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1限の近代芸術学とかいうのが楽勝らしいと聞いていたのだが、起きられなかった。
2限は言語科学基礎論で前期の続き。少し興味のあった生成文法への導入。
3,4限は分析化学実験。後期枠に普通に滑り込めたのでよかった。
最初の実験はIII族の分析だかなんだかそんな奴だったが、予習は面倒だからサボった。
やっている間は結構楽しかった。遠心分離機というのを初めて触った。
周りの人がだんだん終盤に移行して、点滴皿に綺麗な色の液滴が乗って、まるで絵の具で飾られたパレットのようになっているのを見て、よし僕も写真を撮ってやろうと待ち構えた。
出来は悲惨だった。濃度が薄かったのかよくわからないが、色は着いてるけどなんだか薄汚い広がりになった。
あまりの汚さに写真を撮る気が失せてしまった(すみません)。
なんで同じ実験をやっているのに僕だけこんなになるのかと少し傷ついたが、めげずに頑張ろう。
5限の精神病理学というのがすごく興味があったのだが、実験の後に授業なんて受ける気がしないものだ。試験だけ受けようかな。
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総合人間学部の2回生の先輩に、ある人を紹介してもらうことになった。クラスメートらしいのだが、是非とも僕に会わせたいのだと言う。
で今日一緒に食事をしてきたのだが、すごい人だった。
どんな人かというとずばり、語学マニアなのである。
仮にX氏と呼ばせてもらおう。
1回生のうちにギリシア語(ラテン語と同じ先生)を大学の講義で修め、今年の前期でラテン語を塾(それも京大教授みたいな人が通っているという塾である)で習って後期は講読をやるらしい。
さらにデカルトの『省察』を仏語で輪読し、エスペラントとアラビア語をやって、現在はコプト語(エジプトのキリスト教会語)を勉強中。実は歴史研究会の会長で、本業(?)は宗教史の研究である。
ちなみにコプト語はグノーシス主義の文献が残っている唯一の言語で、その方面では必須言語だそうだ。シャンポリオンがロゼッタストーンを解読したときもコプト語を参考にしたという話もあった。
まぁ宗教研究の過程で語学力が不可欠になるのだと言われれば納得はすれど、その造詣の深さに驚かされた。
ちなみにX氏はマニ教のファン(あくまで信仰する気はない)らしい。
いやはや世の中にはこんな人もいるのだなと思っていたら、X氏の東京にいたときの師匠がさらにすごい人で、個人塾で世界史を教えながらラテン語、ギリシア語、サンスクリットからヘブライ語からアッカド語まで古代語ならともかく何でも教えるという。
蔵書も凄まじく京大の図書館など比べ物にならないらしい。
というかその人京大教授よりもすごいんじゃないかと思う(X氏は「在野」の素晴らしさを強調していた)。是非会ってみたい。
僕は高3のときに黒田龍之介というロシア文献学者の本(またそのうち紹介するかも)を読んで甚く感動し、一時期古代教会スラヴ語に関心があったのだが、うっかりそう口を滑らした途端、X氏は目を輝かせて、では東京に行ったときは師匠に紹介しようと誘ってくれた。
教会スラヴ語に興味のある人間なんて日本ではそうそういないのでそういう人間をつかまえたいのだとか。
といっても2回生でギリシア語とラテン語に精通しコプト語を勉強している京大生というのもまずいないと思うのだが・・・
X氏は来年文学部専門のサンスクリットの授業を受けるらしい。
単位にはならないが僕も受けてみようと思っていたので一緒に受講することになるだろう。
しかしギリシア語も受ける予定なのでなかなか辛そうだ。ギリシア語もサンスクリットも勉強したことないし。
その後歴研のボックスに少しお邪魔した。
入って左にゲームが揃えてあって、まぁこれはよくあるサークルの風景(一般的に言ってボックス訪問って楽しいですね)なのだが、右には色々とマニアックな文献が並んでいた。
毛沢東語録や有名なレクラム文庫のカント『純粋理性批判』、ヘーゲルやウェーバーのもうなんだかよくわからん本が原書で本棚に置いてあり、東京外国語大学の『世界の言語ガイドブック』(これは最近の本だが良い本である)や何故か『放浪の天才数学者エルデシュ』(これは誤植が多いけどやはり面白い)など全然関係ない本もたまに目につく。
さすが会長が宗教研究をしているだけあってヘブライ語旧約聖書・ギリシア語新約聖書やモルモン経なんかもあって(毛沢東も宗教研究のうちなのだろう)、アヴェスターとかリグ・ヴェーダもそのうち揃えたいみたいなことを話していた。
全部語学の勉強に使えるのかと思うとなかなか贅沢な書庫である。
今のところ歴史研究会に参加する余裕はなさそうだが、それでもこれほど話の通じる(というかやたら詳しい)人に今まで出会ったことがなかったので大変楽しかった。