社会保険労務士酒井嘉孝ブログ

東京都武蔵野市で社労士事務所を開業している酒井嘉孝のブログです。
(ブログの内容は書かれた時点のものとご理解ください)

4月1日より「同一労働同一賃金」が実施に移されます

2020年01月31日 22時44分33秒 | 社会保険・労働保険
特定社会保険労務士の酒井嘉孝です。

パートタイム・有期雇用労働法が令和2年4月1日に施行されます。いよいよ「同一労働同一賃金」が実施に移されます。
中小企業には1年の猶予があり令和3年4月1日から実施になります。この中小企業の範疇は資本金が3億円(サービス業5千万円、卸売業􏰁1億円)以下及び常時使用する労働者􏰀数が300人(小売業􏰁50人、卸売業また􏰁サービス業􏰁100人)以下􏰀事業主をいいます。

同一労働同一賃金とは、いわゆる正規社員と非正規社員の人であらゆる待遇で不合理な差を禁止するというものです。支給する給与はもちろん、福利厚生面でも不合理な差をつけることは禁止されます。
また、正規社員と短時間労働者・有期雇用労働者(非正規社員)から、正規社員と􏰀待遇􏰀違いやそ􏰀理由について説明を求められた場合、説明をしなけれ􏰂ならないともされています。

分かりやすい例で挙げられているのが通勤手当です。しかし、実務上正規社員には通勤手当を支給するが非正規社員の人には支給しないというのはほとんど見られません。

正規社員と非正規社員の方の賃金における「差」で多く見られるのが家族手当、扶養手当、住宅手当です。古くからある会社に多く見られ、手当の額も手厚くなっている例も見られます。正規社員には「長期雇用を想定している」という理由でこの手当を支給し、非正規の方には支給しないというものです。

しかし、「長期雇用を想定している」というのは『不合理な差』とされる可能性が高いです。非正規社員の方でも実際に長く働いている方もいるかもしれませんし、扶養している家族がいるかもしれませんし、ましてや会社の寮に無料で入っていない限り、住宅がない人はいません。

これについて、「差」をつけている理由がないなら非正規の方にもこれらの手当を支給するか、いままで支給されていた正規の方の手当をなくすことを検討しなくてはなりません。いずれにしてもハードルは高いです。

正規社員の方と非正規社員の方で社内においてどのような差があるか検討すると、長期雇用を想定している以外にも理由がある場合が多いです。
例えば、正規社員には転居を伴う転勤がありうるが非正規社員の方には転勤がない、正規社員には緊急時に出社を求めることがある、正規社員には課しているつらい業務がある、などが考えられます。「責任の程度」において差があるのは合理的であるとされます。
もちろん、つらい、とか緊急時の出社など程度と頻度もありますが、この責任の程度の差が非正規社員の方に説明し納得されるものであれば、手当における差をつけることも可能であると考えます。

なお、有期労働契約を繰り返して無期転換された方はいわゆる正社員側となるため、この法律の対象外です。ただ、有期契約の方の待遇を改善して無期転換した方の待遇が相対的に低くなったということは、社員間のバランスを欠くものと考えられますので、調整は必要であると考えます。