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目眩く思想世界擬きと言霊フロンティア
Depuis 2005/05/19

漂流

2006年09月10日 03時20分47秒 | Movie
 『漂流教室』('72)を読む。前から読もうと思っていたが怖い、怖いと聞いていたのでつい敬遠していた。実際読んでみたら別にどうってことはない。まぁそんなことはストーリー設定を知った時点でわかることで、僕は本当に怖そうだと思ったら基本的に見ない・読まない主義だ。それが最近読もうという気が起こったのは、映画('87)を見てみたらあまりにくだらなさすぎて、もともと名作といわれる原作を読まないでこのまま死ねるかと思ったからにすぎない。90年代を生きてきた僕らにとって、全く70年代や80年代の映画ってのはよっぽど慎重に見ないと当たり外れが多すぎる。

 今までは楳図かずおのホラー調タッチが読むか読まないかのその微妙なバランスに味方していたのだろう。じゃあ一般的な意見としてどこが怖いのかというと、一つは小学生という子供が武器を持って極限の心理状況の中で互いに戦い命を落としていくという展開にあるのだろうが、その怖さも世知辛い現代においては霞んでしまう。この事実こそが本当の怖さなのかもしれない。

 で、個人的にはこの作品は別にそれほど名作とも駄作とも思わないわけだが、捻くれ者のさっつさんとしては作者の意図通り(?)文明や環境問題に対する警鐘を読み取る手法は好きではない。ここでは仲田君の妄想能力をとりあげてみる。

 人間と未来人間の歴史的関係(ずば抜けて深遠そうなテーマの割に結局解答が与えられていない?)の次に興味深い、というか気に入ったのがこのトピックだった。あとは子供がそんな喋り方するわけないだろうとかいう幼稚な突っ込みくらいしかできません。スミマセン。あ、肝心のタイムスリップの方でいえば『戦国自衛隊』('79)見たけどやっぱり映画は微妙。原作を読まないとだめだ。『ジパング』にしてもそうだが、タイムスリップが起こってしまってから「歴史に干渉することは許されない」とか呑気なこと(当時バタフライ効果はそんなに目新しい言葉ではないはずでできるだけ世界に関わらないという消極的態度が甘すぎる)を言ってて幻滅しかけたが、歴史の修正能力というモノを持ち出して無理に納得させてみようとしたのはよかった。福井晴敏のリメイクも見てみようかな。

 本線に戻ろう(あるのか?)。ネタバレにならないよう注意して書くが、仲田君の妄想能力が生み出した敵は小学校をかなりヤバめの危機に陥れる。っていうか普通に考えてあの状況からの回復は無理でしょう。ハラハラの展開はお楽しみとして、この深層意識の実現という現象はタイムスリップ、人類の滅亡、あるいはペストの流行という現象と全く独立の問題として云わばオマケ的に発生している。『漂流教室』を語る際この局面がさしてとりあげられない、あるいは軽く片付けられてしまうことにいささか違和感を覚えるのは僕だけだろうか。そうかやっぱり僕だけか。僕がヘンだったか。

 この一連のストーリーから思い出されるのが映画『スフィア』('98)であり、原作('87)は『ジュラシックパーク』のマイケル・クライトン。実際のところどうかわからないが、年代からいうと『スフィア』が一方的に影響を受けていると考えても全く違和感がない。スフィアに入った登場人物たちが自分でも気付かないうちに作った怪物に襲われるという恐怖。まぁ、よく知らないが実は結構ありふれたテーマなのかもしれない。あーまだまだ読書量が足りないなぁ。

 ところで『スフィア』と『CUBE』('97)もなんかよく似ている。監督も原作も違うのに、どちらも作品名が作中に登場する謎の幾何完全な人工物を表している・閉鎖環境での極限心理や深層心理を緻密に表現している・描写が相当にグロい・そして「それでいいのか」的ハッピーエンドに終わるという共通点がある。『スフィア』は『CUBE』ほど有名ではないようだが、スフィアは宇宙人が作ったということにでもしておけばまだわかりやすい。比して『CUBE』は全く訳が分からない。全ての謎は『Cube Zero』で解き明かされているらしいが、すっきりさせるために『Cube 2:Hypercube』も含めてアレを2回分見ないといけないのかと思うと辟易である。

 また脱線した(本線ないってば)が、さらにもう一つ欠かせない作品があった。今春YouTubeをダウンさせて話題になった『ハルヒ』にもこの深層意識の実現能力という思潮が流れている。何しろ涼宮ハルヒは創造神なのである。世界を塗り替えてしまうのだからたまげたどころではない。これが一見アホアニメに見える『ハルヒ』がただのアホアニメと一線を画している一要素であるのだ。と暴論を振りかざしてみてそろそろネタ切れだ。僕が知らないだけで多分他にもありますよねこういうアニメくらい。スミマセン。こんなはっちゃけた現代神話が好きという素敵なあなたには神林長平の『言葉使い師』でもすすめてさっさと寝よう。おやすみ。

P.S.今思ったけど本当にすすめたいのは『プリズム』の方かも。

12/28 男たちの大和

2005年12月30日 11時29分54秒 | Movie
不覚にも泣いてしまった。おそらく映画を見て泣いたのは人生初である。序盤から教育臭のプンプンする映画だなーと思っていたが、それでも涙がとまらなかった。なんだかもろくなったなぁ。

でも、日本人なら一度は見ておいて損はないと思う。確かに演出が若干へたくそなところはあったが、それゆえ却ってあまり軍国主義色を感じない。少しでも戦争体験を共有できる機会をもつということは現代において貴重なことだ。もっと語りたいけど、別の機会に。

