恥を知れ

サディスティック・サディーの生かさず殺さず日記

道成寺

2007-09-30 03:29:12 | oni

なんか長くなったので分けてみた。

道成寺。
若手の登竜門とよばれることもあるが、実際はもっと扱いが重く、
20代後半から30代、あるいは40代になって初演されることもあるほどの難曲だそうだ。
開演少し前、なんかカチカチ音がすると思ったら、
橋掛りで切り火をしていたのだった。
どんだけ神聖なんだ、とこちらも緊張感が高まった。

まず地謡さん、囃子方さんが登場し、
次に狂言鐘後見とよばれる専門チームによって鐘が運ばれてくる。
もう搬入出とかセッティングとかひっくるめてひとつの舞台なんだな。
ある種の儀式のようだ。
ところがここでちょっとしたハプニング発生。
鐘は高さ2mほどもある巨大な物。
竜頭(てっぺんの輪の部分)に太い棹を通して前2名、後2名で持ち上げて運ぶのだが、
当然人間の背丈を越えているので、
皆さん腕を精一杯伸ばしなおかつ思い切り爪先立ち。
それでもよろよろして一度鐘を下ろした。
さてまた持ち上げようとするも、先頭と後尾で身長が違うためなかなかうまくいかない。
これたぶん運び方も決まってるんだろうな。
後ろ向いて調整すればいいと思うのだが、皆さん一直線に並んで前方を向いたまま何度もリトライ。
しかし棹ばかり前に進んで、鐘はちっとも動かない。
次第に客席から笑いが起こり始める。
後ろの人が引っ張られて鐘にぶつかったりするとドッと爆笑になった。
結局にっちもさっちもいかず、鐘は押して運んだ。
クレーンに紐をかけて吊り上げる段になってもまだクスクス笑いが残っていた。
おいらは不愉快だった。
演者は一時間以上前から集中し、開演前には切り火をし、
鐘は人目に触れぬよう楽屋においてさえ厳重に囲っているという特別な曲である。
それがはじまるという時に、お前らよく笑えるなと。
そりゃたしかにコントみたいだったよ。
笑わなかったらそれはそれでキツイ空気になってたかもしれない。
でもおいらは笑えなかった。
少なくとも、あの程度で爆笑するようなレベル低すぎる奴らとは絶対友達になれねえ。
お前らこれから見ようとしてる舞台の雰囲気を自らぶち壊してることに少しは気付け。
狂言鐘後見さんたちも、リハくらいしてるんだろうからガンバって。

とはいえ演奏がはじまれば微妙な気分など吹っ飛ぶ。
そこだけ空気が重くなるというか、
舞台が重厚な空間になってその重力に引きつけられるような。
「重」って3回も使っちゃったけどほんとそんな感じ。

ていうか長い。
後で確認したら上演時間2時間くらいかかってた。
そのうち静が9割、動が1割って感じで
正直、見てるほうもちょっと大変。
道成寺は一度NHK教育で見たことあるけど、こんなに長かったかなぁと思ったほど。
主役たる白拍子が出てくるまで結構あり、
出てきてから乱拍子を舞うところがさらに長い。
伴奏は小鼓のみ。
独特の間をもって繰り出される打鼓や掛け声に合わせて、
爪先やかかとを上げたり下げたりといった
不気味なまでに動きの抑制された舞。
それでいて次に起こることが予測できないリズムで、
突如裂帛の気合が発せられたり、
不意にぐるっと向きを変えられたり足を踏み鳴らされたりすると、
その都度ビクッとしてしまう。
一つ一つの間がものすごく長いのでついねむくなりがちなのだが、
この不安感と緊迫感のおかげで寝入ることはない。
だから乱拍子というのかなぁなどと思ったり。
プレトークで「鼓とシテの対決」と言われていたのもなんか納得。

舞が急に激しくなり、
他の楽器や地謡の合唱が加わり最高潮に盛り上がったところで、
いよいよ最大の見せ場・鐘落ち。
扇で自らの烏帽子を叩き落とす。
鐘の下に回り込み、内側からつかんで跳躍する。
中に白拍子を入れたまま一気に鐘が落ちる。
わかってても大興奮ですこれは。

で落ちてから上がるまでがまた結構長い。
ていうか鐘の中で装束を着替えたりしなきゃならないから、
これはたぶんおいらの記憶のほうがおかしいのだろう。
女人禁制と言われていたにも関わらず、舞見たさに白拍子を通してしまった寺男が、
もう一人の寺男とどっちが住職に報告に行くかでもめる狂言が入る。

