社会保険労務士酒井嘉孝ブログ

東京都武蔵野市で社労士事務所を開業している酒井嘉孝のブログです。
(ブログの内容は書かれた時点のものとご理解ください)

通勤災害について

2018年05月26日 20時13分44秒 | 社会保険・労働保険
社会保険労務士の酒井嘉孝です。

自宅から職場に通う間までに怪我を負った場合も通勤災害として労災保険から保障されることを知っている人は多いと思います。

どこからが通勤の始まりで、どこまでが通勤の終了なのか、寄り道はどこまで通勤として許されるのか、誤解があるように思います。

よく言われるのが会社へ通勤経路として申告してある経路以外で通勤しそれ以外のルートで行った場合は通勤災害とならないと言われるものです。
最短のルートでないと通勤災害とならないと思っている人もいらっしゃいます。

通勤災害とする経路に関しては「合理的な経路および方法」と定められているだけで、会社に通勤経路として申告しているルートとか最短のルートでないと通勤災害とならないということはありません。

実務上、定期券を買っているルートはどこからどこかなどということを労基署から聞かれたこともありませんので、会社への申告は特殊なルートを取っていない限り通勤途上で起きた事故は通勤災害と認められるものと考えます。

ただし、会社に申告しているルート以外で事故となった場合は労災保険の通勤災害とは認められたとしても、会社からなぜ申告したルートを通っていないのか、会社から支給している通勤交通費を浮かせるためでないかといらぬ疑いをかけられることも考えられますので、あまり変わったルートで行かないようにした方が良いとは思います。


次に「寄り道」ですが原則として寄り道をしようと合理的な経路から外れた場合、その外れた時から後の事故は通勤災害となりません。

ただし、日常の買い物のためスーパーに寄った、病院に寄った、など日常生活上必要な行為によって「合理的な経路」から外れた場合はその外れている時を除いて通勤災害となります。
また日常生活上のささいな行為とされる通勤途上で喉が渇いたので経路上にある売店でジュースを買って飲んだなどという場合はそのささいな行為中に起きた事故も通勤災害になります。

産前産後休業の社会保険料免除と育児休業の社会保険料免除について

2018年05月16日 18時36分19秒 | 社会保険・労働保険
社会保険労務士の酒井嘉孝です。

産前産後の休業と育児休業を取得しているときは健康保険と厚生年金の保険料が免除になりますが先日気付かされた点があったのでそのことを書いてみたいと思います。

★産前産後休業による社会保険料の免除・・・事業主も保険料免除となる。
★育児休業による社会保険料の免除・・・事業主は保険料免除にならない。

女性の社長は、産前産後の休業中は保険料免除になりますが育児休業で休んでいる間は保険料の免除となりません。

なぜかというと育児休業による社会保険料免除は「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」に基づく育児休業等期間に対して行われることとなっているため、事業主は「労働者」にあたらないことから保険料免除とはならないということのようです。
http://www.nenkin.go.jp/service/kounen/kenpo-todoke/hoshu/20140403-01.files/00000193702BZfUDMMfh.pdf

なお、産前産後休業とは出産日の前42日と出産の日の後の56日間をいい、育児休業とは(実質上)産後の休業が終了日の次の日以降で子供の1歳に達する日(誕生日の前日)までとなります(保育園がいっぱいで預けられない場合などはお子さんが2歳まで育児休業を延長可能)。

男性の場合は産前産後がありませんので出産日から育児休業の取得が可能です。
(事業主に「育児休業」はないので男性社長の場合、育児のために休んでも社会保険料免除はないことになります)

事業主の方で産前産後、育児休業の手続きを行う際は留意していきたいものです。

業務災害(労災)について④

2018年05月11日 14時59分36秒 | 社会保険・労働保険
社会保険労務士の酒井嘉孝です。

業務災害は100件おきたら100通りのパターンがあるといえます。
そのなかで業務災害(労災)と通勤災害と私傷病(健康保険)の境目の判断がつきにくい場合があります。


会社の敷地内だが建物の前で転んだ事故は?

