贅沢の基準

新しいお客さまへ備長炭を届けにいったときの話です。
最初にご主人が自転車に乗って買いに来られ、備長炭をお買い上げいただいたのですが、荷台のない自転車だったのでお届けすることにしました。
住所を聞くと結構遠い・・・それも有名な観光地界隈。ん～、ちょっと時間がかかりそうだな、大変だなと思ったけれど、今日は時間があるから行くことにしました。

行くと、にぎやかな通りから露地を入った閑静な場所。
露地の奥に広めの庭があり、借景の東山の眺めがいい・・・。
受注で和菓子を作っておられるそうで、観光客の方も来られるそうです。

ついつい「何にお使いになるのですか？」と聞いたら、お湯を沸かしてお茶をいただくんです。とおっしゃったので、思わず「贅沢ですね」と言ってしまいました。

高い炭で・・・という意味と、それを楽しむ気持ちが豊かだという二つの意味を込めて言ったのですが、失礼ともとれる私の言葉にもこの意味を感じてくださったようで、しばらく炭のお話をしました。

「炭でお湯を沸かすと本当においしいですね。水はおいしい地下水を汲みに行って、鉄瓶にかけて炭火で沸かすと、すごくおいしい。備長炭は高いって言いますけど、全然そんなことはないです。ガスでは絶対こんなおいしいお茶はいただけないですもの。今の方はお金の使い方を間違ってます。（笑）」

炭を扱っていてこんなにうれしい言葉はありません。
物の贅沢と気持ちの贅沢・・・。数千円で数週間はこんな豊かな日常を得られるとしたら、気持ちはすごく贅沢になるけど、物（お金）としてはそんなに贅沢なことではないのかもしれません。

帰りがけに桜餅をいただきました。
家で家族とともにいただきましたが、優しい心根を表すようなとってもまろやかなおいしい桜餅でした。近いうちにお客としてお茶をいただきに来ます。とお約束してきました。これからもいいお付き合いができそうです。

今回はデジカメを持っていなかったので、次回行った時にお許しが出たらまた皆さまにご紹介したいと思います。