絆の法則

澤谷 鑛

いつも通りということ

2015-05-28 | 牽引の法則
                        佐原幹春

今日は夜のカウンセリングがキャンセルになったので、ゆっくりできて久しぶりに子供達と添い寝をしました。
なあ、何かお話しして。物語のやつ。」
小3になった下の娘が言う。
「そやなぁ。昔のび太君いう子がいてな。『どっかに行きたいよドラえもん。』言うたら『どこでもドアー』言うてな……。」
「それドラえもんやん……。ちゃんとしたの話して。」
「う~ん。」

創作の物語も、毎回話してるとネタが枯渇して来るのです(笑)。

「なんか未来にタイムスリップしたりするやつがええんか?」
「うん。」
娘がキラキラする。お姉ちゃんはしれっと聞いている。
「そやな。ヒロシくんが犬の散歩してたらな。急に落とし穴みたいな穴に落ちてな。(出だしは毎回こんな感じ(笑))真っ暗な中をひゅーんって落ち続けてな。あれれれ、言うてたら、落ちたはずの同じ道に立ってるんや。あれ? 今、穴に落ちた気がしたけど……。まあ、いいか、家に帰ろう。って帰ったらな。家がボロボロやねん。庭も雑草がボーボーや。」
「あっ、めっちゃ未来に来てもたんちゃう?」
お姉ちゃんも乗ってきた。
「そやろな。でな。ヒロシくん怖くなってな、チャイムを押してみたんや。自分の家やのにチャイムを押したんや。でもチャイムはもう鳴らないんや。で、玄関をドンドン! って叩いて、お母さん! お母さん! って。泣きそうになりながら叩いてたら、『あれ? あんたヒロシくんちゃうん?』って、おばあさんが近づいてくるんや。『ヒロシくんやな。私や。わたし。エミコや。』エミコっていうのは、ヒロシくんが小学校に一緒に行ってた同級生や。もうエミコはおばあさんになってるんや。『信じられへんな。ヒロシくんやん。どこに行ってたん……。信じられへんわ……。』エミコが言うには、ヒロシくんは急にいなくなって、学校でも地域でも大騒ぎになってみんなで探したんやって。でもいくら探しても出てこおへんから、やげては亡くなったことになったって。お父さんもお母さんもヒロシくんがいなくなったことを嘆き悲しみながら、夫婦で寂しく暮らして、やがては亡くなったんやって。」
娘たちは静かに集中して聞いている。
「ヒロシくんはな。ポケットの中に家の鍵を持っていることを思い出したんや。犬の散歩の時に持ち歩いてたんや。」
「あ、犬はどうなったん?」
いやそれは考えてなかった(!)
「うん…。過去に残して来たんや……。」
「ふ~ん。」
「それでヒロシくんはボロボロになった古い家に行ってな、自分の鍵を挿して回してみたんや。そしたらカチャって音がして開いたんや。家の中に入ったら、埃っぽくてな。蜘蛛の巣がいっぱいで、ヒロシくんのよく知っている家やのに、でも全部が古いんや。壁も床も階段もテーブルも、全部が古くなってるんや。壁には古くなったヒロシくんの写真がいっぱいあってな。それを見てたらな。何十年と2人で暮らして亡くなっていったお父さんとお母さんの思いが感じられてな。ヒロシくんは胸が締め付けられるように悲しくなってきたんや……。」

やばいなこれ……。超大作な予感がする……(笑)

「うん。それから?」
「うん。ヒロシくんは食べるものがないからな。おばあさんになったエミコちゃんの家に泊めてもらいながらな。しばらくいろんな話を聞くことになったんや。ヒロシくんがいなくなって、お父さんお母さんがどれだけ悲しんだか。その後は子供も作らずにな。静かに静かに暮らしてたんやって。それを聞いてたら、ヒロシくんは悲しくて悲しくて、どうしても家に帰りたくなったんや。家に帰って元気な姿を見せて、お父さんお母さんを喜ばせたいって。そう思って、ヒロシくんは落とし穴があった道へ行って、また落ちるように、何回も何回もジャンプして地面を踏むんや。でも落とし穴は無かったんや。」

なんか話してて泣きそうになって来る……(笑)
娘2人は聞き入ってるし、ここで話を終えるわけには行かない感じ。

「でな。悲しくて帰りたくて、お母さんに会いたくて、空を見てわんわん泣いたんや。その空もお母さんと一緒に見た空と何も変わらずに、同じやのに。何も変わらないいつもの空やのに。でもお母さんはもうこの世界にはいないんや。そう思ったら、淋しくて悲しくて泣いたんや。ほんでお母さんに会いたい! お父さんに会いたい! って空に願ったんや。僕の姿を見せてお父さんお母さんを喜ばせたい! って。そしたら、めまいがして頭の中がぐるぐるぐる~って回って、地面が無くなるみたいな感じで。」
「あ。帰れるんちゃう?」
「そうや。目が覚めたら道端に寝転んでて、犬が心配そうにこっちを見てるんや。今は何年の何日やろか。ヒロシくんは急いで家に帰ったんや。家は綺麗なままで窓には明かりが洩れてるんや。あっ、お父さんもお母さんも生きてるんやって。でも怖くなって。そのまま家に入るのが怖くて、チャイムを押すんや。そしたら『はい。』ってスピーカーからお母さんの声がする。『僕や! お母さん。僕や。ひろしや!』『ひろしか。なにバカなことやってんの? 早く入っておいで。』ヒロシくんは急いで家に入ってな。まだ新しい壁を見て、見慣れたリビングに入って行ってお母さんに言ったんや。『お母さん! 今日は何年? 何月? 何日?』『なにバカなこと言ってるん? ひろし。ご飯にするよ。』ヒロシくんはテーブルのいつもの席に座って、お母さんとお父さんを交互に見つめながらカレーを食べたんや。ああ、いつものお母さんのカレーの味やなって思ったら、涙が溢れてきて止まらなくなってな。『どうしたんやヒロシ。学校でなんかあったんか?』ってお父さんが言うんや。ヒロシくんは泣きながらカレーを食べながら、こう言うんや。『いいや。何もないよ。』って。『そっか。』『うん。何もない。いつも通りや。いつも通りや。』って。いつも通りお父さんがいて、お母さんがいて、いつも通りのテーブルを囲んでいて、いつも通りのカレーを食べてるって。泣きながらそう思ったんや。おしまい。」

「ふ~ん。」と下の娘。
「面白かった?」
「うん。ちょっとな!」おどけて言う。
「そんなん言うんやったらもう話したらへんからな。」
「うそうそ。めっちゃ上手やった。」
「そやろ。」
「……。」
「ひな?」
「……。」
「ん? ひな?」
「ぐ~……。」
「ひな?」
「ぐ~。」
2秒で寝たで!!( ゜д゜)

「のん?」
「ん?」
お姉ちゃんは起きてるようだ。
その後、お姉ちゃんとは少し真面目な話しをしたのだけど、長くなりますので、それはまたの機会に。

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