法律・司法試験研究室

法律・司法試験について考察します。

具体と抽象

2009年11月30日 | 学習
最も効率の良い学習方法は,頭を使って学習することである。

頭を使うとはどういうことか。

それは,具体と抽象を行き来することだと思う。

たとえば,弁論主義第一テーゼという抽象的概念を学習したとする。
「裁判所は,当事者が主張しない事実を判決の基礎としてはならない。」

XがYに対して,所有権に基づく妨害排除請求権としての所有権移転登記抹消登記請求訴訟を提起しているとする。
Yが抗弁として,XY間の売買契約締結による所有権喪失を主張しているとする。

裁判所は,XYのいずれも主張しないXA間の贈与契約を認定して,請求棄却判決をしたとする。

この判決は,弁論主義第一テーゼに違反する。


このように,抽象的概念を学習したら,すぐに具体的事例に置き換えることが,「具体と抽象を行き来する」ということの意味である。

法律は,抽象的概念の塊なので,まずは抽象→具体の流れを頭に作るとよいだろう。

この回路ができると,具体的事例を見たときに,抽象的概念を思い浮かべることができるようになる。つまり,具体→抽象の流れができる。

上記の例でいえば,「XY間の訴訟における裁判所の判決に問題はないか」との問いが出たときに,ああこれは弁論主義第一テーゼの問題だな,と閃くようになる。

議論をするときも,本を読むときも,このような思考のクセをもって臨めば,収穫が大きいのではないだろうか。

では,なぜ具体と抽象を行き来することが効率のよい学習につながるのか。
それは,具体と抽象を行き来することは,慣れることそのものだからではないだろうか。

つまり,法律の抽象的概念を学んで,それを具体的事例に適用することができれば,それはその法律を適用する経験を1回積んだことになる。
それを積み重ねれば,その法律に熟練するわけだ。

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