車椅子探偵の幸運な日々(ウィル・リーチ/早川書房)
原題は HOW LUCKY
舞台はアメリカ南部の、大学を中心とする街。主人公は26歳の男性。難病をかかえながらも、電動車椅子と複数の介護士に支えられ、親元を離れて一人で生活している。職業は、在宅ワークによる航空会社の苦情受付窓口。
ある日、玄関ポーチから、通りで若い女性が車に乗り込むのを目撃するが、その後、彼女が行方不明になっていることを知る。
その事件の顛末を描いたミステリ。しかし、タイトルから想像されるような、安楽椅子探偵の趣向ではない。
この本の魅力は、常に呼吸停止の危険に直面し、進行性のため悪化することはあっても回復の見込みのない難病を抱えた青年の、生活と意見を存分に描いているところ。
ミステリとしての出来映えはともかく、ミステリ仕立てでなければ、読みとおすのがずっと難しかっただろうし、そもそも、この本と出合うこともなかったかもしれない。
だから、日本語タイトルがミスリーディング、などというのはやめておこうと思う。
読みながら、原題と内容の関連がもうひとつ飲み込めなかったのだが、終盤に、一気に明らかになる場面がある。
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