防災訓練や消防訓練は
シナリオを大まかにして、より実践的に!
「シナリオなし」防災訓練 東京
2011年10月29日 13時59分
東京都の総合防災訓練が二十九日、都立小金井公園(小金井市)を主会場として、小金井、小平、西東京、武蔵野各市の住民や警察、消防など総勢約七千四百人が参加して行われた。例年は防災の日の九月一日前後に実施しているが、三月の東日本大震災で、多数の警察、消防職員が被災地入りしていたため、延期していた。より実践的にするため、初めてシナリオの一部を参加者に知らせない訓練も取り入れた。
訓練は午前八時ごろ、多摩地区で震度6弱以上の地震が発生したとの想定で実施。倒壊家屋からの救出訓練では、四十数人が生き埋めになった状況が再現されたが、救出に当たった自衛隊や警察、消防の各隊員は、何人ががれきの中にいるのか分からないまま捜索を行った。
医療救護訓練では、医師らが、状況が分からない中で避難所を巡回診療。診察中に感染症の疑いのある患者が発見され適切に対応できるかを検証した。支援物資の搬送訓練では、避難所から要請のあった物資が足りない事態が発生したとし、対応力を確認した。
住民だけの救助訓練には、四市の住民約二千人が参加。町会ごとに協力し倒壊家屋から負傷者を助け出した。
東京港に面した中央区晴海では、津波を想定し、初めて水門や陸こう(道路上の水門)を閉める訓練も行われた。石原慎太郎知事は初めてヘリコプターを使って、大田区内の自宅から西新宿の都庁舎に駆けつけた。
■参加住民「判断迷った」「運ぶの大変」
「ティロン、ティロン」。都立小金井公園のいこいの広場では、緊急地震速報の警報音が流れ、約二十軒の倒壊建物から負傷者を救助する大規模救出訓練が行われた。東京消防庁、災害派遣医療チーム、自衛隊などが、周辺家屋の倒壊で道がふさがれた幹線道路上のがれきを撤去しながら被災現場に駆け付けた。
例年の訓練なら各機関の役割分担が事前に決まっており、倒壊した建物のどの辺りに救助対象が何人いるかを知らされているが、今年は事前の打ち合わせはなく、隊員たちはその場で役割分担を決めていった。
各救助隊に加え小平市民約二十人も参加。「ここに負傷者がいます」「もうすぐ救助が来ます、頑張って」などと負傷者を励まし、救助隊と一緒に担架で負傷者を運んだ。訓練に参加した小平市の会社員池田拓司さん(33)は「救助隊はなかなか来てくれないし、それまでの間をどうしたら良いか判断に迷った。いざとなると混乱するかも」と話した。同じく訓練に参加の主婦海野美井子さん(66)は「けが人を見た途端、声が出なくなった。けがをした人を運ぶのは大変だった」と息を切らせていた。
ヘリで小金井公園に到着し、訓練を視察した猪瀬直樹副知事は「例年の訓練は儀式化したところがあったが、緊急時の状況により近づけようと一部訓練内容を隠したことで、実践的なものになった。例年より成果があった」と講評した。
【東京新聞】
http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2011102990135907.html?ref=rank