2か月前に京都で見た毛虫のことが忘れられない。
鴨川沿いのベンチに座ろうとしたとき、足元に鮮やかな色が見えて
思わず足を引っ込めた。
そこには下半身を踏みつぶされた黄色の毛虫がいた。踏みつぶされてから
時間がたっているようで茶色に変色した下半身は干からびて歩道に貼りついていた。
踏まないようにベンチに腰かけて一服していると、視界の端で何かが動いた。
ドキリとして目を向けると死体と思っていた毛虫が上半身を持ち上げて
こちらを見ている。
毛虫は死んでいなかった。
また黄色い毛虫がビクッと動く。近づいてみると毛虫は蟻の群れに生きたまま
体を食いちぎられている。
踏みつぶしてやろうか。そうすればコイツは一瞬にして痛みから永遠に解放される。
もう誰がどうしてもこの虫を助けることなんてできない。こんな
生き地獄のまま死んでいくよりは、そのほうがいいのではないか。
チラッとそう思った。
でも本当にそうだろうか。
仮に生き地獄でも生きているほうがいいと思っているかもしれない。
そんな判断は僕がすることじゃない。
なんか悩んだ末にそのままにしておいた。
毛虫にとって、それがよかったのかどうか。
今でも分からない。
毛虫、それでよかったんじゃないかな、と思います。