KAORU♪の「気ままなダイアリー」

KAORU♪が見つけたステキな風景、出会ったおもしろいできごと、おいしい料理などを“気が向いた時”にご紹介します。

★「光の中のスリランカ」第八話“シャンティの響き”<最終回>

2012年02月25日 | 旅の物語

ホテルのバラエティー豊かな
アクティビティに参加すると、
それだけでホテルのスタッフや先生、
また宿泊客同士が顔見知りとなり
ぐっと距離が縮まっていくのが
このバーベリンの魅力。



ある日のこと。

プールサイドで午後5時すぎから開催される
太極拳に参加しようと思ったのだが
少し前から雲行きが怪しくなり
突然の激しいスコールと、雷。

どうしようかな?と迷ったが
傘をさして部屋を出た。

プールマットやタオルが置いてある
屋根のあるスペースが
会場となっていたが、
生徒らしき人は誰もいない。

今日はプライベートレッスンですね。
さあ始めましょう。

時間になって先生がレッスンをスタートさせた。


あたりは真っ暗。そして稲妻が光る。
波の音と激しく降り続ける雨音がBGM。


なかなかありえない状況の下での太極拳。


あいかわらずカラダの硬い私に
先生は、時折手を添えて
丁寧に指導してくれたのだった。

パソコンの仕事?
首や肩が凝ってる?

あとで、少し診てあげようか?


なにしろ、私しか生徒がいないので
超ラッキーである。

お願いします♪と返事をして
レッスン終了後、イスに腰掛けた。


あとは、どこか具合悪いところある?
と聞かれたので、体調を崩してココに来たことを
伝えると、先生は手のひらのツボを教えてくれた。


一ヶ所5秒ごとに離して、2分間押す。
片手8ヶ所。両手のひらで16ヶ所を2分ずつ。
単純計算で32分かかる。

それを1日2回。

そして、グリーンのボトルに入れた水を
太陽に3時間あてて、毎日飲む。
ブルーボトルも合わせて同じようにするといいのだという。
(カラーボトルセラピーといって
病状や状況によってカラーが違うのだそうだ)

そして紅茶を毎朝飲む。
(スリランカでは紅茶のことをブラックティーという)


ほかにもあれこれアドバイスしてくれた。

先生は太極拳の小さな道場を開いていて
セラピストとして活動しているのだという。

本当に親身になって、一生懸命話をしてくれた。


いつまで滞在するの?
じゃあ、あと2回は来れるね!
できるだけこのレッスン全部参加して。
知っていること、いろいろ教えるから!

もしわからないことや、質問があったら
いつでも手紙を送ってくれたら返事を書くからね。

そう言って、
ゼッタイに良くなるから!
ゼッタイに大丈夫だから!信じていて!

と何度も何度も言ってくれた。

その真剣な顔が、とても嬉しかった。


だだの宿泊客のひとりに過ぎない私に
こんなに本気になってこの人が言うんだから、
間違いないんだ。そうなんだ。私、信じよう。


あれから2ヶ月以上たった今でも、
ツボ押しと、グリーンボトルや紅茶など
できる範囲の中で、ちゃんと続けていて、
私のライフワークとなっている。

***************************






毎朝6時半からのヨガでは
週の前半と後半では先生が交代する。

一人は男性で、ほとんど何もしゃべらず
黙々とポーズをとる。
そのあとについてカラダを動かしていくのだが
結構ハードなのである。
まるで体育会系ヨガというカンジである。

そして、必ず最後に先生が
「Your Family、Your Friends、 Your Loverに感謝を」と
静かな声で手を合わせて、終了する。

その最後のフレーズが、なぜだか毎回ジーンと来た。


異国に来ていると、すっかりその生活に
ハマってしまっていた。

時々思い出しては頭をかすめるものの、
はるか遠い存在となってしまっている
日本にいる大切な人々の顔を思い浮かべて

みなさんのおかげで、今ここにいられることに
心を込めて感謝することができる。



もう一人は若い女性で
アーユルベーダヘルスセンターのセラピストでもある。

彼女はヨガのレッスン中ずっと
とても綺麗な透明な声で唄ってくれる。

「シャーンティー、シャ~ンティ~。シャ~ンティー」と
抑揚をつけながら会場いっぱいに響き渡る声で、
SHANTI(シャンティ)と3回唱えてスタートする。

まるで心の奥底、魂に届くような声のトーン。
そして、子守唄のように安らいだ気持ちになれる
不思議な言葉。



戻って調べてみたら、ヨガのマントラなのだという。

サンスクリット語で「平和、静寂、至福、祈り」を意味し

1回目は自分へのシャンティ。
2回目は周囲の人へのシャンティ。
3回目は環境へのシャンティ。

心身が満たされていくと、
自然と平和になり、幸せを感じ、
感謝を込めて祈りたくなる。

そんな気分になるのである。



木枠だけの窓からさわやかな早朝の風が吹き、
しだいに太陽が昇り始めて、
あたりは明るくなってくる。

そして、
小鳥のさえずりが、にぎやかさを増していく。

波の音もたえず流れていて、本当に心地よい。

ゼイタクな時間と空間に身をゆだねて、
自分の心と体だけのことを考える
この上ない極上のひととき。


***************************

最終日。

飛行機の出発時刻は夜中の12時近く。

チェックアウト時刻に関係なく
ホテル発の午後6時過ぎまでゆっくり滞在させてくれる
嬉しい心遣い。




いつものデイリースケジュールも
しっかりとこなすことができるし、
午後3時からのボートツアーにも参加。
ギリギリまで目いっぱい
プログラムやアクティビティを
満喫できるのがホントにすごい。


【川岸に並ぶ、ドイツ人やロシア人の別荘】


【最終日のジャングルボートツアー】


今日で最後のアーユルヴェーダかぁ・・・。
と思いながらトリートメントルームに入った。


***************************


やっぱりこの人が私の担当のセラピスト?

