恥を知れ

サディスティック・サディーの生かさず殺さず日記

8/11

2024-08-11 17:45:09 | music

今日は亀井聖矢くんのピアノリサイタルに行ってきたのだ
Kitaraは今季5回目かな?
この街で一番好きな場所だからたくさん行けてうれしい

P席まで埋まっててさすがの人気
出遅れたけどチケット取れてほんとよかった
いやあぶなかった

仕事とオリンピック(テレビ観るだけ)で忙しくてなんも予習できなかったけど
ちょうど1年前くらいに買ったVIRTUOZOを開封して聴いただけでも
私にしては上出来なので自分を褒めたい
会場で新しいCD売ってたらどうしよう周回遅れになっちゃうと内心危惧したが
そんなことはなくて少し安堵した
まあクラシックで毎年新盤出すなんてことそうそうないか
ともあれギリついていけてるようでほっとした

私にとっては結構テレビの中の人という印象なので
直前まで本当に生で見られるのかな本当に北海道なんぞに来てるのかなと
謎に半信半疑だったのだけど実在したね
なんかあまり大きい人のイメージなかったんだけど
手足長くてスタイルよくて顔ちっちゃくて現代っ子って感じ

音がとにかく美しくてびっくりした
輝きをまとったピュアな響きが雲間を突き抜ける光のようにまっすぐ飛んでくる
名前の通り本当に聖なる矢のよう
ピアノってこんなでかい音が鳴るんだっけ?ってびっくりしたし
残響ちょっと多めな感じが
一夜漬けで聴いたサントリーホールの音に似てる!ってびっくりした
Kitaraでピアノのソロリサイタル聴くの久しぶりだけど全部こんなだっけ?違うよね?
明確に狙って作ってる音だよねやっぱり
これが今の彼の一番好きな理想の音なんだろうなあ
おもしろい

3階席からでもわかる手の大きさ
力強いffの打鍵
突き抜けるような透明感
超絶技巧で有名になってVIRTUOZOもまさにその路線で売ってるけど
ppもとてもよくて
個人的には特にショパンの中低音
やわらかくてやさしくて
なのになぜあんなにまっすぐ3階席まで届くんだろ
静かな音なのに波を感じてびっくりした
きらびやかな高音との対比も映える
どうやったらあんな音が鳴らせるんだろ
ピアノの蓋大きめに開けてたけど絶対それだけじゃないよな
楽器とホールと調律と演奏と
全部こだわって作り上げた音なんだろうなって

大好きなホールって何度も言ってくれてリップサービスでもうれしい

でもまあ実際会場の雑音がひどすぎて前半の演奏の記憶があまりない
よりによって静かめの曲で咳連発するやつらはなんなの
何しにきてんの?咳しにきてんの?チケット代払って
あと前から思ってたけどだれかが咳したら続出する現象あるけど
別に最初の一発があったからってだれひとりなにひとつ許されてないからな?
あまりにも咳が重なりすぎてそういう協奏曲かと思ったわ
まったく笑えねえ
演奏者もやんわり言及するレベル
咳大丈夫ですか?健康に気をつけて元気にいきましょうねって
優しい言葉選んでくれてる配慮が泣けるわ

あと個人的に隣の席にミソフォニアの敵がいて
じっとしていられなくてずっともぞもぞしてるタイプのおばさんで
あと呼吸も下手なタイプのおばさんで
ずっと小さなあくびとゲップと息こらえとンッフーていう吐息と腹の音を断続的に吐き散らかしていて最悪だった
お前は本当にそれでいいのか
自らそれらの音を発しているわけだが実際うるさくないのか
ちゃんと音楽を聴けているのかと問い詰めたくなった
いかんこのままではせっかく楽しみにしていた亀井聖矢くんのリサイタルなのに胃もたれおばさんの記憶しか残らない
体調悪いですか?大丈夫ですか?なにかお手伝いできることありますか?
って声かけの具体例を考えるとこまでいった
休憩はさんで後半になったらいなくなってたので実際体調が悪かったのかもしれない
ちょっと遅いが帰宅はいい判断だ
おうちでゆっくり療養して健康になってくれ

疫病が流行る前から足が遠のきはじめていた理由をはっきり思い出したわ
とくにピアノリサイタルは静かな時間が多いからダメージが大きい

でも今回は音の美しさがギリ勝ったかな
ピアノのはずなのに金管やパイプオルガンみたいに力強く光り輝くバッハもおもしろかったし
繊細でひたひたと感情がに滲むようなマズルカもすばらしかった
ポロネーズでいっそう華とパワーが際立つんだけど
なんていうかな
ショパンはこんなふうには弾かなかっただろなと思うんだけど
時代や楽器や自身のフィジカルが許せば
もしかしたらこんなふうに弾きたいと思ってたかもしれないし
なんていうかね
リストが弾いたらこんな感じだったかもとか
あれこれ想像しちゃうおもしろさがあった
横山幸雄先生の理知的なクールさともユンディの色彩豊かな甘みともブーニンの鋼のような説得力ともちがう
いわゆるショパン弾きが奏でるショパンとはちがう
楽譜通りではあるんだろうけど
今俺が出したい音で表したい感情を弾きたいように弾くんだっていう意志を
ビシバシ感じてしまって
それはそれでなんだかとても新鮮で痛快だった

