昨年末に発刊されたRespiratory Investigation(日本呼吸器学会誌の英語版です)に特発性肺線維症(IPF/UIP)の発症した肺結核症について検討した論文が出ていました。
以前からIPF/UIP、COPDなど背景肺に異常があると、発症した肺結核症は非典型的画像所見を呈するとは言われていますが、きちんとした検討をしたのはあまりなかったのではないかと思います。
17年の経過の中、IPF/UIP609例中28例(4.6%)に肺結核症が発症しました。4.6%の発症率、ちょっと多め?という印象です。(ちなみにこの報告は韓国からの報告です)約半数はIPF/UIPと肺結核症が同時に診断され、30%の症例はIPF/UIPにてフォローアップ中、胸部画像所見などで偶然見つかっていました。IPF/UIP症例ですから当然ながら予後は不良ですが、死亡原因の2番目に結核死でした。
胸部単純写真では浸潤影を認めることが多く(75%)、また陰影を指摘ない症例も25%ありました。
胸部CT所見としてはS1,2,6などの典型的病変分布を来すことが少なく、コンソリデーションパターンが多く、小葉中心性粒状影の頻度が低いことがわかりました。つまり、通常見る肺結核症の画像所見である病変分布、粒状影を来しずらいということで、実臨床でIPF/UIP症例から肺結核症を診断するのは意外と難しいということがわかりました。IPF/UIP症例においてはこまめに胸部画像所見をフォローアップし、新たな陰影が出現した際には細菌学的検査をしなければいけないというメッセージかと思いました。(当然ながら肺癌などの鑑別のために細胞診も大事ですね)また、IPF/UIPに発症した肺NTM症との比較では両者ともコンソリデーションパターンが多く、画像的にはほぼ同様の所見を来すとのことでした。個人的な意見としてはIPF/UIP症例に発症する抗酸菌症は肺結核症より肺NTM症の方が高頻度ではないかと思います。
肺結核症のようなcommonな疾患も基礎疾患があると意外と診断が難しいということがわかりました。とても勉強になりました。日々の診療の中、常に気を抜けないですね。