さいたま赤十字病院呼吸器内科 『こちら彩の国 呼吸器科』

さいたま市近隣での呼吸器診療に興味のある、
若手医師、医学生の見学(平日)を歓迎します。ご連絡ください。

COPD治療における吸入ステロイド剤の位置づけ

2018年10月14日 | カンファレンス室

本日東京にてCOPDの研究会に行ってきました。先週末より連日の勉強会であったため、最後ばててしまいましたが、とても有意義な時間を過ごすことが出来ました。

COPDの薬物治療は飛躍的に進歩しました。自分が医師になったころはCOPDの有効な治療はなく、キサンチン製剤などの気管支拡張薬で綱渡りをしていたことが多々ありましたが、現在は長時間作用型抗コリン剤(LAMA)、長時間作用型β2刺激薬(LABA)、そして近年合剤(LAMA/LABA)が多種類上市され、COPD治療の選択肢が大分広がりました。この勢いですと、まだまだ治療は進歩しそうですね。その反面今まで重症のCOPDに使用していた吸入ステロイド剤(ICS)の位置づけが変わってきました。以前は増悪を繰り返す重症COPDに対してLAMA、LABAにICSを加えて3剤治療を行っていました。最近のエビデンスとしてICSを中止しても増悪の頻度に差がなく、またICSによる肺炎リスクなどを考えると症例を限定して使用すべきとの見解になっています。ではどうようなグループにICSを使用するかというと、気管支喘息合併症例すなわちACO症例には積極的に使用していく、それ以外ではICSしない方がいいとのことです。とても衝撃的なエビデンスでした。では、本当にCOPDにICSが意味がないかというと、実臨床では有効であった症例がいるのも事実だと思います。では、そのような症例はどのように探すのでしょうか?本日の講演にてICSが有効なCOPD症例は、ACO以外には好酸球性気道炎症の症例だと解説してもらいました。好酸球性炎症をどのようにスクリーニングするか?一番手っ取り早いのが血中好酸球数(300/μl以上)ではないかとのことでしたが、血中好酸球増多が本当に好酸球性気道炎症を反映しているかというとそうではないのも事実かと思います。我々はCOPD症例にICSを追加するためには好酸球性気道炎症をきちんと証明しなければいけません。どのように証明するか?まずは頑張って喀痰細胞診にて好酸球の程度を評価するのは重要かと思います。最近は呼気NOが好酸球性炎症を表しているわけですから、呼気NOの評価でもいいかと思います。

COPDガイドラインにて述べているICSの位置づけではないのではないか?というのが自分の感想です。

COPD症例にICS追加すべき症例を1例でも探すために、喀痰細胞診(誘発喀痰がいいでしょうか?)、呼気NOのチェックを忘れないでいていただけたらと思います。これからのさらなるデータの蓄積に期待しますね。

写真は6年前の11月3日に撮影した上高地の河童橋です。雪と紅葉がうまく混ざり合いとてもきれいでした。今の上高地、紅葉はどうなのでしょうか?これからでしょうか?

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当院における最近の肺癌症例の検討

2018年10月14日 | カンファレンス室

先日当院にて経験した肺癌症例について検討する機会がありましたので、報告させていただきます。

当院では2017年1月から2018年8月の20か月間で253例の肺癌確定診断症例を経験しました。

①組織型ですが、腺癌(61%)、扁平上皮癌(18%)、小細胞癌含む神経内分泌癌(12%)、多形癌など(2%)、分類不能NOS(7%)でした。扁平上皮癌がやや少ない印象ですが、大方全国標準なのではないかと思います。

②肺癌の治療法についてです。外科的治療を行った症例は進行癌ではない症例、内科的治療を行った症例は進行癌と考えていただけたらと思いますが、外科的治療を行った症例が33%、内科的治療(BSC含む)を行った症例が67%でした。施設によって比率が違うのは間違いないですが、この結果もある意味肺癌の進行度合い(肺癌は進行癌にて発見されることが多い)を物語っているのではないかと思います。

③肺癌の確定診断法については、当然ながら気管支鏡での診断が多く、当院でも全症例の65%が気管支鏡にて確定診断しています。その他は局所麻酔下胸腔鏡含めた胸腔内検体から5%、EBUS-TBNAが4%、少数ながらエコーガイド下生検、転移病巣の生検、CT下生検、リンパ節生検がありますが、なんと手術による確定診断が20%認めました。当院で外科治療を行った93例中50例(53%)は術前診断なく手術を行っていました。この結果は全国的にはどうなのでしょうか?気になるところです。

④全肺癌症例の中で216例に気管支鏡を行っています。そのうち165例(76%)で確定診断が可能でしたが、51例(24%)は診断に至っていません。気管支鏡での診断率76%は素晴らしいのでしょうか?もう一歩なのでしょうか?近年EBUS-GS法の導入、ナビゲーションシステム(Ziostation)の導入にて気管支鏡での診断がしやすくなったとの主治医の印象から、以前よりは難しい症例にチャレンジしている結果なのかとも思いますが。診断率については症例の詳細で決定されるわけですから、評価自体は意外と難しいかと思います。

我々呼吸器内科医としては、検査をやるからにはより完璧な検査になるようにきちんとした準備をして真摯に取り組んでいかなければいけないと思っています。今後もスタッフ一同努力していこうと思います。

追伸。やっと秋になったと思ったら、紅葉も始まっているようです。先日の新聞に奥日光の紅葉の記事が出ていました。今年の紅葉はどうなのでしょうか?

 以前撮影した湯滝の紅葉です。

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