しまなみニュース順風

因島のミニコミ「しまなみNews 順風」は、しまなみ海道沿いの生活情報をリリースし、地域コミュニティー構築を目指します。

なつかしい場所 Ⅷ

2010-01-25 18:17:14 | ヨット
六島の過ごし方

あたりは、
すっかり日が落ちて、そこは、夜の六島だった。
防波堤の上を眺めると、
何人かの釣り人がいる。
半夜釣りをしている人たちで、
帰りは海上タクシーや渡船を使うのだろう。
宿坊の入り口で、
ぼくは、再び、前畑さんに出会った。
みんながいるので、ついて来るように誘われた。
宿坊の妙音院は、3階建てになっている。
1階部分の事務所の裏側には、休憩所となっている部屋があり、
そこに、去年お世話になった面々が集まって、
お酒を飲みながら鍋をつついていた。
総勢6人の賑やかな宴会が盛り上がっている。
そこへ島の若い衆がさらに2人加わって、
六島の夜はゆったりと賑やかに過ぎて行く。
大げさにではなく、
一人ひとりが自分の役回りを自覚し、
お互いを尊重しあう、
そんなコミュニケーションが毎日のように繰り返される。
それが、六島の夜なのだと思う。
宴会は、
21時過ぎまで続いた。
鯛シャブの後のうどんも、蓬餅もおいしかった。
宴会が終わって、一人で宿坊にいると、
少し酔いがさめて、夜の六島を歩きたくなってきた。
ヨットを係留している桟橋のところまで歩く。
波の音しか聞こえない静かな道だった。
桟橋に辿りつくと、
宴会で知り合った島の若い衆に出会った。
彼は、釣りのお客さんを乗せる「笠岡渡船」をやっている。
桟橋でしばらく話していたが、
寒くなってきたので、ヨットのドッグハウスに入り、
そこでもしばらく話をした。
彼に言わせると、
笠岡諸島の中でも、
一番活気があるのが六島なのだそうだ。
小さい島でも、
コミュニケーションが密なので、
どんな行事をしても盛り上がるそうだ。
「笠岡渡船」は、11時過ぎに、
お客さんを乗せるため六島を出港していった。
ぼくも、宿坊へ帰って、
いい気持ちで横になった。

翌朝、目が覚めると、
宿坊の窓から朝日が見えた。
粟島の城山の方角だろう。
港の中は、潮がよく引いている。
宿坊を出て、前畑商店の前を通ると、
前畑さんがヒジキを運んでいた。
今日のイベントで売るそうだ。
マサヒコさんは、
灯台の奥の道へ入って、
イベントで売る水仙を集めに行ったそうだ。
残念ながら、
今回の六島訪問では、
シーさんこと中尾さんには会えなかった。
所用で本土に出たままこの日も帰らないとのことだった。
ぼくは、
海岸端のドラム缶のところで、
お茶を飲みながらヒジキを干しているハタナカさんや、
島のアイドル犬、ハッピーに目をやったりしていた。
ゆっくり、ゆっくりと時間が過ぎていく。
公民館のマサルさんは、
イベントの準備で、ひとり忙しそうにしていた。
漁師のタケジさんも、仕事が忙しいのか、なかなか浜に顔を出してこない。
イベント中、
桟橋には、
海上保安庁の巡視船とツアー客を乗せた貸切船が横付けするので、
ぼくのヨットは、
タケジさんの桟橋に係船させてもらうことになっていた。
ようやく9時を回ったところで、
タケジさんが姿を現した。
桟橋から呼びかけると、ちょっと驚いたような表情をして、ぼくを見つめた。
「あんたか、久しぶりやな。元気にしとったみたいやな」
「ええ、お蔭さんで」
「もうすぐ、この船を出すさかい、これに船は付けとき」
「ありがとうございます。昨日は、宴会に来られませんでしたね」
「それがな、腰を痛めとるさかい、無理ができんのや。
それでも、漁にでんならんけどな。
今日は、夜まで漁やさかい、あんたも気をつけてな」
タケジさんは、
そう言い残すと、
さっさと漁船を出港させていった。
さすがに慣れたもので、
大型の漁船が、
するすると狭い漁港を出ていく様は、見事というしかない。
ぼくも、
すぐにヨットを移動させた。
港の中は初めてだったので、
水深が心配だったが、何とか無事タケジさんの桟橋に係船することができた。
それからは、
何もすることがないので、
ドラム缶のところでうろうろしながら屯していた。
ミツシさんが、競馬新聞を見て、
予想を立てていたり、
マサヒコさんの水仙がどれくらい売れるか噂橋をしたりして、
イベント前、というのに、
緊張感のない時間が流れていくのだった。
いつも通りの六島。
たぶん、肩を張らずにイベントをこなしていくから
疲れないし、長続きするのだろう。
参加者としても、リラックスできるし、
気楽に楽しめるのだと思う。
イベントは、
何となく11時ごろから始まった。
イベントの様子は、
島づくり海社のHPに詳しいので、
そっちの方を見ていただきたい。
ぼくとしては、
海上保安庁が六島灯台の内部を公開するというので、
水仙を見ながら、灯台までぶらぶらと歩いた。
順番待ちで、ようやく灯台のテラスへ上がってみると、
本船航路がパノラマのように広がっていた。
ちょうど天気も良く、
冬だというのに、
灯台下の広場は、心なしかポカポカしてくるようにも思えた。
灯台から、再びドラム缶のところへ降りて行くと、
ぼくは、
「六島のタコ弁当」に舌鼓を打って、
そろそろ出港の時間が迫っていることに想いを寄せた。
アイドル犬、ハッピーは、
床几の足につながれて、
のんきに昼寝を楽しんでいる。
ぼくにとってのなつかしい場所は、
そんな過ごし方のできる場所なのだった。

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