昨晩は、久方ぶりに近所の居酒屋さんへ足を運びました。たまたまついていたテレビで、なにやら、奇跡の脱出劇みたいな再現ドラマの番組をやっていました。。。
海底24メートルの沈没船に取り残された船長が、酸素欠乏で瀕死の状態に陥りながら、船外を捜索している潜水士になんとか自分の存在を知らせようと、それこそ文字通り「懸命の」合図を送っていました。本当にあった生還話ですから、この船長は無事・・・でもないけど、やっとの思いで助かったのですが、この再現ドラマで、ひとつ気になったことがありました。
他のお客さんもカウンターにおりましたから、私が興醒めするような「あれは酸素欠乏症状とはちょっと違うな~」などといった知ったかぶりの発言をするのは大人げないと思って、だまって見ていました。
地表の空気のフツウの(標高が高くなれば下がるのは承知してますよね)酸素濃度は、およそ21%です。人間は知ってのとおり肺呼吸していますが、これは肺胞という場所で酸素と二酸化炭素のガス交換をしているということです。これは濃度勾配によるもので、呼気中の酸素濃度はおよそ16%もあります。だから、人工呼吸でマウス・トゥー・マウスで息を吹き込んでも、空気中の酸素濃度よりは低いが、それなりに酸素を送り込む意義はあるわけです。
話を沈没船の船長さんに戻しますと、船内に封じ込められた空気があったお陰で、船長さんはしばらくの間はその中の酸素で呼吸が出来ていましたが、次第に消費されていきますから、酸素濃度が相対的に21%から低下していくことになります。つまり、だんだん呼吸が苦しくなるわけです。
ここで、「呼吸が苦しくなる」ということを映像で表現しないといけないわけですが、番組スタッフの頭には、「呼吸が苦しい」=「窒息(首を絞められる)する」という、単純な図式が浮かんだようです。船長さんは、激しく咳き込みます。呼吸が速くなって苦悶状になるのは、おそらく正しいでしょう。肺胞でのガス交換がうまくいかないために、体内に二酸化炭素がたまってきます。すると、呼吸中枢が刺激を受けて、呼吸数を増やし、なんとか酸素を取り込もうとするのです。。。しかし、首を絞められたような咳き込みは、おそらくしないハズ。あの、ゲホゲホという苦しむ演技は、ちょっと違うんじゃないの、と思ってしまいました。
井戸の掘削や、タンク内の清掃のために密閉された空間へ入っていった人が、酸欠で死亡する事故のニュースがときたまあります。あれなどは、酸素が薄いぞ、ないしは、二酸化炭素が濃いぞ、それに気づいたら大急ぎで脱出すればいいじゃないか、と誤解されるようですが、そんなものじゃないのです。においがあるという思い込みがそう勘違いさせるのでしょうが、酸素も二酸化炭素も無臭です。ムシューダなのです。それと気づかないうちに意識がなくなり昏倒してしまうのです。脱出することなど不可能でしょう。
例えば、酸素濃度が10%の空気を吸うとします。通常の大気は酸素濃度21%ですから、半分以下の濃度ですね。
このとき何が起こっているかというと、21,000円入っていた財布の中身が、10,000円に減ったけど、まだオケラになったわけじゃないから、倹約すれば何とかなる・・・そう思ったら大間違いです。呼気中の酸素濃度16%よりも低い空気を吸うということは、その差6%分、むしろ大気中に体内の酸素を奪われてしまう、ということなのです。
ちなみに、この10%酸素の空気をすっているとどうなるか、ですが、意識がだんだん薄れてきて、顔面蒼白~チアノーゼ(低酸素血症による皮膚の色)が現れ、あれよあれよというまに死に陥ってしまうでしょう。8%になると昏睡。6%では呼吸停止。「The End」ですね。
野菜の貯蔵庫なども危ないようです。植物は酸素を作るという先入観から、大気中よりも酸素が多いのじゃないかと思われますが、あれは太陽光をふんだんに利用しての光合成のお話。いったん収穫されて貯蔵された野菜は、呼吸によって酸素を消費する量のほうが多いから、貯蔵庫内は低酸素状態になっていることが多いのです。
炭坑や洞窟などの穴蔵へは、よくカナリヤなどの小鳥かごを持って入るといい、といわれます。人の頭よりも低い位置で鳥かごを持っていると、空気より重い一酸化炭素や二酸化炭素を先に吸って症状が出る(弱る~死ぬ)ので、センサー替わりになる、というもの。「大脱走」だったかの映画にも、そんなシーンがあったような。。。違ったかな?(^^ゞ
それにしても強運な船長さんですね。命のろうそくがとっても長いのでしょう。
それに引き替え、別人と誤認されて銃で殺されてしまった、アキレス腱を手術後入院していた患者さん、あの方はなんともはや、お気の毒としか言いようがありません。これもまた運命。命のろうそくが尽きたのでしょう。ご冥福をお祈りします。
