瀬戸内海、因島の香りがする風景を表現したいと思っていた。
その理由は、間近に迫ったコンテスト応募作品に彩を与えるというミッションをある人から授けてもらったからだ。
「読んでみたんですがねー。文章に潤いが感じられんのです。もっと、読者に、これを読んだら因島へ行ってみたい、と思わせるような表現が欲しいですね」
歯に絹を着せぬその人のコメントは、正直言ってショックだった。しかし、さらに止めまで刺さ . . . 本文を読む
中学校時代、一度だけ進水式へ行ったことがある。当時、ブラスバンド部に所属していた私は、日立造船の吹奏楽部から招待され、その一員となってトランペットを吹いていた。
巨大な船体が吹奏楽部の並ぶ席にまで影を落とすほど、その姿は神々しかったと記憶する。因島の栄華がその姿に象徴されていたからに違いない。
その進水式を常石造船で見た。
巨大な船は、シャンパンが割れると同時に、船台をゆっくりと滑り降り、 . . . 本文を読む
今の時代に必要なものは何だろう。
杉原耕治先生の近著「極東の頗羅夷曾(パライソ)」は、その答えを明確に出してくれたような気がする。
「閉塞状況の今、次の時代をどう創っていいか分からなくなったら、悠久の人間の歴史をもう一度見つめ直し、人間という生き物の原点にかえることが、一番大切なことかも知れない」
帯封に書かれた一文は、今を生きる私たちに、その未来を託すために書かれた渾身の文章だったに違いな . . . 本文を読む