社会保険労務士酒井嘉孝ブログ

東京都武蔵野市で社労士事務所を開業している酒井嘉孝のブログです。
(ブログの内容は書かれた時点のものとご理解ください)

放置していませんか?労働保険事務組合の加入の是非について検討を

2023年10月17日 20時50分38秒 | 社会保険・労働保険
特定社会保険労務士の酒井嘉孝です。

最近、労働保険事務組合に入っている会社から問い合わせが多くありそのサポートをさせていただいたので記事にしてみようと思います。

労働保険事務組合とは厚生労働省のホームページによると「事業主の委託を受けて、事業主が行うべき労働保険の事務を処理することについて、厚生労働大臣の認可を受けた中小事業主等の団体です。」とのことです。

具体的には加入している中小企業の年1回の労働保険料の計算、従業員の雇用保険の取得や喪失の事務を代行して行います。
このほかに労働保険事務組合に加入すると労災特別加入といって、本来労災保険に入れない事業主の方が労災保険に入れるようになります。
また、国に払う年1回の労働保険料の支払いは年に40万円(場合により20万円)以上でないと一括支払いですが、労働保険事務組合に加入するとたとえ保険料の額が少額でも分割で納入できるようになります。
労働保険事務組合については以前記事を書いていますのでそちらもご覧ください。
https://blog.goo.ne.jp/sharoushisakai/e/0194cf695dac83895462a74bc5f93205

労働保険事務組合に入りたいという会社のほとんどが事業主の方が労災保険に入りたいために、要するに労災特別加入を目的に加入しているように見えます。
特に建設業の方は労災特別加入をしていないと事業主や役員の方が現場に入れない事例もあるようです。
労働保険事務組合や労災特別加入自体は変な制度ではないので必要であれば大いに利用すべきです(私も労災特別加入しています)。

ここで問題なのは、
●特に事業主の方が民間保険でカバーしている等で労災保険に入る必要がない・元請けや売り先などに入るように言われていない、
●労働保険料の分割支払いの必要もない・支払っている労働保険料が40万円以上なので自力で分割できる、
●労働保険料の計算も自社でできる、あるいは社労士などに頼んでいる場合です。
この場合は労働保険事務組合に加入(=事務を委託)する必要はほぼないです。

労働保険事務組合に事務を委託すると会費がかかることがほとんどです。
更に、労働保険料の口座引き落としのたびに事務手数料としてけっこうな額の手数料を引かれることもあります(手数料を引かない労働保険事務組合もあります)。
場合によっては上乗せ保険として必要なのかよくわからない保険をのせられていることもあります。
要するに無駄なお金を払っている可能性があるということです。

自社が労働保険事務組合に加入しているか確認するには労働保険番号を見ればわかります。
労働保険番号はー(ハイフン)を除くと14桁の数字です。
この14桁の数字の末尾が000(ゼロが3つ)でなければ労働保険事務組合に加入しています。
労働保険番号が分からなければ労働基準監督署へ連絡すれば教えてもらえます。

事務担当者の引き継ぎなどの事情でご自分の会社が労働保険事務組合に加入しているかわかっていない場合もあります。
電話や営業などで「労災保険に入りませんか」などと言われ加入した際もよくわからないうちに労働保険事務組合に入っているということもあります。
労働保険について長期にわたって検討したことがない、営業マンが来て労働保険の手続きをした、ということであれば一度確認された方が良いと思います。

自社が労働保険事務組合へ加入している必要がないとした場合、労働保険事務組合から抜ける手続きを行いますが、抜けるタイミングとしては3月末になります。
そのほかの月でもできなくはないですがかなり手間がかかりますので計画的に行う必要があります。
労働保険事務組合を抜けると個別移行といって労働基準監督署へ手続きが必要になります。
それまで労働保険事務組合を介して手続きしていたのを労働基準監督署へ直接行うということになります。

当然ですが労災特別加入をしていて労働保険事務組合から抜けると事業主の方の労災保険がなくなります。
この点はご注意ください。