「お前言いに行ってくれよ」
「やだよお前がやらかしたんだろ、なんで俺が行くんだよ」
「いやいやお前が困った時は命かけて助けてやるから、な、今回は頼む」
「何言ってんだよ、いっつも手柄は横取りして失敗は俺に押し付けてるくせに」

こんな感じのやりとりが入るのは、
ホラー映画の中にちょこっと笑えるシーンが挟まれているみたいで、
もう古典的な演劇の手法なのかなぁ・・・と思って、
ああそうかこれジャンル的にはホラーだ、怪談なんだと気付いた。

どうにか白拍子のことを報告し、
あぁ怖かった、と鐘の落下より住職におびえる寺男は最後までキュートだった。
萬斎さん本日二役。

住職は鐘の落下が清姫の怨念によるものと悟り、
清姫伝説すなわち道成寺の鐘のいわれを従僧二人に語って聞かせる。
それは退治せねばならぬと祈祷をはじめると、
すでに灼熱となっている鐘がひとりでに動いたり鳴ったりとあやしい気配を見せ、
やがて本性を現した大蛇が中から登場する。

鮮やかな赤髪に般若の面。
蛇の鱗を意味する三角模様の着物。
かろうじて白拍子の衣装を巻きつけているほか元の面影はない。
住職たちにあちこち追われて、橋掛りのほうにもやってきた。

初めて般若の面を見た時、
「なんてやさしい顔なんだろう」
と思った。
我ながらおかしい感想だが、思ってしまったものは仕方ない。
白拍子がかけていたのは定番の近江女か若女あたりだろうか、
どこか不気味さを隠し持っているような印象を受けた。
般若のほうは、
大蛇になって鐘ごと男を焼き殺したほどの恐ろしい情念と同時に、
幼すぎた少女の心の傷が感じられた。
筋書きを知ってるからといってしまえばそれまでかもしれない。
でもどちらの感覚も本当だ。

言ってしまえば逆ギレのストーカーである。
一方的に執着され殺害された若い山伏にはほとんど落ち度はない。
あまりに幼稚で短絡的な恋の恨み。
それでも。
これが愛の正身。
人の愛を求めて、人の道から外れた。
あまりに純粋すぎた。

 とはいえ、それがどう解決のつくことであったろう。
 鬼になっても、ならなくても、
 愛することと、愛されぬこととは、
 けっして解決のない心の闇に属することなのであって、
 女にはいっそう激しく、変貌をとげてしまった現実だけが残ったにすぎないのである。

道成寺は鉄輪よりももっと苛烈に突き抜けた感はある。
しかしそれでも、取り返しのつかなさに絶望し悲嘆した心がなかったとどうしていえるだろうか。
ことばを信じて愛に敗れた人の恥と怒りを凝縮したひとつの面。
やさしくて、かなしくて、いとしくて。
涙が出た。

変身後のシテがただただ哀れに見えたのは、
3人対1人という視覚的な問題だけのせいだろうか。
祈祷に苦しめられて柱に巻きつき、
何度も恨めしげに鐘を見やった弱々しい姿に、
清姫伝説で語られているような恐ろしさは到底感じられない。
胸が痛んだ。
人であることを捨て、愛する男を鐘ごと焼き殺し、その後も何百年と続いた怨念は、
たかだか坊主3人に祈り伏せられてしまう程度のものだったのか?
そんなはずない。
本当なら、そんなはずないと思うのだ。
芸能の中の鬼は調伏されねばならぬ運命にある、ということをまざまざと痛感した。

ずっと鬼面にあこがれていたからだろうか、
「やっと会えた」
とどこかなつかしい気さえした。
般若を見てここまであたたかい気持ちになるとは予想しなかった。
なんだろうこれ、もはや愛?


