「想定外の状況」はいつ、どのようにして起こるかわからない。SPEEDIの計算結果も決して万能ではないのだ。いちいち、想定外の状況が起こったからと言って、そのつど
「ホラ見たことか!だから政府は信用できないんだ!」
と騒ぐのは、ただの総会屋でしかない(中にはそうだとわかってて総会屋をやっている確信犯もいるのだろうが)。そんな脳髄反射をいくら繰り返しても、あなた自身も、あなたの子どもも、全然守れませんよということだ。
その意味で、冒頭に紹介されていた横浜の主婦は痛々しかった。富裕層なのはわかるから、そのカネをもっと景気浮揚になる方面へ向けてほしいものだ。
安心しているところに水を差すようで悪いが、九州でも「バックグラウンド放射線」というのが飛び交っている。宇宙や地面から、どの地域にも放射線が降り注いでいるのだから(地域によって濃淡はある)。セシウムが0ベクレルであっても、自然放射線を発するカリウムや炭素の放射性物質の含有量はわからない。wikipediaによると、
「体重60kgの人体にも、カリウム40で4,000ベクレル、炭素14で2,500ベクレルの天然の放射線物質がある」
とある(ソースはこちら(PDF))。
そして、アルファ線、ベータ線、ガンマ線の違いを除けば、カリウムや炭素などの天然放射線と、原発事故によるセシウムやストロンチウムなどの「人工」放射線の影響は同じである。放射性セシウムから発せられる放射線が、カリウムや炭素から出る放射線と比べて、有意に危険というわけでは全然ないのだ。
だとするならば、このお母さんが、お子さんに精一杯やれることというのは、お子さんの「放射能ストレス」をできるだけ軽減させてあげることの方である。
これで締めは「根本の言葉は信頼ですね!」って・・・信頼できないからこういう「市民討論」とやらを開いているのだから、そこが議論の締めではなく、スタートでなければならない。そんなこともわからないNHKというか、この「討論」で、各者の立場が全く歩み寄りを見せなかったといういい証拠なのだろう、この締めの言葉は。
写真も豊富で手のこんだブログですね、今後参考にさせていただきます
どうぞよろしくお願いします
地デジをPCでキャプチャーするのには、市販の地デジ受信チューナーを買うだけでは全然足りなくて、ものすごくめんどうな工夫が必要なのですが、一度そういうシステムを作ってしまえば、当ブログのように、キャプチャー画像をふんだんに入れることができるので楽です。
あと、ディスプレイの設定によっては、このブログの背景色が目に痛いかも知れません。この背景色を設定したのはもう何年も前なので、やり方を忘れてしまっていますが、ちかぢかこの色も少し変えたいと思っております。
またご意見などありましたら、一番上にある「ローカルルール」をお読みの上、よろしくお願いします。←こんなことを言いたくはないのですが、先週も、ローカルルールを読まずに暴れていったかわいそうな人がいますので、あくまでも「念のため」ということでご寛恕いただければありがたいです。