昼休み中の事故は?

残業時間中の事故は?


いずれの場合も状況により労働基準監督署の判断となります。

ただそういっては身も蓋もないのでこれまで扱った事例をふまえて書いてみます。

<会社の敷地内だが建物の前で転んだ事故>
会社の敷地内なので労災として認定されることになると思います。
ただ定められた時間よりもかなり前に出勤した、ということがあるとなぜそんなに早く出勤したかなどにより判断が分かれる可能性があります。


<昼休み中の事故>
昼休み中の事故は私傷病として扱われることになると思います。
ただ、会社の設備の欠陥による事故は労災認定される可能性が高くなると思います。例えば会社の中で突然天井の蛍光灯が割れた、、、という場合は労災認定される可能性があります。
なお会社が入居しているオフィスビルの共用部分で起きた事故は労災認定されない可能性が高いです。

昼休み中の事故として有名(?)なものとしては昼休み中にキャッチボールをしていたところ、隣接する自衛隊の訓練場から流れ弾が飛んできて負傷したという事故は労災と認定されませんでした。


<残業時間中の事故>
残業時間中の事故も労災認定されます。
サービス残業中の事故となるとちょっと事情が複雑になります。
会社内で仲間と雑談していたというのは労災認定されませんが、そのサービス残業が会社から命じられたものなのか(黙示も含まれると考えます)どうかが問われます。


労災はこのように様々な事情をお聞きして書類作成を行います。
治療費や休業補償などの費用は労災保険から支給されるものの、書類に書く内容も多くご本人にとっても会社の事務担当者の方にとっても負担です。
社会保険労務士は労災保険の手続きも書類作成のご負担を少なくするお手伝いが可能です。

社会保険労務士の仕事(障害年金の申請)

2018年05月06日 17時59分19秒 | 社会保険労務士について
社会保険労務士の酒井嘉孝です。

社労士の中には障害年金のアドバイスや申請を専門にやられている方がいます。
「地名 障害年金」と検索するとそこそこの数の社労士の事務所がヒットします。

ご自分の障害年金は当然ですが社労士を介さなくても自分ですることができます。
年金事務所の方も丁寧に教えていただけるものと思います。

ご自分での年金事務所とのやりとりが困難な場合や、複雑な申請、すでに年金事務所から不支給の決定を受けてしまったが納得いかない場合などは専門家たる社労士へ依頼いただくのがベターであると思います。

障害年金の申請において最初のハードルは初診日がいつか確認する作業です。
簡単にいうとその病気の大元の診断がいつだったかというものです。

初診日を証明してもらえる病院が簡単にたどれれば良いですが、たどって行ってみたらすでにカルテの保管期限がすぎていて破棄されていた…(病院でのカルテの法定保管期限は5年だそうです)、またはその病院が廃業していた…なんてこともあります。

なお、初診が会社の健康診断だった、ということもあります。会社の健康診断の結果から大きい病院へ行った、という場合の初診日は健康診断の日になります。なので会社の健康診断結果の紙は捨てないでとっておきましょう。


そしてその初診日の前日の2ヶ月前まで年金を1年間未納がないか、という納付要件が問われます(ものすごく大雑把に書いています。未納があった場合でも納付要件を満たす要件はこのほかにもあります)。

年金を納付していたというのは国民年金でも厚生年金でもいいので、初診日の前から1年以上会社勤めをしているという方であれば納付要件についてはほぼ大丈夫でしょう。
ですが、納付の記録(記憶)が曖昧だったりする場合は一つ一つ証明していく必要があります。


社労士を介した場合の報酬ですが、着手金数万円、障害年金の受給に至った場合にその年金額の2ヶ月分程度を原則的な報酬としている方が多いようです。


年金が注目されていますが権利として得られる障害年金があまりクローズアップされていないのは少し残念な気がします。
複雑な案件になると時間もかかることも多いですが、そういった場合こそ社労士の出番ですのでぜひともご活用いただきたいものです。