道成寺が北海道で上演されるのは23年ぶりだそうで。
大曲ゆえいくつか条件が揃わないと無理らしい。
この貴重な機会に立ち会えて感無量。
ちなみに冒頭で運搬に失敗してしまった作り物の鐘、
またあの太い棹が出てきた時は観客一同緊張が走ったが、
帰りは一度も地面に下ろさず一気に揚幕まで運び去って事なきを得た。
ああホッとした。
最初のあれはなんだったんだ。
やっぱり演者側の皆さんもそれだけ緊張してたということか。
ともあれ色々興味深いことを体験できた。
二日間とも来てよかった。
新しい市民会館に能楽堂をつくろうという運動があるらしいが、
これ実現してほしいな。
いつかはキモノで能楽鑑賞。

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鐘の音

2007-09-30 00:14:14 | oni

今日も行って来た。

会場に入るとまず舞台装置が若干変わっているのに気付く。
竹のぐねぐね曲がったのが外され、
巨大ないけばな(と言っていいものか)がドンと置かれている。
昨日は土蜘蛛の千筋の糸をイメージしたが、
今日は道成寺の女の情念を花などを使って表現したのだそうだ。
しかし最も目に付くのはなんといっても昨日はなかったクレーン。
あれだ、あれに鐘を吊るすんだ、と早くも興奮。
座席は昨日とほぼ同じ橋掛り前。
まぁ・・・いいけどね・・・所詮B席だし・・・。

能でシテを努める観世喜正さんはすでに準備に入っているということで、
プレトークは代理の方が担当。
それだけすごい曲なんだ、といやがうえにも期待は高まる。

狂言は鐘つながりで鐘の音という作品。
撞鐘(つきがね)とか鐘楼とか関連ワードはあらかた出てくるので予習としてもよかったかも。
さまざまな道具が出てきた昨日の六地蔵にくらべ、
今日は登場人物も二人だけで道具もなしというきわめてシンプルな仕様。
主人から、息子のために金細工の太刀を作りたいから鎌倉へ行って値段を聞いてこいと言われ、
「金の値」を「鐘の音」と早合点した太郎冠者が鎌倉のいろんなお寺の鐘の音を聞きに行くのだが、
それぞれ異なる鐘の音を演者が声で再現しなければならず、
これが見所のひとつとなっている。

最初の寺では「ごぉ~ん・・・ご~ん・・・ご~ん・・・」とエコーも自分でかけて
「まぁふつうの音じゃな」と感想を漏らす。
次の寺では「ぽーーーん!」と素っ頓狂な声を出し「うっすい音じゃのう」。
薄い音という形容も新鮮だが、これは素で笑えた。
また次の寺ではみだりに撞くべからずという警句にびくつきながら撞いてみたら
「じゃがじゃがじゃが・・・」
なんかじゃかいもみてぇだなとアホなことを思ったが
「なんと割れ鐘じゃ」というオチで。
最後に訪れた寺は鎌倉一の名刹ということで
「どぉぉ~ん・・・どぉ~ん・・・ど~ん・・・」とすごくいい音。
「これだ、これに決めよう!」と得心する太郎冠者。

よく考えたら「何がだ!」っつう話なのだが、
太郎冠者はほくほくしながら主人の元へ帰り首尾を報告する。

主「おお戻ったか。で、金の値はいくらだった?」
太「・・・?」
観客爆笑。
太「いくらとかはよくわかんないスけど、鐘の音はこんな感じだったッスよ」

このへんの噛み合わなさはアンジャッシュのコントに通ずるものがあると思った。
勘違いに気付かぬまま太郎冠者は朗々と鐘の音を再現してみせる。
「ごぉ~ん・・・ご~ん・・・ご~ん・・・」
「ぽーーーん!」
「じゃがじゃがじゃが・・・」
などと聞かされ、主人は当然
「何言ってるんだコイツは、気でも違ったのか」と唖然。
観客さらに爆笑。
「どぉぉ~ん・・・どぉ~ん・・・ど~ん・・・」ももちろんすごくいい声で再現。
まったく美声の無駄遣いとはこのことだと思った。

「ね、いい音でしょ。これに決めましょうよ」と言うものの
当然主人からは怒られ、やっと勘違いに気付く。
そんなら最初から「こがねの値」って言ってくださいよ紛らわしいじゃないスか、
などと口答えして余計怒られるのがいかにも狂言らしい。

昨日萬斎さんが言ってたが、
狂言には大悪党はあまり出てこず、
たいていは小さな悪事を企てたあげく失敗する輩が多いのだそうだ。
なにか落語の世界のようだ。
ていうか今回の演目は落語でできそうだと思った。
憎めない小悪党が出てくる感じ。

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9/29

2007-09-29 22:38:04 | Weblog
重症だと思った出来事。
ドラッグストアの店員のお兄さんが声優みたいなしゃべり方だった。
ニコニコで歌ってる人ってこんなカンジなんだろうかと思った。

