社会保険労務士酒井嘉孝ブログ

東京都武蔵野市で社労士事務所を開業している酒井嘉孝のブログです。
(ブログの内容は書かれた時点のものとご理解ください)

平成30年年末によせて

2018年12月30日 20時50分11秒 | 日記
社会保険労務士の酒井嘉孝です。

平成30年も年末となりました。
今年は事務所の移転を行い、私としては節目の年となりました。
皆様のおかげをもって平成30年を大過なく終えることができそうです。
ありがとうございました。
働き方改革という政策の中で、またひいては人手不足という雇用環境の中で、今年は例年以上に「労働環境」「労働者」に視点が集まった年に感じました。

来年も社会保険労務士という職業をもったものとして身近な皆様に、関わる皆様に少しでもお役に立てるように一層頑張るつもりです。

良いお年をお迎えください!

労働者からの申し出による退職について

2018年12月11日 09時57分51秒 | 日記
社会保険労務士の酒井嘉孝です。

先日退職代行についての記事を書きましたが、そもそも労働者が退職したいと思って会社へ退職の申し出をしたときいつ退職できるのでしょうか。
よく言われるのが退職したい日の2週間前に言えば民法上大丈夫!就業規則に1ヶ月前とか書いてあっても関係ない!というものです。

2週間前という根拠は民法627条の規定によるものと考えられますが、民法627条に規定されているのは「期間の定めのない雇用の解約の申入れ」の場合です。いわゆる正社員が会社を辞めたいと思ったときに適用されるものです。
理由のありなしは規定されていません。

なお期間の定めのある雇用契約の場合は民法628条に「当事者が雇用の期間を定めた場合であっても、やむをえない事由があるときは、各当事者は直ちに契約の解除をすることができる。」と書かれていますのでやむをえない事由があれば即退職できることになります。
「やむをえない事由」についても法律上例示が列挙されているわけでもないので、引越しをするとか、親や子の介護なども十分理由となるもの考えられますし、その証明を出さなければならないこともありません。
ただし、条文の後段には解約により損害が生じた場合に賠償を負うことも規定されているので、慎重にしなければなりませんが、従事していた仕事がよほど専門性が高く、余人をもって代え難い場合を除けば実際損害を請求する会社側が損害額を計算して果たして見合う額が請求できるのか、そもそも損害が発生しうるのか考えものです。

また辞めたいと思っている人を無理無理引き留めたところで、そもそもやる気などないでしょうから会社が望むパフォーマンスを出してもらえるか疑問ですので、労働者、会社お互いにとって幸せな結果となるとはあまり考えられません。

ただ民法上2週間とか直ちにとか規定されていますが、就業規則にそれ以上の期間が定められている場合にどこまで有効なのでしょうか。
もちろん3ヶ月以上前とか6ヶ月以上前に申し出るということを就業規則で定めてもそれ自体には問題ありません。
経験上の話ですが3ヶ月前という割と長期の申し出期間を設けて有効に機能している例をあまり見たことがありません(その規定を考えた際の想定は求人と引継ぎと教育期間を考えてのことですが、だいたい間際にバタバタ動き出すものです)。
就業規則に労働者からの申し出による退職日の予告期間を設ける際は、会社が求人を出して辞める人の業務を引き継いでということを想定すると業種にもよりますが(最終出社日の)1ヶ月前程度であれば常識的であると考えます。

退職代行について

2018年12月06日 09時59分21秒 | 日記
社会保険労務士の酒井嘉孝です。

6~7年前までの就職難の頃には考えられなかったサービスのひとつに退職代行というビジネスがあります。
会社を辞めたいのに辞めさせてくれない人のために本人に代わって勤めている会社へ退職することを伝達するサービスだそうです。

最近の人手不足もあってその会社で経験をつんだ人にやめられるということは会社にとっては痛手であり、代わりの人を補充してまた教育しなおす時間もないため辞めたい人を慰留するというのはもっともなことです。

ただ辞めたい本人からすれば、思い入れもなくなりやる気もなくなった会社から退職を慰留されても困るだけでしょう。
本人からすれば慰留を受ければさらに言い出しにくくなります。
また、会社が引継ぎを受けない、いつまでも引継ぎが終わっていないといい、中には損害賠償をちらつかせ退職させないということもあるようで行き詰った本人からすれば藁にもすがる思いでこういった退職代行サービスに退職することの伝達を依頼するという気持ちもわかります。
パワハラや嫌がらせを受けていて会社と話をしたくないということであればこういったサービスを利用して救われたということもあるようですのでどうしても会社へ正面きって言い出せないのであれば利用すべきサービスだと思います。



退職代行という言葉で検索すると専門の業者がたくさん出てきます。

このビジネスをやってみようと思う人からすれば本人からの依頼を受けて会社へ退職の意思を「伝達」するだけですから簡単なようにも見えます。

「伝達」を超える「交渉」が入ってくると弁護士でないと法律上できないことになってきます。
とにかく辞めたい、他のことはいい!という場合はいいですがそのほかの交渉事のない退職ってけっこう幅が狭まるのかなと思います。

会社からしても弁護士以外の退職サービスから連絡があって、退職することが決まっても年次有給休暇の残りがあるとか、コンプライアンス上どうしてももらわなければならない書類とか退職の慰留や引継ぎの話を抜きにして話し合わなければならないことがある場合、困ることも多いのかなと思います。


あくまでも私の考えですが退職代行サービスを使う場合、少し料金が高くても弁護士がやっているサービスを使うことが退職者、会社側双方によいものと考えます。