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じゃがブログ ~さいとう小児科~

じゃが院長のつれづれ日誌をメインに、趣味(合唱・囲碁・絵)や道楽(温泉・ラーメン・酒)にまつわるエッセーを掲載。

「明歴々露堂々」の意味するところ

2006年05月26日 | ◎じゃが日誌
例によって「言葉の意味」を探る稿かと思われるでしょうが、今回の意図はちょっと違います。

今朝の毎日新聞の、将棋名人戦の棋譜の解説欄に、「明歴々露堂々」という言葉が見出しとして書かれていました。
今進行中の名人戦挑戦手合いの解説なのですが、このところ喧しい将棋連盟と毎日新聞との名人戦の(ひいては順位戦の)主催問題についても、頻繁に所感を述べておられます。「おられます」としたのは、これは署名記事(観戦記)なので、執筆者ご本人の主観が書かれており、新聞社としての意見とは別物だからです。とはいえ、まったく新聞社の意向に反することを書けるわけではありませんから、おのずとそのスタンスは将棋連盟に譲歩を求めるかたちになるのはやむを得ないでしょう。筆者は、連盟に対して、この「明歴々露堂々」という熟語を引き合いに出し、包み隠さず全てを明らかにして交渉にあたるように希望を述べておられました。。。

新潟県出身の棋士で書家としても名高い、故原田泰夫九段がよく揮毫したという言葉が、この「明歴々露堂々」(めいれきれきろどうどう)なのだそうです。・・・恥ずかしながら、初めて聞きました。(^^ゞ

我が家にある旺文社の分厚いことわざ辞典で探したのですが、、、ありませんでした。ガッカリ。
とりあえず、メモを取り、ネットで検索してみたところ、禅林句集の中にこの言葉がありました。

○「明歴々露堂々」:すべての存在が明らかに、すべての物事がはっきり現われ出ているさまで、そのままの姿のすべてが真理の現われであり、仏の表れであるという意味。

こう書かれると、なんだか味も素っ気もない、辞書そのままって感じがします。もっと噛み砕いた説明を期待して、さらに検索を重ねると、某社の理念の中に引用してあって、非常に分かりやすかったもので、こっちを読んでようやく納得しました。

○「明歴々露堂々」:歴然と明らかに堂々と顕露していて、少しも隠すところがない。翻って、得てして真理は高尚深遠なところに秘在しているものと考えられがちであるが、それは、こちらの悟りが開けていないからであって、悟りの眼を開いた上で眺めてみると、真理は、ごく平凡卑近なところに実は少しも隠れる所なく、万物万象一木一草の上に堂々と顕露しているという意味。

・・・こうして並べて意味を再考してみると、もともとの内容は、森羅万象を眺めるこちら側の心の持ちようについて述べているもので、交渉に当たってあちら側の清廉潔白や虚心坦懐を求めるときに引用するものではない、ということに気がつきます。

普段耳慣れない言葉だと、ある程度雰囲気だけつかんで、都合の良いように解釈して引用してしまいがちです。詠み手の側だって、本来の意味なんて知りませんから、書き手の意図するところを慮(おもんぱか)って、おおむねその都合の良い解釈通りに受け取ってしまいます。ま、それでほとんど不都合はないんですが。。。

私ごときが何をほざいても影響することは一切ないのですが、毎日新聞が、紙面を大きく割いて持論を展開しているのに対し、将棋連盟のほうは会長のHPで細々と事の成り行きを説明しているだけです。マスメディアのちからの前では、とても太刀打ちできません。ちからの勝っている側から、「非は先方にあり。断じて許すまじ」と迫られては、全面降伏するしかありません。しかし、将棋には「一手違い」という言葉があります。形勢が悪くても、勝負手を放って最小僅差まで持っていきあわよくば大逆転を狙い、それが叶わなければ潔く負けを認めよう。そういう覚悟で勝負に臨まねばならぬ、という意味です。逆に、どうやっても「一手違い」(一手後れている)で勝ちには繋がらない、という挽回不能な局面でも使われるようです。いずれにしても、ムザムザ犬死にはしない、という勝負師魂が、そこには見て取れます。

連盟側の「初手」にミスがあったことは、自ら認めて陳謝しています。新聞社にも、ここは寛容かつ涵養の心をもって連盟と仲直りしてほしいものです。名人戦は単にタイトルのひとつに留まらない、将棋界の最高権威であることは、私たちアマチュアにもよく浸透しています。囲碁と異なり、将棋はまだまだ日本国内独自のテーブルゲームです。趣味の多様化に伴い、将棋離れが進むのも避けがたいことかも知れません。しかし、将棋は文化でもあり、科学でもあります。極めて完成度の高い知的ゲームだと思います。日本人の知的文化財産(遺産とはいいたくない)として、これからも発展していってほしいと願っています。関係各位の「愛棋心」に期待したいと思います。

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