末期だと思った出来事。
コンビニで「のり・・・」という表記を見かけ、
のりあきを思い出してドキッとした。
よく見たら「のり弁」だった。

ちなみにドラッグストアのお兄さん、発声はかっこよかったが、
「千円からでよろしかったでしょうか?」
とNGワード連発だった。


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土蜘蛛

2007-09-29 02:49:01 | oni

行って来た。

年配ばかりだろうと思ってたが案外若い人もいた。
一人客も。
身内でおいらのような趣味がめずらしいだけで、
世間には同類がいなくもないようなので、
寂しいとかはもうあまり気にしないようにしようかと思う。
優雅なOLさんなどとは比べ物にならない身分だが。

スピカって結構寂しい場所にあるんね。
行くの初めてで夜でおいら自身が心細かったせいだろうか。
会場に入るためには一度地下へ降りるのだが、
わりと薄暗くて壁とか打ちっぱなしのところもあって
内装は思ったより寒々しい印象だった。
ていうかおいらの中でKitaraが基準になってるのがまちがいだろうか。

能・狂言と華道とのコラボということで、
会場には草月流のいけばな品が多数展示されていた。
草月流ってあれカーリーもそうだっけ?
草花だけでなく大ぶりな木の枝なども積極的に用い
モダンで豪華絢爛、カラフルで大胆なデザインが特徴的。

会場前の作り物展にまず心躍った。
いわゆる大道具・小道具。
能は基本的に見立ての文化なので、造形はシンプルそのもの。
たとえば舟といっても枠の部分だけで底はない。
作るだけなら文化祭で作れるレベル。
それで観客に舟をイメージさせて演劇を成り立たせるのだからすごい。
中啓とよばれる能の扇がおもしろかった。
持つ役によってさまざまな種類がある。
勝ち戦の武者が持つ勝修羅扇は松に日の出の絵柄、
負け戦の武者が持つ負修羅扇は波に入り日の絵柄、
というところが泣かせる。
鬼女が持つ鬼扇は、いつも決まったデザインかはわからないが
展示されてたのは鮮やかな赤地に薄紅の牡丹がどーんと描かれた絵柄で艶やかだった。
物販所では過去のライブDVDなどが販売されていた。
鉄輪があって思わず買っちゃいましたね。
おいらが馬場あき子先生の鬼の研究を読んで最も感動したくだり。
それが鉄輪の女。
過去にやっちゃっちゃー当分再演は望めないし、
これ以外に上演を拝める機会がそうそうあろうとは思えない。
というかもう見つけた瞬間から目が離せなかった。
やっぱり生成じゃないなぁ橋姫かなとかずっと思ってた。

会場には能舞台のセットが作られていた。
ただ鏡板とよばれる老松の描かれた背景はなく、
代わりに草月流家元のどでかい作品が。
8mもある竹を扇のように広げたりぐねぐね曲げたり
もはやいけばなではなく舞台装置。
四本柱や三本松もない。
目印程度に竹で作ってあるのは通常立ち位置の確認にしているからだろう。
何々づくしというのは能狂言でよく用いられる趣向のようだが、
今回の舞台美術はまさに竹づくし。

おいらの席はいわゆる脇正面(向かって左手の真横)、
橋掛りとよばれる出入り通路のすぐそばで、
真横というよりやや斜め後ろになる。
一般的な演劇鑑賞ではまずありえない角度だが、
橋掛りを出て行く人の姿、帰って来る人の顔がよく見えるので、
地裏(向かって右手の真横)より余程よい。
柱があると見づらいので省いてくれてかえってよかった。
隣はずっと空席かと思ってたが開演1分前くらいに女性がすべり込んで来た。
これがびっくりするぐらいすごい体臭。
くたくたのズボンにピンクのトレーナーにくまのアップリケという服装はともかくとして、
風呂は入ってこようよ。
しかも風邪気味らしく、会場の乾燥した空気にもやられて、
極力こらえてはくれているのだが頻繁に咳をする。
能がはじまると舟をこぎ始め、
二番目くらいにいいところでいびきをかく。
気持ちはわかるが(おいらも時々ねむくなった)、いびきはちょっと。
まったくいつどこに敵は潜んでいるかわからない。
しかし舞台がはじまるとそれも忘れるくらい見入った。

