さいたま赤十字病院呼吸器内科 『こちら彩の国 呼吸器科』

さいたま市近隣での呼吸器診療に興味のある、
若手医師、医学生の見学(平日)を歓迎します。ご連絡ください。

呼吸器内科をうまく利用してください。

2020年01月02日 | カンファレンス室

皆さま、新年明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。現在インフルエンザが猛威を奮っています。我々も感染する可能性ないわけではないです。毎年のことですが、インフルエンザワクチンを打っているにも関わらず、発病しているスタッフもまあまあいます。是非とも注意していただけたらと思います。

昨年はスタッフ12人フル稼働で、さいたま市およびその周囲の呼吸器地域医療に貢献してきました。また、実臨床で経験できたことを学会発表、論文作成を通して情報発信も頑張ってやってきました。今年はスタッフが一人増員され、さらにパワーアップするのは間違いないとは思います。否、増員分以上の仕事をこなしていこうと思います。今まで以上にさいたま市民の皆様が呼吸器診療で不安にならないように誠意を尽くしていきたいと思います。

ところで、実診療において、我々呼吸器内科医はどのように関りをもっていけばいいのでしょうか?答えは簡単です。呼吸器症状を伴う患者さんにおいて、胸部聴診所見、胸部画像所見、血液検査、喀痰検査などを駆使しても診断がつかないときには是非とも呼吸器内科専門外来を利用していただけたらと思います。

先日60歳代の女性が紹介されました。2か月の経過の呼吸困難のようです。前医では胸部聴診上明らかな気管支狭窄音を聴取せず、血液検査上も炎症反応などなし、胸部レントゲン上も明らかな異常なし、重大な病態がないように判断できる状況ではあったのですが、本人の希望も当院を紹介受診しました。喫煙歴なく、受動喫煙歴もなしです。

自分が全身をくまなく診察をしましたが、胸部聴診を含めて明らかな異常なく、胸部単純写真上も呼吸困難を来すような異常所見を認めないと思いました。

我々は呼吸器専門外来を行っているわけですから、「念のため」に胸部CTを施行してみましたら、何と異常があったのです。

  

胸部CTにて右中葉支入口部に隆起性病変を認め、肺門リンパ節腫大を認めています。これは胸部単純写真では写らないですよね。

気管支鏡を施行、CT所見通り右中葉入口部はポリープ病変で閉塞し、気管支生検にて小細胞癌が検出、なんと肺癌(小細胞癌)と確定診断されたわけです。

(非喫煙者の小細胞肺癌なんて今まで1例も経験ないのに、それも驚きでしたが)

本人の希望通り、呼吸器専門外来に来てもらってよかったとは思ったのですが、もう少し詳細に問診してみると、症状出現頃より胸痛があり、体重も減少傾向とのこと。PET-CTを施行してみると・・

多発骨転移が見つかり、Ⅳ期という病期になってしまいました。

診察上も胸部画像診断上も全然大したことがないと思っていた症例のなかに、本例のような病状に進行を認めている症例が呼吸器疾患にはまあまああるのです。このような症例は自分をはじめとした呼吸器内科医が優秀なのではなく、胸部CTなどステップアップした画像診断をしなければわからない症例ということかと思います。胸部CTで100%呼吸器疾患が診断可能なわけではないですが、相当の診断率になるのではないでしょうか?

今の日本の医療では、胸部CTの意義付けは相当高いものと思います。特に呼吸器診療においては単純写真での診断に相当上乗せがあるかと思います。

日本における呼吸器内科医の位置づけは、とりあえず「胸部CTくらい撮って、確定診断ないし除外診断をしたいなあ?」と思える症例をきちんと診療することかと思います。我々さいたま赤十字病院呼吸器内科はなるべく早く紹介患者さんを診察できるように週50枠以上の紹介枠を用意しています。是非とも呼吸器内科への紹介の閾値を下げていただければと思います。

今年もお付き合いよろしくお願いいたします。

追伸。

年末に京都の鈴虫寺に行ってきました。和尚さんの楽しいお話を聞かせてもらった後、お札を手に持ち、祈願してきました。鈴虫寺では、ひとつだけ願いことを祈願してくれれば必ずかなうとの和尚さんのお話。「では、何を?」と考えたら、第一に思い浮かんだことは「健康」でした。ずっと健康でいられるように祈願してきました。人間にとって一番大事なことが健康であると自分自身にも言えるような年齢になってしまったのですね。皆さんも「健康一番」で今年を乗り切りましょうね。

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする