椎名純平BLOG
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Weblog / 2008-01-30 21:51:08

 あちこちで書いたり語ったりしていますが、僕は70年代の
黒人音楽が好きなのです。
黒人音楽だけでなく、ロックでも何でも、70年代の音を聴くと
なんかホッとするんですね。
この感じ、若い子には分かって貰えるのかな?

 ちなみに、クルマも70年代のものが好きだし、使ってる楽器も
70年代、ファッションもその辺に興味が行きつつあります。
少し前、世は80年代ブームとか言われてましたよね?僕も多少
影響は受けたんですが、やっぱ根っこは70年代で変わらず。
頑固というか、ブレないというか、乗り遅れてるというか…。


 乱暴かつジャーナリスティックな物言いですが、僕が思うには、
黒人音楽、とりわけソウルやR&Bなどと呼ばれたりする歌モノの
たぐいは、60年代に一度完成したんじゃないでしょうか。
 アメリカのあちこちにレコード会社があり、それぞれが地元の
ミュージシャン、シンガー、スタジオなんかを抱え、それぞれの
やり方を確立したのが60年代なんではないかと思うんです。
代表的なトコでいえばモータウンなんかそうですよね。
当時のデトロイト産サウンドはある意味金太郎飴的な安定感が
あります。


 そして一方80年代辺りからは、ディスコやらデビット・フォスター
やらAORやらのおかげで(かな?)、黒人音楽がどんどんソフィスティ
ケートされてゆきました。
 合わせて音も歌い方もソフトになり、やがて“ブラコン”やら
“クワイエット・ストーム”なんて言葉が生まれます。
こちらも売りは安定感。

 で、僕に言わせると80年代は第二の“完成期”であり、それと
比例(反比例?)するように、僕の聴き方も冷静になってしまいます。
良いなぁ、素敵だなあ、とは思うのだけれど、イマイチ心底はのめり
込めないというか。


 対して、これらふたつの完成期に挟まれた70年代黒人音楽って、
今の目で見ると、商品として未完成なモノが多いと思うんですよ。
アレンジが明らかに未消化だったり、演奏がよれていたり、歌唱の
テクニックも粗削りだったり…。
 思うに、60年代終わりから70年代初めに訪れた新しい要素、
例えばレコーディング技術の発達(マルチレコーディングの浸透)、
新しい楽器の台頭(シンセサイザーとかRHODESとかリズムマシンとか)、
改めて浮き彫りになった人種問題、本来別々のフィールドだった
ジャズやロック、ラテンとの混交…なんていう諸々を、ちょっと
吸収しきれていないんじゃないかと。ちょっと大きすぎるそういった
要素やモチーフやムードに流されてしまっているんじゃないかと。
そんな印象を僕は受けます。
 何より、60年代や80年代の音楽に比べて、口づさめるメロディ
が極端に少ないことが、僕の仮説を裏付けていると思うのです。
 僕が愛してやまないマーヴィン・ゲイなんて、その筆頭です。
60年代には、口づさめるヒットを多数出していた彼が、70年代に
入ると、なんかムーディーなオケがまず出来て、その上でフンフン
歌って出来上がり、みたいな音楽を作り始めます。しまいにゃあ
メイン・ヴォーカルと思われるものが2本かそれ以上バラバラに
入ってて、カラオケ不能、なんてのも。
人と「あれ、いい曲だよねぇ」なんて会話で盛り上がっても、一緒に
口づさめないんですよ。メロディがわらわらと沢山あるから…


 それでも。にもかかわらず。
僕が60年代でも80年代でもなく、70年代が好きなのは、ひとつ
には、新しい冒険を皆がみんなやっていた、時代の心意気に憧れて
いるのかなぁ、なんて思ったりします。つまり、僕が欲しいのは
よく出来た“商品”ではなくて、“気合い”とか“迷い”とか、
要するに“生身のその人”なのかもしれないな、と。粗削りでもいい
から、エモーションを聴きたい。わんぱくでもいい、たくましく
育って欲しい、とかそんな気分で、70年代を選ぶのかなと。


 話が飛びますが、実は今世の中的にも少しそういう方向に来てる
んじゃあなかろうか、とも思っているのです。
例えば、タレントさんの小説やケータイ小説などがもてはやされる
のも、例えば100円ショップやドンキが人気出るのもそういう
徴候なんじゃないかと。
 マーケティングやらなんやらでキレイに磨き上げられた商品の羅列、
お上手な宣伝文句の刺激などに疲れ、それよりも、粗削りでも、初期
衝動をそのまま真空パックしたような、理屈抜きの楽しさに惹かれて
いるということなんじゃないのかな、と思ってみたりするわけです。


 僕はそんな状況に少し不安を抱きつつ、ワクワクしています。


 あぁ、また書いてることがとっ散らかってますなぁ。
最後までお付き合いありがとうございました。




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