車で○○の家へと向かった私たちではありましたが、彼女の心をどう学校へと向
けさしていくのか…、全く確証があるわけではありませんでした。
車内を包み込む不安…、4人はそれを察してか、○○のことには一切触れず、取り
留めのない会話を交わしていました…。
やがて○○宅に到着し、○○を車に迎え入れましたが、表情はいつもと違い、少
しこわばった感じに見受けられました。そんな彼女が車内に入ってすぐに一言…
「今後のことはここ(=車で)でなく、後で、教室で話す…」
迎えに行った4人はその言葉の意味を悟るも、何事もなかったように歓談を始めま
した…。
そうこうしているうちに学校へ到着…。私たちが到着したのを確認したクラスの
生徒たちは、おもむろに席につき始めました。
教室は重苦しい雰囲気に包まれ、何をどうしてよいのか、全く分からない…とい
うのが生徒の様子から伺えました。
そこで、私はいつものようにこうきり出したのです。「今からHRを始めます。
委員長、号令よろしく!!」
“起立”、“気をつけ”、“礼”…と形式的な挨拶をしたあと、私は話を始めま
した。
「みんな体育大会、優勝おめでとう!!(教室はそのひとことに歓声と共に拍手)
先生は正直ここまでみんながやってくれるとは思っていませんでした。ただ、
この体育大会でクラスの団結が生まれ、優勝を勝ち取った…その事実の中に、
このクラスの今後の大いなる可能性を先生は感じたし、このクラスの担任であ
ることを誇りに思っています。
ところで、今、こうして○○が学校に来てくれたんだけれど、○○…クラスの
みんなは、クラスの仲間としてあなたを迎え入れるために全員残って待ってく
れました。○○が今学校継続に関して悩んでいることも知っているし、仲間と
してありのままを受け止めたい、という気持ちでみんないます。そんな仲間に
対して、みんなに今の正直な気持ちを話してくれないかい…。」
その言葉に促されて○○は自分の正直な気持ちを吐露し始めました…。
「私は、2年生になってクラスがおもしろくなく感じていて悩んでいました。そ
して、先生とも何度も話をしたんだけど、学校を辞めて通信制の学校に行くこ
とを決意しました。ただ、体育大会後の打ち上げで、こんなに楽しいクラス、
仲間がいたんだ…と感じられ、正直、悩んだし心が揺れました。けれど、自分
の決意をここで変えるということはできないと思って…だから、私は学校を辞
めたいと思っています…」
それを受けて私はクラス生徒に次のように話しました。
「今、○○が話してくれたとおり、彼女は学校を辞める決意をしています。
○○…この半年間だったけれど、最後に感じられたクラスとのふれあいはこれ
からの財産になるはずです。○○…これから新しい道に進んだとしても、私た
ちのクラスにはいつでも居場所があるからいつでも戻っておいで…」
その後、委員長・副委員長とは、彼女が時間が許すなら一緒にどこかでお茶をし
て遊ぼう…という運びを打ち合わせしていたので、その方向でクラス討議するよ
う促しました。
ところが、壇上に出てきた委員長・副委員長が私にこう切り出したのです。
「先生、今、彼女は昨日の体育大会での打ち上げで学校継続をどうするか悩んで
いた…と言っていたでしょう。彼女の取り巻く状況がどのようなものなのか分
からないけど、まだ学校に残る可能性だってあるんじゃないかな。クラスの女
子なんかもそう思っていると思うし…。先生、まずみんなに一言ずつ語っても
らったらどうかな…」
三者懇談を通して○○の決意の強さを知っていた私は、その言葉に胸が詰まって
しまいましたが、彼女との別れに対し、やはり一人ひとり声をかけながら、みん
なの気持ちを伝え、整理させる場は必要…と判断し、委員長・副委員長の提案に
同意しました。
ただ今思えば、そのクラス一人ひとりの声に最後の学校継続の可能性を賭けてい
たのかもしれません…。
(続く)
たった1日の出来事なんでしょうが、その中で変わり行く集団…人間性が伸びいくのは、ある意味劇的なこともあるんですね!!
まだまだ何かありそうな予感…続きを楽しみにしています
そうですね…その日はほんとに劇的かつ忙しい1日でした。
文章で書いて出来事が起こっている裏で、いろいろと仕事をこなさなければならななかったので…正直焦りましたよ(笑)
人間が変わるのはやはり大なり小なりきっかけが必要だと思います。
とはいえ、そのきっかけに対しどれだけ感応できるかがすべてだと思うので、その意味で私のクラスの生徒は、この機会を生かしきれたのでは…なんて思っています。
この話については…まだまだあります!!
お楽しみに…。