社会保険労務士酒井嘉孝ブログ

東京都武蔵野市で社労士事務所を開業している酒井嘉孝のブログです。
(ブログの内容は書かれた時点のものとご理解ください)

雇用調整助成金・・・助成金詐欺にご注意

2020年04月08日 10時13分14秒 | 社会保険労務士について
特定社会保険労務士の酒井嘉孝です。

新型コロナウイルスの感染拡大により、国から緊急事態宣言が出されました。
外出自粛の要請も強くなされているところであり、会社やお店の休業についての報道も連日なされています。

報道でも「雇用調整助成金」の活用について話をする人がいます。
テレビに出ていて割と有名な人も簡単にもらえるような話し方をしている人もいますが助成金の申請はけっこう大変です。
もちろん、助成金制度は大いに活用すべきではありますが少し誤解があって、それにつけ込む人がいるのでご注意願いたいと思います。

そもそも雇用調整助成金とは、雇用保険料が原資になっており、『経済上の理由により、事業活動の縮小を余儀なくされた事業主が雇用の維持を図るための休業手当に要した費用を助成する制度』です。
要するに売り上げが下がって苦しいが従業員を解雇せずに、休ませて休業手当を従業員に払った会社に対してその費用を助成するものです。
従って下がった売り上げや利益を直接補填する制度ではありません。
かつ、会社が労働者に払った休業手当や給料の満額が助成金として返ってくるものでもありません。
(複雑な計算がなされます。)
・・・要するに思っている金額が助成金として支払われるものではないということをご理解ください。

この雇用調整助成金は以前からある制度ですが、今般の新型コロナウイルス感染症による特例措置がなされていています。
確かにその支給要件を見るとかなり緩和されています。
ただ、整えるべき書類をみると相変わらずかなりたいへんだという印象です。厚生労働省の説明を見ても手続きの簡素化も行うとあり、それに期待する部分もありますがもともと助成金をもらうための書類はかなり厳しく審査されます(国が集めた雇用保険料から払うものなので当然ですが)。

話の前段が長くなりましたが、ご注意いただきたいのが助成金詐欺です。
厚生労働省がからむ助成金申請が会社の代わりに代行できるのは社会保険労務士だけなのでまずこの点にご注意ください。
助成金の広告を送ってきたり電話をかけてくるコンサル会社のようなところもありますが、社労士でなければまず信用できません(社労士でない時点でそもそも入り口から違法なのですから)。
言葉巧みに専門に社労士が在籍しているとか提携しているとか顧問にいるということを言ってきますが本当にそのコンサル会社で社労士が開業しているか確認が必要です。
また、社労士紹介会社のようなところもありますがこれも黒に近いグレーです。
士業とはいえ行政書士や司法書士、税理士、中小企業診断士も社労士とのダブルライセンスでない限り厚生労働省の助成金の業務はできません(弁護士で社労士登録している人はできます)。

助成金が簡単に取れると言ってきたり、支給される金額を多く言ってくる場合も注意です。前段でも書きましたが助成金申請は簡単ではなく、休業手当として支払った金額の満額が返ってくるわけではありません。

助成金詐欺の典型的な手口は着手金を取ってトンズラです。
メールや電話のみのやりとりで実際にその人がいるのかどうか確認しない場合にそうなります。
社労士が助成金業務を単発業務で受ける場合は着手金がかかる場合が多く、着手金=詐欺ということはないのですが騙そうとしている場合、着手金が高額な場合が多いです。
そういう業者は着手金は高いですが成功報酬は安いんですよ〜と誘ってきます。
普通にやっている人で着手金が10万円、というのは聞いたことがありません。高くても5万円程度です。

では、社労士との付き合いのない方が助成金業務を依頼したい場合、助成金申請を代行する社労士をどう探すかです。
一番はおつきあいのある税理士さんや弁護士さんに紹介してもらうことです。あるいは信頼のできる人からの紹介です。
紹介であれば詐欺に遭う確率はかなり低くなると思います。
そういったおつきあいがない場合はネットで社労士を探す形になるのかもですが、最低限その社労士がその場所に本当に実在しているかの確認が必要です。
各都道府県に社会保険労務士会があり、そこで相談会や相談ダイヤルを開設していますので相談しても良いと思います。