最初は観世喜正さんによる挨拶と解説のトークが30分ほど。
そう、能に興奮しすぎて忘れてたけど狂言には野村萬斎が出るんだよな。
本人が出てきて今更ながら感動した。
生萬斎。生萬斎。
テレビとおんなじ。

狂言の六地蔵は萬斎さん曰くスラップスティック・コメディ。
現代のお笑い芸人がやってるコントの原型は、
600年前に出来上がってたんだなぁ。
台詞もわりと聞き取れるし、
ふつうに何度も笑っちゃう。
現代のお笑いよりずいぶん原始的でじれったい表現方法のはずなんだけど、
じわじわおかしい。
音の響きが存外よくて、
大声を出したりドンと足踏みしたりされるとビクッとなる。
このへんの迫力はライブならではだな。

満を持して土蜘蛛。
つくづく能ってシュールな演劇だなぁと思った。
幕というものがないので、
後見(黒子・裏方的な人)が作り物を出したり除けたり、
地謡(ト書きを歌う人)や囃子方(器楽奏者)や演者が登場したり退場したりするところが
なにせ丸見えなわけである。
それでいて演者の所作や作り物はきわめてシンプルなものしかない。
観客が自身の想像力をフルに駆使して、
あるものを見なかったことにしたり、
ないものをあるように見たりする必要があるわけだ。
観世喜正さん曰く、演出というものがほとんどない能の中においては
源頼光が机に寄りかかって病に苦しむ様子を表現したりする土蜘蛛は
どちらかというと親切なほうらしい。

最初の頼光と胡蝶のやりとりとか、
中盤で独武者の家来が一人でしゃべるところとかは若干ねむくなったが、
土蜘蛛が巣を吐きかけるシーンは非常に興奮した。
幾筋もの長い白い糸がぶわーっと舞い上がるの。
しかも気前よく何度もやってくれる。
これは爽快!

後半は頼光の家から土蜘蛛の巣窟へと舞台が転換する。
当然この様子も丸見えなわけだが、
布で覆われた作り物の中に土蜘蛛さんが隠れているのが見えてしまった。
ああ、これは正面で見たかったな・・・と唯一思った瞬間。
おいらも正面席のみなさんと同じように、
うわっ布を取ったら土蜘蛛さんが隠れてたよ!って驚きたかったな。
なんかマジックの仕掛けをネタバレされたようで、
幸運と思っとけばいいんだろうけど・・・やっぱり損したような複雑な気分。

しかし後半でも土蜘蛛さんは太っ腹。
独武者とその郎等どもにこれでもかと千條の糸(チスジノイト)を放つ。
背景の竹セットにも、囃子方にも、前列の観客にもかかる。
お客さんは喜んでたが。うん、そりゃうれしいよな。
前半は僧侶の姿に化けているけれども、
本性を現してからは顰(しかみ)という悪鬼のような形相の面をかけ、
真っ赤な長髪に全身きらびやかな装束もたいへん美しい。

 汝知らずや我昔、葛城山に年を経し、土蜘蛛の精魂なり、
 なお君が代に障りをなさんと、頼光に近づき奉れば、却って命を断たんとや
 (俺は神武天皇の東征以来、敵対勢力として生き残ってきた、土蜘蛛族の生き残りだ。
  今も朝廷を転覆せんと企んだが、かえって頼光の手により返り討ちにあってしまい、無念だ。)

能ではまんま蜘蛛の妖怪というキャラになってるけども、
土蜘蛛とはもともと朝廷に抵抗した土着住民の呼び名であったというような事情も考え合わせると、
ガンバレ土蜘蛛さん、と思わず応援したくなってくる。
しかも独武者たちは手負いの土蜘蛛さんをよってたかって攻撃してるんよ。
やっぱ俺の剣名刀だな、よし今後は膝丸から蜘蛛切りに改名しよう、
なんてのんきに言ってる貴族よりはこっちに肩入れしたくなるのが人情ってものだろう。
・・・あれ、おいらだけ?