海底24メートルの沈没船に取り残された船長が、酸素欠乏で瀕死の状態に陥りながら、船外を捜索している潜水士になんとか自分の存在を知らせようと、それこそ文字通り「懸命の」合図を送っていました。本当にあった生還話ですから、この船長は無事・・・でもないけど、やっとの思いで助かったのですが、この再現ドラマで、ひとつ気になったことがありました。
他のお客さんもカウンターにおりましたから、私が興醒めするような「あれは酸素欠乏症状とはちょっと違うな~」などといった知ったかぶりの発言をするのは大人げないと思って、だまって見ていました。
地表の空気のフツウの(標高が高くなれば下がるのは承知してますよね)酸素濃度は、およそ21%です。人間は知ってのとおり肺呼吸していますが、これは肺胞という場所で酸素と二酸化炭素のガス交換をしているということです。これは濃度勾配によるもので、呼気中の酸素濃度はおよそ16%もあります。だから、人工呼吸でマウス・トゥー・マウスで息を吹き込んでも、空気中の酸素濃度よりは低いが、それなりに酸素を送り込む意義はあるわけです。
話を沈没船の船長さんに戻しますと、船内に封じ込められた空気があったお陰で、船長さんはしばらくの間はその中の酸素で呼吸が出来ていましたが、次第に消費されていきますから、酸素濃度が相対的に21%から低下していくことになります。つまり、だんだん呼吸が苦しくなるわけです。
ここで、「呼吸が苦しくなる」ということを映像で表現しないといけないわけですが、番組スタッフの頭には、「呼吸が苦しい」=「窒息(首を絞められる)する」という、単純な図式が浮かんだようです。船長さんは、激しく咳き込みます。呼吸が速くなって苦悶状になるのは、おそらく正しいでしょう。肺胞でのガス交換がうまくいかないために、体内に二酸化炭素がたまってきます。すると、呼吸中枢が刺激を受けて、呼吸数を増やし、なんとか酸素を取り込もうとするのです。。。しかし、首を絞められたような咳き込みは、おそらくしないハズ。あの、ゲホゲホという苦しむ演技は、ちょっと違うんじゃないの、と思ってしまいました。
井戸の掘削や、タンク内の清掃のために密閉された空間へ入っていった人が、酸欠で死亡する事故のニュースがときたまあります。あれなどは、酸素が薄いぞ、ないしは、二酸化炭素が濃いぞ、それに気づいたら大急ぎで脱出すればいいじゃないか、と誤解されるようですが、そんなものじゃないのです。においがあるという思い込みがそう勘違いさせるのでしょうが、酸素も二酸化炭素も無臭です。ムシューダなのです。それと気づかないうちに意識がなくなり昏倒してしまうのです。脱出することなど不可能でしょう。
例えば、酸素濃度が10%の空気を吸うとします。通常の大気は酸素濃度21%ですから、半分以下の濃度ですね。
このとき何が起こっているかというと、21,000円入っていた財布の中身が、10,000円に減ったけど、まだオケラになったわけじゃないから、倹約すれば何とかなる・・・そう思ったら大間違いです。呼気中の酸素濃度16%よりも低い空気を吸うということは、その差6%分、むしろ大気中に体内の酸素を奪われてしまう、ということなのです。
ちなみに、この10%酸素の空気をすっているとどうなるか、ですが、意識がだんだん薄れてきて、顔面蒼白~チアノーゼ(低酸素血症による皮膚の色)が現れ、あれよあれよというまに死に陥ってしまうでしょう。8%になると昏睡。6%では呼吸停止。「The End」ですね。
野菜の貯蔵庫なども危ないようです。植物は酸素を作るという先入観から、大気中よりも酸素が多いのじゃないかと思われますが、あれは太陽光をふんだんに利用しての光合成のお話。いったん収穫されて貯蔵された野菜は、呼吸によって酸素を消費する量のほうが多いから、貯蔵庫内は低酸素状態になっていることが多いのです。
炭坑や洞窟などの穴蔵へは、よくカナリヤなどの小鳥かごを持って入るといい、といわれます。人の頭よりも低い位置で鳥かごを持っていると、空気より重い一酸化炭素や二酸化炭素を先に吸って症状が出る(弱る~死ぬ)ので、センサー替わりになる、というもの。「大脱走」だったかの映画にも、そんなシーンがあったような。。。違ったかな?(^^ゞ
それにしても強運な船長さんですね。命のろうそくがとっても長いのでしょう。
それに引き替え、別人と誤認されて銃で殺されてしまった、アキレス腱を手術後入院していた患者さん、あの方はなんともはや、お気の毒としか言いようがありません。これもまた運命。命のろうそくが尽きたのでしょう。ご冥福をお祈りします。
いつの間にやら「のんべい仲間」になったもんだから、普段は忘れちまってて・・・、失礼しました。
ときたま本業にまつわることも書かないと、ただの道楽中年になってしまいますから。でも、これはたま~に、ということで、普段はのんべえ仲間でいきましょう。