北米5000キロ横断RUN
冒険家、友の遺品持ち「新たな挑戦」
北米大陸約五千キロを一人で走って横断する旅に、和歌山県出身の冒険家、坪井伸吾さん(41)が挑戦する。5月9日に日本を出発、10キロ超の荷物を背負いながら、約3ヶ月かけて米ロサンゼルスからニューヨークまでを走りぬく予定だが「あまり気負いこまず、普通にそのへんを走っている人のような感じで走れれば」と話す。横断ランには徒歩で北米・南米を旅しながら志半ばで亡くなった友人の遺品を
持って行くことにしており、壮大な挑戦は、亡き友の志を継ぐ旅でもある。
坪井さんは同志社大学在学中からオートバイで海外ツーリングに出かけ、卒業後にはアマゾン川をイカダで下るなど、世界各地でさまざまな冒険を行ってきた。
20年前には、ほとんど練習をせずにホノルルマラソンを完走。その後、走ることはやめていたが、昨年100キロマラソンに初めて挑戦して成功。バイクで世界一周も達成し、「新しい挑戦」を探していた中で、自分の限界に挑戦してみたくなったり、米国横断ランを計画した。
その際、脳裏には大学卒業後の南米ツーリングの途中にチリで知り合った友人、池田拓さん=享年26=の顔が浮かんだという。池田さんは車や鉄道を使わずに北米・南米を歩いて旅を続け、旅行者からは「ウォークマン」と呼ばれた人気者だった。だが、平成4年にアルバイト先の工事現場の事故で急逝。坪井さんはその4年後に、海外ツーリングから戻った際に初めて池田さんの死を知ったという。
今回、出発前に山形県に住む池田さんの両親を訪ね、遺品から「トビオウのキーホルダー」を預かった。たった一人で一歩一歩米大陸を歩き続けた池田さんをしのぶ意味もこめて、旅の友にすることにしたという。
北米横断マラソンは、1990年代から「超ウルトラマラソン」として開催されてきた。5000キロという距離も長いが、気温40度を超えるモハベ砂漠、標高3500メートルを超すロッキー山脈などの難所が待ち受けるハードあな行程。大会は一日50-90キロのステージを設定された時間内に走りきらなければ失格するというもので、日本人も完走している。
しかし、給水や食料、宿泊所など主催者や協力者のサポートがある大会と違い、一人旅の坪井さんにはサポートはない。町から離れた場所では野宿する予定だが、ガラガラヘビなど危険な生物もいるため、テントや寝袋は必需品。雨具や着替え、水、食料もすべて背負って走ることになり、バックの総重量は10キロを超えるという。
困難は多いが、坪井さんは「一人でどこまでやれるか試すほうが、面白そう」と話す。予定では一日55キロを走り、約90日後にゴールのニューヨーク・セントラルパークにたどり着く。