最終日近くになってようやく気がついた。


笑顔よしで、感じの良いスリランカのお母さんって
いう雰囲気なんだけど、
このおばちゃま、おしゃべり好きらしい。


最初のヘッドマッサージは一人なので
問題ないが、ベッドに横たわり、もう一人が入ってくると
小さい声でずっと、コショコショとお話している。

担当が変わって違う組み合わせの場合だと
だまってトリートメントに集中して、
もちろん時々会話はあるものの、用件のみで
そんなに気にならないのだが、
このおばちゃまはとにかくお話好きなのか、
ちょっぴりだけど気になっていた。






鏡の前のイスに座ろうとすると、私の顔を見て、

満面の笑顔で、
「Last one.(ラスト ワン)」今日が最後ですね。と言う。

私が最終日だということを
しっかり把握していた。
さすがドクターの指示書がきちんと
手配され、それに基づいているだけある。

アイドロップスを点眼して
ベッドに横たわり、2人がかりでのトリートメント。
最後に蒸し器でスチームされていたいい香りの
ハーバルボールを2人がポンポンと
体に押してくれると
全身がポカポカと温まる。

よくホテルにあるようなラグジュアリーなスパや
エステルームというよりも、
昔ながらの病院か、学校の保健室のように
さまざまなトリートメントアイテムが
レイアウトされている。


セラピストたちも皆、
エステシャンとは程遠い
エプロンをした看護師さんのようなスタイルなのである。

それがまた、本格的な治療のようで
健康になれるような気分を盛り上げてくれるのだ。


ほどよく冷めた、ほんのり甘いハーバルティを
最後に飲んでトリートメントが終了になるのだが

その時にもまた

「Last one.(ラスト ワン)」と満面の笑顔で
私に差し出した。

「Thank you!」と受け取り、最後のハーバルティを
飲み干し、彼女にグラスを手渡すと、


「I with your Best,Madame(マダム)」
ベストを尽くしてくださいね。と言ってくれた。


そうか、この人と何にも会話していなかったけれど
ちゃんと私の状態をわかっているんだ。
指示書があるんだもの、そうだよね。


何も言わなかったけどたぶん、
彼女なりに私の体を気遣ってくれていたのだろう。

私は彼女のおしゃべりのことだけ気にしてたけど
そんなのは小さいことに過ぎなかった。


最後のひと言と、優しいまなざしで
今までの自分が恥ずかしくなり、


そして、止めどもなく熱いものがこみ上げてきた。


そうだ。
ベストを尽くすだけでいいんだ。


今していることは本当に大丈夫なのだろうか、と
疑心暗鬼になり、不安にかられてみたり、
結果を出そうと焦ってみたり、
思うような結末にならないことに悲しみや絶望を感じたり・・・。

私たちは、いつもその先の未来に思いを馳せて、
計算したり予想をたてて、一喜一憂する。

そして今この時に
全力を出すことをおざなりにしてしまいがちだ。


中学高校のテニス部時代、
試合では常に最善の力を出しきれることだけを
考えていたのに、

いつのまにか、大人になり
そんな言葉も意味も忘れてしまっていた。


結果はどうであれ、
「ベストを尽くす」のが
そういえば私の原点だった。


あふれる涙がとまらないまま、
彼女はいつものようにオイルで足元がすべらないように
湿布をしてくれる中庭まで手をつないで
連れて行ってくれた。


***************************






いよいよ10日間の、
そしてスリランカでの2週間の
すべての日程を終えて旅立ちの時がやってきた。


ベルギー人の「Katurien(カトリゥム)」と
もう一人、
仲良くなったドイツ人の「Gudrun(ウッドウム)」が
見送りに来てくれた。



私、変わらなきゃ。
ライフスタイルや生き方のリズムを
変えていこうと思っているの。


そうね。
まずは自分の体のことに集中するのよ。
今までみたいになりそうになったら、
写真を見て、ここでの時間を思い出すのよ。


Katurienはそういってくれた。


涙ぐむ私の頬にそっとキスして
やさしくハグをして
私たちはバイバイをした。


***************************





14日間の長い旅路を終えて空港へと
車は走り出した。


帰りは、たまたま偶然同じ便の
Sちゃんと一緒に日本へと向かうことになり
思いもかけず、にぎやかな帰路となった。


一人旅だったことをすっかりと忘れ
友だち達と一緒に出かけたような
感覚に陥るほど、

本当にたくさんの人たちと出会い、
たくさんの刺激を受け、
あふれる「愛」を感じることができた。



それは国境や人種を越え、
言葉の壁さえも意味がなく、
老若男女、立場も関係なく
孤児から、同年代、老境にさしかかった先生まで

さまざまな人々と心を通わせることができた
スリランカデトックスの旅。


多くの人々のおかげで
まぎれもなく私の心も体も、
健やかに、穏やかに整いはじめたようである。

“命の洗濯”、というのは
まさにこんなことを言うのだろうか。


今でも、ときどきふと
こだまのように聞こえてくる、
あの時聞いていた波の静かな音。
小鳥たちのかわいいおしゃべり。

歩いている時に思い出す、
スリランカ人たちのゆったりと歩くリズム。

天使たちのまっすぐでピュアな瞳。


そして、

あの「シャンティ」の魂に響く
自分と、周りの人と、
地球や宇宙にすべてにむけての祈りを。



きっとずっと忘れない。


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