社会保険労務士酒井嘉孝ブログ

東京都武蔵野市で社労士事務所を開業している酒井嘉孝のブログです。
(ブログの内容は書かれた時点のものとご理解ください)

交通事故と健康保険

2018年08月07日 17時55分35秒 | 社会保険・労働保険
社会保険労務士の酒井嘉孝です。

先日、「業務災害・通勤災害と交通事故について」という内容を書きましたが、今回は交通事故と健康保険の関係について書いてみます。
(ここでは労働災害、通勤災害とはちょっと分けて考えます)

交通事故に遭ってしまった場合、ケガの治療となりますが、その治療費について誰が負担していくかというと当然加害者ということになります。
加害者側は自分が入っている損害保険会社へ連絡し、損害保険会社の担当者が被害者側との窓口になります。
ここで、損害保険会社の担当者から被害者側に被害者が入っている健康保険を使うよう促される場合があります。つまり、被害者へ払うべき治療費と健康保険から負担させようと話してきます。

健康保険は交通事故のような第三者行為よる傷病には対応していません。
したがって上記の損害保険会社の案内はともすれば健康保険から治療費を払わせて損害保険会社の負担を減らそうと考えているように見えますが、そうではなく健康保険側で一旦立て替えて後で健康保険が損害保険会社へ請求を行うような流れができています(健康保険法57条)。

ところが医療機関によっては交通事故の場合は健康保険が一切使えないと案内している場合もあります。
(このようにいう医療機関は自由診療として損害保険会社へ治療費を請求したほうが医療機関の収入が大きいというのが理由と聞いたことがありますがどうなんでしょう?)
また医療機関でなくても「常識」としてそのように誤解をしている人もかなり多いように感じます。
(私もそう思っていた一人です)
保険診療でも自由診療でもケガをした側からすれば治してもらえばいいのでどちらでもいいような気もしますが、自分は全く悪くない被害者と思っていたら実は過失割合が意外に大きく、相手方の保険会社が支払いに応じてもらえない(応じられない)ということがあり得ます。
こういった場合、一旦健康保険で立て替えてもらっていたほうが最終的な支払いが少なくなる場合も大いに考えられます。

昭和43年ですからかなりまえの通達になりますが「健康保険及び国民健康保険の自動車損害賠償責任保険等に対する求償事務の取扱いについて」という通達が厚生省からでており、『自動車による保険事故も一般の保険事故と何ら変りがなく、保険給付の対象となるものであるので、この点について誤解のないよう住民、医療機関等に周知を図るとともに、保険者が被保険者に対して十分理解させるように指導されたい』とされており、現在もこの通達は生きています。要するに健康保険を所管する厚生労働省(当時は厚生省)からも交通事故においては健康保険を使えると言っています。

こういったこともあわせて損害保険会社は健康保険を使うよう促してくるものと考えます。

交通事故で健康保険を使う場合「第三者による傷病届」という書面を健康保険組合に提出する必要があります。

交通事故に遭った時などは冷静な判断が効かなくなる者です。だれか一方の言葉だけを信じてしまうのではなく色々な専門家の意見を聞いて落ち着いた判断をしていくようにしたいものです。