しまなみニュース順風

因島のミニコミ「しまなみNews 順風」は、しまなみ海道沿いの生活情報をリリースし、地域コミュニティー構築を目指します。

なつかしい場所 Ⅴ

2010-01-22 19:51:23 | ヨット
コリンさんとの出会い

大飛島が近づいてきた。
かつて、ぼくは、
この島へ行ったことがある。
椿で有名なところで、
古墳時代の祭祀跡、
一杯船主の島としても知られている。
大阪万博の頃、笠岡諸島のたいていの島で人口減少が起きたのに、
この島だけは、人口が微増した。
島の基幹産業が、海を基調とした海運業だったため、
好景気に支えられて島そのものが興隆したからだろう。
島内には、立派な家がたくさん建っている。
この島に立ち寄ったとき、
たまたま診療船に行きあったこともあり、
公民館でお年寄りたちの集まりがあって、
島ならではのご馳走をご相伴させていただいたことがある。
どうしてだろう。
見ず知らずの人間を温かく迎えてくれるのは…。
大飛島の小学校の体育館がはっきりと見えてくると、
なつかしさで胸が熱くなってくる。
しかし、
ぼくには、
何のお返しもできない。
ただ、
この島へ行ったことがあるということだけなのだから。

ぼくは、
そんな感慨に浸りながら、
GPSを確認した。
大飛島と小飛島の南端がちょうど一直線になる地点に到達した。
東北東には、
はっきりと北木島が見えている。
ここからなら、
目的地の大浦港まで2時間もかからないだろう。
しかも、
機帆走のスピードも、当初予想したよりも良好で、
常時5ノット強を保持している。
小さな問島も、はっきりと確認できた。
徐々にぼくは、大飛島とお別れをする。
それにしても、
いい風が吹き始めている。
北西の風だった。
5ノットまではいかなくても、
エンジンを止めて、
4ノットを確保できるまでの風力に恵まれているようだった。
もっともよくヨットの走るアビーム(進行方向に向かって真横からくる風)。
うきうきしてくる。
小飛島から離れていくにしたがって、
12時を回ってしまったけど、
北木島の大浦港までは、おそらく1時間ほどで到着してしまうだろう。
これは、
当初計画したよりもずいぶん早い。
機帆走のありがたみというべきか、
もしかしたら、百貫島でコース変更を余儀なくされ、
塞翁が馬というべきか、
そのために風に恵まれたせいかもしれない。
実際、
小さな無人島の問島の海域を抜けて、
北木島の東南端を走っている頃、
まだ13時になっていなかった。
しかし、
気になることが一つあった。
ここまで、機帆走を使って、
エンジンを酷使してきたので、
燃料の消費が激しかったのだ。
燃料計の針は、残量1/4を示している。

それでも、
大浦の港が見えてきた。
港湾入り口の防波堤には、赤い灯台が座っている。
その灯台を抜けて、
港内に侵入し、
コリンさんとの電話連絡で確認した通り右側へコースを取ると、
漁船に乗った人影が見えてきた。
入港前に電話連絡を入れたところ、
コリンさんは、
自分の携帯電話を忘れるほど慌てて事務所を出たらしいのだが、
はたして、
漁船の人影は、
こちらに向かって、
大きく手を振ってくる。
ぼくも、
思わず大きく手を振っていた。
漁船に近づいていくと、
コリンさんは、
接舷の指示を出してくれた。
思いもよらぬところで突然知人に出会ったような感激がある。
ヨットを漁船に接舷させると、
ぼくたちは、
固い握手を交わした。
その笑顔こそが、ぼくの旅の目的なのだった。

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