能にしては結構派手な立ち回りもあり、
一度は橋掛りまでやってきて斬り合いしてくれて感激した。
思えば面をかけていたのは胡蝶と土蜘蛛だけだったが、
胡蝶は地裏のほうへ退場してしまったので、
能面をちゃんと見られたのは土蜘蛛さんだけであった。
ところでこれたぶんハプニングだと思うのだが、
斬り合ってる最中に土蜘蛛さんが橋掛りから足を踏み外しかけたのを見た。
べらぼうな高所ではないが、落ちたら怪我は免れまい。
能面つけてると視界はほとんど失われるというし、
足にものっそい糸からまってる状態だし。
能にかぎらないが役者って結構危険な仕事なんだなぁと改めて思った。

そこらじゅうに糸を引きながら、
ついに斬り伏せられてうずくまるの図で舞台は終演。
ああ土蜘蛛さん負けちゃった・・・と少し悲しくなった。
でも立ち上がって退場するところも、
後見さんが一生懸命糸を巻き取り回収するのも、
やっぱり全部見えてる。
不思議な空間だ。

ああそれにしても夢のような時間だった。
ことばはあまり聞き取れなかったけど、
アクションが多かったおかげで状況はだいたいわかった。
今日の演目はお子様ランチのようなもの、
と最初のトークで言われてたのをしみじみ思い出した。
なるほどわかりやすくておいしかった。
明日はいよいよ能役者の卒業論文といわれる大曲・道成寺。
鐘楼は人目に触れてはいけない決まりだそうで、作り物展にも出されてなかった。
なんかぞくぞくするなそういう伝統。
今回のためにわざわざ新調して東京から運んで来たということなので、
どう吊るしてどう落とすのかたいへん楽しみ。

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9/28

2007-09-28 15:15:45 | Weblog
女、26歳。
時給制社員、ようはバイト。

一人で能を観に行く。

この孤独すぎる行為に
寂しさとかむなしさとかいろいろ突き抜けて
もはや興奮している自分がいる。
なんか変なテンションなった。

もういいや。

ってかんじ。


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9/27

2007-09-28 00:19:33 | Weblog
自分が金払わなかったくせに逆ギレするのカコワルイ

---

のりあキッスはすばらしい曲だなぁ今日も癒されたよ
やなことがあってもあのイェイ☆を聞くとどうでもよくなる
なんてマイリストばっかみてニヤニヤしてたらいつのまにか新曲でてたよマイガッ
すでにiPodに入れて毎日聴いてる
まさかハーミットおじいちゃんをお歌いになるとは・・・でもすばらしすぎる
寝不足の朝でもこれ聴いたらテンションあがるよ
またこれを敬老の日に公開するぴゃー様が素敵すぎる
おいらもうおじいちゃんはいないけどおばあちゃんを大切にするよ
久しぶりに手紙でもかくよ
杜の詩は4部読み終えたばかりのおいらのハートを直撃したよ
あまりのタイミングよさにおののいた
詞のせつなさにため息
そして音域の広さにため息

あと最近あれすき
ROHAN
やんなるくらい天才だ!
だが断る
死ぬ前に一度くらい言ってみたい
なにげに4部も名言多いよなぁ
やっぱり露伴先生は4部の裏主人公


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今週のじゃんぷ

2007-09-27 02:17:55 | wj
また早売りなのわすれて火曜日によんだ。
もはやちょっとした記憶障害。

アイシールド。
あああもう。
なんかおかしいとは思ったんだ。
わかったよもうひるまさんはプライベートに関しては絶対明かさないヒト。
それにしても蛭魔妖一上中下すばらしい回想だった。
どちらかというと栗田良寛上中下のような感じもしたけど。
最初からずっとアメフトやりたかったのは栗田で
なりゆきから共鳴したのはひるまさんで
そんなお前ら面白えっつって協力してくれたのがムサシで
顧問やってくれたのがどぶろく先生で
元祖デビルバッツ誕生秘話。
脅迫手帳ってアメフトのために生まれたのか。
思えば脅迫自体はいつでもどこでもやってたけど
脅迫手帳をひらいたのはアメフト絡みの時だけだったかも。
思わずじーんとしちゃったよ。
自分が、アメフトの面白さを教わってすきになったから、
やる気のない500人より使える1人ってすぐ思えたんだろう。
その後のひるまさんはずっとそうだ。
最初のきっかけは脅迫でも、結局アメフトの面白さを教え込んで抜けられなくする。
ひるまさんほんとアメフトすきなんだなぁ。
栗田とはちがったタイプの部活バカ。
ていうか一体いつから阿含と知り合いなんだ。
世にもおそろしいギブアンドテイク。
中学からこんなんじゃ雲水お兄ちゃんは苦労したろうなぁ。
峨王に負けた番場さんの特訓で勝てるようになるんだろうかとか無粋なことは言わないようにした。(言ってるが)
2年生連中の強さは登場時から完成されていて、
デスマーチなどでも目覚ましい成長というのは1年を中心に描かれた。
ここへきて栗田の特訓というのは興味そそられますな。
栗田の純粋な思いはデビルバッツのスピリット。
対白秋戦でひるまさんを護るところをぜひ見せてくれ。