たいへんな時期ではありますが、こういう時こそうまい話に飛びつかず、くれぐれも詐欺にはあわないようご注意下さい。

4月9日:助成率に関する記載に間違いがあったので訂正しました。

社会保険労務士個人情報保護事務所認証制度(SRPⅡ認証制度)について

2019年08月29日 10時57分44秒 | 社会保険労務士について
特定社会保険労務士の酒井嘉孝です。

士業全般に言えることですが、特に我々社会保険労務士は深いところの個人情報を扱います。
社会保険や労働保険の手続きには個人の方の給与や個人情報は必須ですし、場合によってはセンシティブな情報も扱います。

雇用保険の手続きではマイナンバーをつけて手続きすることはほぼ義務化といってもいいほどの状況ですし、健康保険の被扶養者の追加ではマイナンバーを記載することにより添付する証明書類の負担がかなり軽減されるようになってきています(逆に言えばマイナンバーを書かないと添付する証明書類がかなり増えます)。

社会保険労務士に何か依頼をする際にはほぼすべてのケースで個人情報を預ける形となるわけですが、その社労士なり事務所なりをただ信用してくれというだけでは依頼する方としては心細いものです。

その心細さをすべて解消できるわけではないかもしれませんが、社会保険労務士の中でも個人情報保護について体制を整備している事務所に対しては全国社会保険労務士会連合会が認証を交付する制度があります。それが社会保険労務士個人情報保護事務所認証制度(SRPⅡ認証制度)です。

申請にあたっては事務所としてどのような個人情報保護の体制をとっているか、個人情報の収集、保管、届け出、破棄について安全な体制をとっているかを問われます。
そして最後には個人情報の保護の理解についてテストがあってその成績を添付します。

私の事務所でもこの度この認証を受けることができました。

こういうものはなんでもそうですが認証をとったから終わりではなく、より一層の情報保護について体制を整えていこうと思います。


労働保険概算・確定保険料申告書

2019年06月04日 16時59分34秒 | 社会保険労務士について
特定社会保険労務士の酒井嘉孝です。

5月末になると各労働局より各会社へ労働保険概算・確定保険料の申告書が送られます。いよいよ労働保険の年度更新の時期となりました。

昨年4月から今年の3月までに支払った賃金額を集計して労働保険料(労災保険料+雇用保険料)をかけて確定保険料、そして今年の4月から来年3月までの見込みの賃金額を算出してそれに労働保険料をかけて概算保険料を記入します。

納められた保険料を基に労働災害、通勤災害の給付、失業したときの給付、育児休業給付金などが支払われます。

社会保険料や税金と違い、労働保険料は各個人に着目していません。個人からすれば給料に応じて雇用保険料が給料から天引きされていますが、労働局から見るとだれからいくら雇用保険料を取っているということについては見ていません(なお、労災保険料は全額事業主負担)。

労働局はその会社が従業員に賃金を総額いくら払ったことを申告すればそれに保険料率をかけてその会社の従業員全員分きっちり保険料をもらっているという考え方です。
どんぶり勘定的な感じもしますが合理的でもあります。

ただ、毎年従業員の方の賃金額を集計するというのは途方にくれている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

社会保険労務士はこの毎年の労働保険年度更新の集計・申告も業務としております。
社会保険労務士に依頼いただければ労働保険料の申告に含めるべき賃金なのか、本当ははずしてもいい賃金なのか、逆に含めなくてはならない賃金なのか判断することもできると思います。

特定社労士受験体験記⑦

2019年04月15日 09時54分45秒 | 社会保険労務士について
特定社会保険労務士の酒井嘉孝です。

特定社会保険労務士受験体験記の7回目は付記(申請・登録)について書きます。受験体験記としては最終回です。

4月1日から特定社会保険労務士と名乗ることができたのですが、土曜日に自宅へ全国社会保険労務士会連合会が発行した特定社会保険労務士標章が届きましたので冒頭に「特定」をつけました。

第14回の紛争解決手続代理業務試験の合格発表は3月15日でその翌日に簡易書留で合格証書と成績が届きます。
3月20日頃に連合会から付記申請に必要な書類が届きます。

