A20 Sarringhaus, L. A., McGrew, W. C., & Marchant, L. F. (2005).
Misuse of anecdotes in primatology: Lessons from citation analysis
American Journal of Primatology, 65, 283-288. [link]
霊長類学における逸話の誤用:引用分析からの教訓
この研究は、行動にかかわる霊長類学の刊行物で引用された逸話の正確さを分析する。道具使用を詳述している逸話(n = 1事例)を、4つの主要な霊長類学雑誌で探しだした。 3つの基準を満たした科学文献での逸話の引用を、認識と正確さとについて体系的に符合化した。結果は、60 %の程度で、逸話を引用した著者がそれらをそのようなものとして明示的に認めていない〔逸話を逸話として明示的に言及していない〕ということを示した〔認識について〕。〔60 %より〕もっと低い程度では、引用において、逸話事象の頻度が誇張され、それらの状態が不正確に述べられていた〔正確さについて〕。とくに道具使用について、行為者は、道具ないしその目標物よりももっと頻繁に誤報された〔正確さについて〕。複数〔の逸話〕を引用しているものは、ひとつ〔の逸話〕を引用しているものよりも頻繁にまちがっていた。全般的に、逸話の引用は問題を孕んでいて、また過剰な一般化を誤り導くことにかかわる広範囲におよぶ含蓄があるだろうと思われる。霊長類学者は、唯一の事象ないしめったにない事象を引用するさいには気をつけるべきである。
キーワード:引用の正確さ(citation accuracy);逸話(anecdote);道具使用(tool use)、方法論(methodology)、チンパンジー(chimpanzee)、オマキザル(capuchin monkey)。
ローレン・A・サリングハウス(Lauren A. Sarringhaus)、ウィリアム・クレメント・マグルー(William Clement McGrew)、リンダ・フランシーズ・マーチャント(Linda Frances Marchant)による引用分析論文。レヴュー論文ではないが、ほかに分類するカテゴリをつくっていなかったので、レヴューに分類した。
叙述的記述における唯一またはめったにない行動の出来事が、逸話である(著者らはこの定義のために以下の書籍の章を引用した)。
この論文で設けられた逸話の「3つの基準」(上の要旨にも出ている)とは、次のもの。
(1) その論文は、逸話に焦点を当てていなければならなかった。引用されたとき、言及されているものを最小限にとどめ、混乱がないように。
(2) その逸話は、野生ないし放飼下の霊長類についてのものでなければならなかった。飼育下での行動の遂行はヒトの接触に影響を受けているかもしれないので。
(3) その逸話は、個体または集団によって1度だけ遂行された活動にかんするものでなければならなかった。ある個体に特有の活動でも、それを何回もしているときには、排除された。
逸話を探した雑誌は次のもの。
Primates 1957年第1巻から2003年第44巻まで。
International Journal of Primatology 1980年第1巻から2003年第24巻まで。
Folia Primatologica 1970年第12巻から2003年まで。
American Journal of Primatology 1981年第1巻から2003年第60巻まで。
逸話の引用が誤っているかについて、今回の論文で検討された項目は次のもの。
霊長類にかぎらず、動物の行動を研究している人は、気をつけないといけません。
Misuse of anecdotes in primatology: Lessons from citation analysis
American Journal of Primatology, 65, 283-288. [link]
霊長類学における逸話の誤用:引用分析からの教訓
この研究は、行動にかかわる霊長類学の刊行物で引用された逸話の正確さを分析する。道具使用を詳述している逸話(n = 1事例)を、4つの主要な霊長類学雑誌で探しだした。 3つの基準を満たした科学文献での逸話の引用を、認識と正確さとについて体系的に符合化した。結果は、60 %の程度で、逸話を引用した著者がそれらをそのようなものとして明示的に認めていない〔逸話を逸話として明示的に言及していない〕ということを示した〔認識について〕。〔60 %より〕もっと低い程度では、引用において、逸話事象の頻度が誇張され、それらの状態が不正確に述べられていた〔正確さについて〕。とくに道具使用について、行為者は、道具ないしその目標物よりももっと頻繁に誤報された〔正確さについて〕。複数〔の逸話〕を引用しているものは、ひとつ〔の逸話〕を引用しているものよりも頻繁にまちがっていた。全般的に、逸話の引用は問題を孕んでいて、また過剰な一般化を誤り導くことにかかわる広範囲におよぶ含蓄があるだろうと思われる。霊長類学者は、唯一の事象ないしめったにない事象を引用するさいには気をつけるべきである。
キーワード:引用の正確さ(citation accuracy);逸話(anecdote);道具使用(tool use)、方法論(methodology)、チンパンジー(chimpanzee)、オマキザル(capuchin monkey)。
ローレン・A・サリングハウス(Lauren A. Sarringhaus)、ウィリアム・クレメント・マグルー(William Clement McGrew)、リンダ・フランシーズ・マーチャント(Linda Frances Marchant)による引用分析論文。レヴュー論文ではないが、ほかに分類するカテゴリをつくっていなかったので、レヴューに分類した。
叙述的記述における唯一またはめったにない行動の出来事が、逸話である(著者らはこの定義のために以下の書籍の章を引用した)。
この論文で設けられた逸話の「3つの基準」(上の要旨にも出ている)とは、次のもの。
(1) その論文は、逸話に焦点を当てていなければならなかった。引用されたとき、言及されているものを最小限にとどめ、混乱がないように。
(2) その逸話は、野生ないし放飼下の霊長類についてのものでなければならなかった。飼育下での行動の遂行はヒトの接触に影響を受けているかもしれないので。
(3) その逸話は、個体または集団によって1度だけ遂行された活動にかんするものでなければならなかった。ある個体に特有の活動でも、それを何回もしているときには、排除された。
逸話を探した雑誌は次のもの。
Primates 1957年第1巻から2003年第44巻まで。
International Journal of Primatology 1980年第1巻から2003年第24巻まで。
Folia Primatologica 1970年第12巻から2003年まで。
American Journal of Primatology 1981年第1巻から2003年第60巻まで。
逸話の引用が誤っているかについて、今回の論文で検討された項目は次のもの。
項目名称 | 内容 | 分類 | |
不認識 | 行動がn = 1事象だったと明示的にも暗示的にも述べられていなかった | 一般的な問題 | 認識の問題 |
誇張 | 行動の頻度が大げさに述べられていた | 正確さの問題 | |
装飾 | 引用情報が現に元の逸話にあるものを超過していた | ||
行為者 | 個体や集団の遂行行動が不正確に記述されていた | 道具使用だけの問題 | |
目標物 | 道具が作用している物体が不正確に記述されていた | ||
道具 | 目標物に作用している物体が不正確に記述されていた |
霊長類にかぎらず、動物の行動を研究している人は、気をつけないといけません。