銀魂。
夏休み過ぎたどころか北海道はもう寒いぜ空知くん。
でも真剣に取り組んだらとことんやってしまう空知くんがすきだ。
今回のエピソード、おいらなんかは非常に励まされ感動もしたんだけど、
本来の読者層である少年たちにはぴんときているんだろうか・・・。
まあいいや。オチもすごくよかった。
空知くんの描くベタはほんとうにいいベタなんだ。

ネウロ。
池谷と由香は作者公認。
ネウヤコとはまた別の意味でマニアックにやばいカップルだ。
なのにこんなにほほえましいのはなぜなんだろう。
2話目は男女というより望×吾だよね?
無駄に望月ぞっこんな若奥様と無駄に風格出る望月もちょっともえたけど
吾代にあんだけ甘えるのはやっぱり望×吾。
望→吾で望×吾。(繰り返さんでいい)
ヤコと叶絵の女子高生らしいおしゃべりになごむ。
いきなりオチきちゃった時のヤコの表情がすごい好きだ。
叶絵はたしかに節操がないが、ある意味とても心が広いと言えるかもしれない。
それよりヒキが気になる。
えっまさかほんとに浅田そんな?

テニス。
つっこんだら負けだとは思うが
乾先輩のミイラ巻きは完全にふざけすぎだろ。
ギャグにしてもひどい。
ひどすぎて笑っちゃったじゃないかちくしょう。

スケットダンス。
なんかすっごいもえる生徒会キター。
前髪短いまつげ副会長イイ。
可愛い顔して気の強い子はもえるなぁ。
笑顔の会長にも期待。
善人キャラでも腹黒キャラでもどっちもいける。
両方だとなおよし。
やっぱね敵役がいなくちゃ盛り上がんないよね。
もうこんないいキャラ用意してんなら惜しんでないで早く出そうよ。
面白くなってきたのに手遅れってじゃんぷではほんとよくあるんだからね。
ハラハラさせられるぜ。
部活をつぶそうとする生徒会って昔愛読してた森奈津子の少女小説にもあったなぁ。
ベタだけどこういうの好きだぜベタ最高たのしみ。

ジャガー。
ぴ、ぴよひこなんかすごいイケメンじゃね?
びっくりしたんだけど。
ハマーのキャスティングがもう・・・。
ポギーは映画出ないのかなぁ。




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9/26

2007-09-26 23:54:13 | tvmovie

ああー
ミラクルタイプぅー
なんでだー

またおいらの好きな番組が終わる
さみしい

そういえばザ・ワイドもおわるんだ
どんな話題も適度な距離をもった冷静さでさばき
絶妙なタイミングでコメンテーターに話を振っては切り上げ
時には自らの意見を熱く語る
草野さんの名司会っぷりが一番堪能できる番組だったのに
いってもワイドショーだから
ネタ自体は下種なものも多かったけど
草野さんには品があった
東大卒で筋肉ムキムキな史上最強の司会者
下劣な話題が上品な語り口につつまれてなんとなくごまかされてしまう
不思議な番組だった

ミラクルタイプ
なでしことかニキータ女とかすきだった
ミラクルダイアリーみたいなシリアス系も
松下さんの女優魂あふれる熱演にいつも感心した
再現コント番組といってるけど
そこらへんのドラマよりも
役者さんたちの「演技」にかける真剣さが伝わってきた
コントの中身もおもしろかったけど
一生懸命演じている人たちをみるのが楽しみだった
つまんないドラマみるくらいなら
ミラクルタイプのほうがずっとおもしろい
ゴールデンタイムにリリーさんの金言が聞けるというのもある意味ミラクル
ミラクルさんかわいかったなぁ
ハイのハイのハ~イ