写真館で写真2枚撮って、東京都社会保険労務士会の事務局へ3月25日に付記申請を直接提出しました。
申請にあたり、申請書に貼る印紙が5,000円、東京会の事務手数料が5,000円かかりました。
なお、連合会発行の標章は交換になります。東京会の会員証も交換で、事務局へ預けます。社会保険労務士たる証明書を2つ預けてしまうと何か心細い気がします。
3月25日に提出しましたが今年のこのタイミングであれば4月1日付記登録されるとのことでした。
東京は月1回登録なので都内の社労士では平成最後の特定社労士登録になりそうです。

私の場合4月13日に連合会発行の特定社会保険労務士標章が届きました。東京会の会員証は2ヶ月ちょっとかかるようです。

特定社労士受験体験記⑥

2019年04月04日 09時39分38秒 | 社会保険労務士について
社会保険労務士の酒井嘉孝です。

特定社労士受験体験記の6回目は再受験について書きます。

特別研修を終えていれば次の年にもう一度中央発信講義から受け直さなければならないわけではありません。特別研修を修了した証として「特別研修修了証」が特別研修を受け終わった2ヵ月後の1月下旬に届きます。
なお、もう一度特別研修の一部を受けることもできます。中央発信講義とゼミナールを有料で聴講という形で受けることも可能です(グループ研修の参加はできないようです)。私は聴講しませんでしたが聴講すればその年の新しい教材の一部ももらえるとのことです。


初年度不合格だった理由は、体験記⑤に書いたように予想問題集に頼った勉強で、問題用紙の構成すらわかっていなかったという準備の悪さとグループ研修での取り組み方にあったと思います。

もちろん、私としては一連の特別研修をまじめに取り組んでいたのですが(少なくとも本人はそのつもり)、グループ研修で取り上げられる5つある検討用課題の予習と復習、あっせん申請書・答弁書の作成について自分が作るものもさることながら、グループのほかのメンバーがどういった点に着目してあっせん申請書と答弁書を作成したか、自分が見落としていた点がなかったか、他の人の着目点が自分の考えと違うのならどうそれを説明するかをしっかり考えることが必要であったと思います。


2回目の試験勉強は過去13回の特定社労士試験の過去問をすべて解くことをしました。これでまず試験の時間配分と問われ方答え方をたたきこもうとしました。決まり文句的なものはやはり覚えるしかありません。ここは特別研修の事務局から評判が悪かったとしても過去問がまとまったものを他に知らないので対策本に頼らざるを得ません。
本に書いてある解答例については参考にはしましたが、絶対のものではないと思いました。2種類の対策本は手元にありましたが解答が同じとは限りませんでした。
なお、問1のあっせんの問いは試験の回を重ねるごとに問題文が長文化してきており、問2の倫理も最初のほうの回とは難化というか判断し、その判断の説明を記していくに時間を要する問題になってきていると感じます。


今思うと、という形になってしまいますが、問題文自体があまり長文でなかった試験の過去問の第1回から第10回くらいまでを特別研修が始まる前までにやっておくとその後の特別研修の勘所も含め、押さえやすいような気がします(安易に試験対策を行っていると怒られるかもですが)。グループ研修のあっせん申請書、答弁書の作成においても言い分からの事実の拾い上げと法的見通しなどもやりやすいと思います。


試験の申し込みですが、月刊社労士9月号に9月下旬に申し込み方法が全国社会保険労務士会連合会のホームページに掲載される旨発表されます。特別研修を受けている現役生は中央発信講義の際に試験の要項と申込書をもらえますが、再受験の場合は自分で取り寄せる必要があります。郵送でも可能ですが私は配布している東京会の事務局へ取りに行きました。
受験料は15,000円です。
受験申し込みでは先ほど書いた特別研修の修了証を同封します。修了証のコピーを送る方法もあるのですが私は原本を送りました。

試験は前回と同じく11月下旬。前回よりも難しくなっているような気がしました。
前回不合格であった苦手意識も手伝って試験を終えても自信もなく帰ってきました。現役組はグループで集まっている様子も見えました。浪人はちょっと寂しいです。

幸いなことに今回は合格でしたが、官報の発表を見たときは脱力してしまいました。
問題は難化しているような気がしましたが合格率は前年の57%から62%に上がっていました。