昔聴いたブーニンのベートーヴェンプログラムを思い出したな
全然ベートーヴェンぽくなくてむしろショパンみたいに揺らしてて
なんだこれ?って思ったけど自由ですごくおもしろかった
こうしていまだに覚えてるくらい

後半バラード3番と4番
すばらしかった
より自由に
より繊細に
ことばにならない思いを音にかえて

プログラムの冒頭の挨拶がとってもいい文章で
解決のつかない心の状態を素直にそのまま綴っている
言語化能力すごい
こんなにすぐれた演奏家でこんなに文筆も上手いのかよ
エッセイ本とか出してください
すでに出してる気がしてたけどなんか調べてもなかったわ
だれと間違えたんだろ
話が逸れたけど
おっしゃるとおりショパンは曲に表題をつけることを好まなかったから
ただそこにある音の連なりでなにかが起こせたら
という発想にはとても共感するし
聴く側としてもそのつもりで臨めたのはよかった

既存の曲に自分の感情を乗せて吐き出すんだ
私は作ることはできないから
言語以外のことばに乗っかれる
乗っかっていいという救いに
救われたことが確かにあったよ

自分がKitaraに通い出した若い頃ならキラキラした高音の方にめちゃくちゃ惹かれただろなと思う
でも今は年老いてやわらかな中低音の方もグッとくるようになったな
いやどうかな
アルト出身だから昔も中低音気にしてたよな
全然成長してない可能性も十分あるな
なんの話だっけ

プロコフィエフの戦争ソナタ
悲鳴のような嵐のような激しい音のうねり
選曲の意図を想像すると言葉もない
圧倒的な力に突然殴られる理不尽さをこれでもかと
音楽でぶつけてくる作曲家と演奏家のえぐさよ

ずっと苦しみや悲しみを叫んでいるのに
不思議と救われる思いがする
ことばを超えて心に共鳴してくる響きがある

プログラムを決めたのはだいぶ前だと思うけど
脳裏にあったのは国際情勢だと思うけど
それすらきっと演奏会までに目まぐるしく変わっているし
年明けの地震は想定してなかったと思う
しかしなんとなく全部対応できてしまう音楽の懐の広さよ
戦争でも災害でも
個人的な病気や困難でも
苦しんだことのある人乗り越えたことのある人はぐっときたんではなかろうか
現在進行形の人はどうだろね
より苦しくなったかもしれないし同じく癒やされたかもしれないしわからんね
ともかく自分でも気付いてなかったことばにならないモヤモヤを
彼のピアノが叫んでくれているような感覚になったんだ
表題のない
ショパンが徹底的に意図や物語を排除した純粋な音楽を
彼が自分の思いを乗せて弾いている姿に
こちらも勝手にいろんな気持ちを呼び起こされて勝手に感動したり癒やされたりしてるんだ
一種の祈りのような奇跡のような体験
だから私はクラシックを生で聴くのが好きなんだな

最後だけ明るい和音で終わるのはあれピカルディ終止というやつかな
ほのかに匂い立つ光

華々しい閃光や
雲間を突き抜けるまっすぐな光
いろんな光をピアノの音色から感じた演奏会だった

最後が荒れ狂う曲だったのでって
自分で「荒れ狂う」って言っちゃったよ
そのとおりだったけど
クールダウンも兼ねてアンコール1曲目はショパンのノクターン
美しかった
やっぱり弱音がやわらかくていいね
ちょくちょく椅子から立ち上がっちゃうくらいアグレッシブな演奏スタイルの子が
こんなに繊細でやさしい音も出せるというね
ギャップ萌え乙と言われれば認めざるを得ない

圧巻はアンコール2曲目のラ・カンパネラ
超絶技巧で一番イキイキしだすのさすがにおもろい
水を得た魚のようだった
もう呼吸のように手足のように曲が染み付いてるのな
なんていうかね
悪魔を完全に手懐けて自在に使役している魔王
みたいな貫禄とドヤ感があってたいへんよかったですね
すごすぎて笑っちゃうラ・カンパネラは初めての体験かも
人生2度目のスタオベさせていただきました

意外と低くて渋いお声でちょっとびっくりした
高いと思ってたわけじゃないけど
テレビ見ててもそんなイメージなかったので
背高そうだから不思議ではないけど
SNSでよくどこそこの美味しいもの食べたとか何キロ太ったとか言ってるけど
北海道の美味しいものはなにか食べてくれたろうか
少しでも楽しんでいただけたらうれしい

あとずっと思ってたんだけど
ファーストアルバムの名前がVIRTUOZO(=巨匠)なの
LOVE PSYCHEDELICOのTHE GREATEST HITSみがあっていいよね
好き

ずっと思ってたついでにもうひとつ
ショパンが作品にタイトルとかつけるの嫌いだったのはわりと有名な話だと思うけど
そのわりにいかにもタイトルつけたくなりそうな色彩豊かで想像くすぐる作品ばっか書きすぎなんよ
というのは後世の人間もひとこと言いたくなるところだと思う
だからって勝手につけていいわけではないけど
なんかつけたくなっちゃう気持ちはよくわかるし
結局生きてる人間が好き勝手するのはある程度致し方ないことなので
ごめんねショパン


 

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