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9/25

2007-09-25 23:47:53 | Weblog
兄が来ていたのである。
普段は愛知で会社員をしているが、
遅めの帰省ついでに妹のところへ寄ろうと思ったらしい。
いつもは素通りなのにめずらしいこともあるもんだと思ったが、
会うのは3年ぶりくらいになると言われた。
電話もメールも全然しないのだが、
そんなに長いこと会ってない気がしてなかったので驚いた。
連絡といえばその時みてたドラマの感想などを唐突にメールしてくる程度である。
しかも内容はたいていきわめてくだらない。
でもって偶然おいらもそれみてたりすることが多いのが気持ち悪い。
なんだこの兄妹。
適当に相槌を打っていると、
言いたいことだけ勝手に言って満足して終わりやがる。
こんにちはもこんばんはもひさしぶりもおやすみもなんもない。
まぁそんなだからおいらも全く気を使わなくて済むのだが。
家族ってそんなもんかなと思う。

彼が全然老けてないのにも驚いた。
ペーペーとはいえ大企業の社員たる風格が微塵も感じられないのはどうなんだ。
両親をみるに年齢より若く(ってか幼く)みられるのは遺伝と思われるが、
それにしたって最近ようやく中学生にみられなくなったってお前それ他の女子の前で言うなよ。

かくいうおいらはしばらく全身じろじろ眺められた挙句、
「なんかお前若さがなくなった」
と言われた。
3年ぶりに会ってそんなダメ出しがあるか。
減ったとか薄くなったとかじゃなくて、ゼロということかそれは。
まぁたしかにこの夏は鬱で黒ずくめになったし、
むしろ能にはまるくらい枯れさびたほうへ向かっていたわけで
もとよりキャピキャピした服装に毛頭興味はないが、
肉親に言われるとそれなりにむかつくな。
気がつくと今年の秋はモノトーンなんだと反駁している自分がいた。
今朝などわざわざ明るめの色調を選んだりして。
なぜあんな貫禄ゼロのサラリーマンの言うことをいちいち気にせねばならんのだ。クソ。

まぁでも夕食おごらせたから許す。
ここ数年で仲良くなったというか話が弾むようになった。
中高生の頃は、彼は健全なる部活バカだったが
おいらはオタク真っ盛りで完全に頭がおかしかったので話にならなかったのだ。
あの頃のお前は話が通じなかったと大学時代にぶっちゃけられたのも
今ではいい・・・いやよくはないが・・・まぁとにかく思い出。
トリノの荒川静香のフリーをいまだに録ってあると言ったら
よしそれを見ようと張り切り出し、
なぜか2人でビデオ鑑賞するはめに。
しずかちゃんのイナバウアーは相変わらず美しかったが、
なんだこの兄妹。

母のように午前4時半に起き出したりPCいじったりはしないが、
部屋の狭さも考えず荷物おっぴろげたり、
おいらが布団の準備してるのにのんきに漫画よんだりしてるところは
やっぱ男かなという。
しかもこれやるわと称して移動中に読み終わった雑誌を置いていく。
うちはあんたのゴミステーションじゃねえと言ったがヘラヘラ笑ってた。このやろう。
ていうかお前プレジデントなんか読んでんのかよ。
偉いなぁおいら仕事にしたものは嫌いになってしまうから
ビジネス系の書籍や経済系のテレビ番組はほぼもれなくアレルギー状態だ。
そんなわけで超いらないんだけど。るるぶ函館もいらねえし。
でも結局置いていきやがった。
貧乏性なのでたぶんそのうち読んでしまうと思う。

年々顔が似てくるのが気持ち悪い、と言ったら
そりゃ成分が同じなんだから当たり前だろうと諭された。
成分て。
ちなみにサディー家は父がA型、母がB型、兄とおいらがAB型というわかりやすい血液型構成である。

ちっとは見返してやろうと思い、普段は茶漬け程度しか食わないが
今朝はきのこのみそ汁などをこしらえてみた。
きのこの味が出ているとかなんとかぶつぶつ言いながら食っていた。
おいらも舞茸のダシが出てるんだよとぶつぶつ言いながら一緒に食った。

お土産のお菓子と雑誌(ほぼゴミ)と空のペットボトル1本(ゴミ)を残して
兄は実家へ帰って行った。


コメント
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heavensdoor

2007-09-24 01:08:44 | jojo
裏主人公かってくらい
後半出まくってたなぁ露伴ちゃん

仗助は未起隆がサイコロになってくれたからって
まずやることが「露伴から金ふんだくってやろう」ってのは良くないよね
家半焼かわいそう
ていうか未起隆ほんとに宇宙人だったんだろうか
天然お人好し宇宙人

スタンド使いも殺人鬼も幽霊も宇宙人もいる町・杜王町


コメント
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