予言 12/4(SUN)

2005年12月04日 23時47分13秒 | Movie
 以前紹介した『感染』と同時公開された邦画である。つのだじろうの漫画『恐怖新聞』をもとにしているらしいが読んだことはない。要約すると、自分の死が新聞記事で予告されてその謎を解いていく(解ききれてないけど)というストーリーである。終盤は目まぐるしい展開を見せ、一応ホラー映画であるということすら忘れて唖然としていた。作中の至る所に張られた分かりにくすぎる伏線(伏線なのかどうかすら怪しい)を大慌てで回収して適当に継ぎはぎしたという感じである。ステージが走馬灯のように変わり、一体死んでいるのかいないのか、あまりの不条理さについていけない。云っておくが別にこの映画をけなしているわけではない。世界のどこかに過去から未来に至るまで全ての情報が蓄積されて発信している場所があるというSFチックな意見は素敵だ。ストーリーもどんでん返しの連続で結構面白い(しかも最後はバッド・ハッピーエンド)のだが、観客をおいてけぼりにする映画もどうだろうか。あと、酒井法子の演技だけはどうしても満足いかない。

Avalon 11/30

2005年12月02日 00時13分37秒 | Movie
 芸術の秋ももう終わり。暇になったフリをしてDVDを見る。押井守である。前から一度見たいと思っていたらちょうど先輩が貸してくれた。アニメかと思っていたら実写だった。キャストは何故か外国人が多い。いきなり外国語で喋る。聞いていると英語ではない。Aのことをアーと読んでいるのは分かったが、全く何のヒントにもならない。ドイツ語か?と思ったがなかなか聞き取れる単語がない。イタリア語はさすがに映画のイメージとなんか違うし、となるとメジャーどころでこの流れるような発音はまさかロシア語?だが一語たりとも意味が分からない。たまに出てくる地名はラテン文字だ。チェコかどこかのスラヴ圏で撮影しているのだろうか。わけが分からんのもそのはずで、なんと全編ポーランド語、キャストもポーランド人であった。畜生、ポーランド語ってなかなか美しいじゃないか。

 言葉を聞き取ろうと必死になっていたら結局ストーリーに集中できなかったが、東洋的な匂いのする、どこかで聞いたテーマソングは、よくよく思い出してみるとかの『MATRIX』シリーズのどこかで使われたテーマである。そして、もう逃げ場のないほど有名な緑のロールレターが、少しボリュームダウンして赤くなって登場する。『MATRIX』がオマージュした『攻殻機動隊』もちゃんと見とかなきゃ。

 でも何で監督は日本人なのにポーランドと組む必要があったんだろう。エンドロールに軍の名前まであったが、戦車を安く撮りたかったのだろうか?ポーランドの警察がすごく優秀だと聞いたことはあるが、あるいはいい戦車でもあるのだろうか。無駄にポーランドずくめかと思えば、作中に出てくるアーサー王の本は堂々と日本語のタイトルがついたものばっかりだった。

 サイバーパンクは面白いですね。

ビューティフル・マインドほか

2005年09月03日 17時03分47秒 | Movie
舌足らずな映画評。

8/29(MON)
家で前見たいと思った『タイタンAE』(2000年)のDVDを見る。アメリカ産SFアニメだが、やはりディズニー的な絵があまり気に食わない。っていうか基本的にアメリカのアニメは好きになれない。そりゃ『イノセンス』とか『アップルシード』の後に見るのが悪いのかもしれないが、ストーリーも設定もそんなに洗練されていない。CGも日本の方がレベルが高い。結局全てにおいて期待したほどではなかった。エンディングの馬鹿っぽさにちょっと笑った。本筋には関係ないが水素の木っていうアイデアは面白かった。

8/30(TUE)
友人と琵琶湖の方にサイクリングに行く予定だったが、雨が降ったので予定変更して『エピソード3』を見に行く。まぁまぁ特撮とかCGとか見る分には充分楽しめたけど、あんなオマケみたいなロマンス(?)とか正直いらね。。。と思った。それでもストーリーは割と複雑そうだし、人を魅了する映画であるのは間違いない。僕なんかは一旦ハマりだすと止まらないかもしれない。もうちょっと勉強してから見たらもっと面白かっただろう、と反省。ジョージ・ルーカスはキャンベルとかいう人の神話学をヒントにアメリカに神話を与えたのだというが、それにしても神話という表現は大げさかな。キャンベルの著作も少し読んでみようかなー。
まぁついにこれで終わったのか・・・と思うが、あまり感傷はないです。SWファンの人すみません。

9/1(THU)
『ビューティフル・マインド』(2001年)のDVDを見る。あくまで僕の主観でいうとこれは面白かった。本当のところをいえばもうちょっとひっくり返ったオチがつくことを期待していたが、これは実話をもとにしているんだから限界がある。見た人は結構多いと思うが、ゲーム理論の開拓者で1994年ノーベル経済学賞を受賞した数学者ジョン・ナッシュの人生を描いた映画である。最初レビューを見てスリラーとか政治学的な要素が混ざってくるのかなと思ったら、実はドラマの方が大きい。哲学的にも深く考えさせる点がある。別にゲーム理論にも経済学にも大して興味はないが、とにかくこれは見て損はないと思う。最後の授賞式のシーンはグッときた。あまり多くないアカデミックな映画(といってもやはり客層広げるために専門的な話はそれほど出てこないが)で、夏バテ中の脳ミソには多少の刺激になる。もっとこういう映画がいっぱいあればいいのになぁ。あまり知らないので誰か紹介してください。