十六夜の SORA から 夢が降ってくる

いつも全快で 愛と笑い 届けます
 ☆You'll never walk alone☆
~ RYO,IWAI ~

コバルトブルーの女神 第二章 Summer breeze8

2015-06-15 04:19:16 | SORAからの贈り物☆日記☆
考えてみれば 海のこと何も知らない
お父さんと二人暮らし
小さい頃 俺が住んでいたあの小さな町にも居た
歳は俺と一緒
連絡先は家の電話

海が好きだ
多分 いや絶対海も俺の事好きで居てくれた
それ以上もそれ以下も必要ないと思っていた
でも 一緒に過ごした二人の会話を少しずつしっかりと思い返すと
不安そうに繰り返した彼女の台詞が甦ってくる
“私の研究ってね 綺麗な海にしか居ないさんご礁のね研究で
いつか薬になるんだよ”
“私の身体ってどこもおかしくない?”
“ずっと昔から光の事知ってたよ”
“ずっと昔から光の事愛してたよ”

俺の中の海は ブルーの瞳と透き通る素肌 まるで天使が舞い降りた
と思わせる 素敵な笑顔と優しさの結晶・・・
全部表面的じゃないか

部屋の中が物凄く明るくなった後 部屋を揺する様な振動
雷が近くに落ちたみたいだ
はっとしたのは一瞬で また昼間なのに真っ暗になった部屋から
南のSORAを見上げて 自分の愚かさに空しさを感じた
そう そこには総てを失った事しか思えない 空っぽの俺が居た

遠くでまた落雷が光る
海・・・海・・・海・・・

どこかで小さな虫の鳴き声の様なトーンが耳にあたる
・・・・
・・・・る・・・だろ
・・・ひかる・・・るんだろ・・・ろよ
虫の鳴き声がはっきりしてくる
その声に俺を覚醒させる言葉が混ざり 耳に飛び込んで来た

・・・みちゃんが・・・うみちゃんがさ・・・おい・・・光

食事も摂らず髭も生やしっぱなし 髪の毛もくしゃくしゃの俺が
雨のあたる窓ガラスに映る
うみ? 海?

『光 居るんだろ 電話に出ろよ 海ちゃんが 海ちゃんがさ
いいから早く電話に出ろよ 馬鹿やろう』
虫の声ではなくて 翔太の声だ

なまりきった身体でも 電話まで走って受話器を耳にあてるまでは
物凄いダッシュだったと思う
慌てて一度落とした受話器を拾い上げて
『翔太 翔太 海が 海がどうしたって』

翔太の返事に合わせてまた近くに落雷の音
部屋中を明るくする稲光
『え?もう一度言ってくれよ』

蒼穹のSORA
夏のSORAとは程遠い悲しい色

耳鳴りの向こうの翔太の声は 臨終を告げる医者の声の様に
低く重く そして遠くで聞こえた

海 
俺を空っぽにしてどこへ行ったの