病(やまい)、膏肓(こうこう)に入(い)る
―― 疾、在肓之上、膏之下
『左伝』
むかし、 晋(しん)の景(けい)公が重い病に倒れたときのことである。隣国の秦(しん)から高緩(こうかん)という名医を呼んで診察を仰ぐことにした。その前の晩、景公は夢をみた。病が二人の童子(どうじ)の力をかりて、こんな話をしているのである。
「秦から高緩がやってくるそうだ。いよいよおれたちも危いな。いったいどこへ逃げたらよいのか」
「肓(横隔膜)の上、膏(心臓の下の薄い膜)の下なら安全だ。あそこへ逃げ込もう」
さて、翌日高緩がやってきて、さっそく診察にかかった。そして診おわると、「まことに申し上げにくいのですが、病は肓の上、膏の下に入り込んでおります。ここは鍼も薬もとどかぬところ、もはや治療のしようがございません」と語った。景公は間もなく死んだという。
病気だけではない。どんな仕事でも、病、膏肓に入らぬうちに、早目に手を打つことを心がけねばならない。
以上、「中国古典一日一言」(守屋洋)より
今日も一日がんばりましょう。