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作品の一覧はカテゴリーのINDEXからどうぞ。

野いちご

2010-06-24 18:39:52 | Ingmar Bergman


ストックホルムで孤独に生きる79歳の老教授が、名誉博士の称号を授与されることになった。式典の日の明け方、自分が葬式馬車の柩のなかに横たわっている夢を見る。車で式典に向かう途中、教授は昔住んでいた屋敷に立ち寄る。そこで野いちごを見つけた彼は、若き日の悲恋を回想する。そして車は式典会場へと向う。
老人の1日を通して死の予感や不安、人生のむなしさなどを、さまざまな夢や幻想を織り交ぜながら、閑静に美しく描きだした。やがてそれらの暗闇から光明を見いだすという、巨匠イングマル・ベルイマン監督のポリシーが全面に展開される、映画史上に残る名作である。




やっと、この作品を観ることができた。
この作品は、ベルイマンを僕に教えてくれた先生が
特に勧めてくれた作品だった。

主人公のイーサクが名誉博士の賞の授賞式に行く道中、
自分の過去の様々なことを振り返る。

名誉を手に入れたってクソだ、みたいなことを
イーサクは言っていた。
イーサクが学問に没頭した理由、
人と接するのを断っていた理由などを
過去を顧みることで、生々しく思い出していく。

エゴイズム、という言葉がでてきて、
夏目漱石の『こころ』を思い出した。
人間は誰しも、自分が生きていくのに必死だけれど
その中で、誰かに支えられたりしている。
孤独と思っていても、自分のことを想ってくれている人がいる。
妻を早くに亡くし、他人と関わりを断っていたイーサクも
人との関わりの中で、安らな気持ちになって眠りにつく。

人に傷つけられたりもするけど、
それを救ってくれるのもまた人であり、
そういう今現実に直面してることにまっすぐに
向き合え、と、ベルイマンは言っているのかな。


ああ、もうすでに、もっかい観たい。


★★★★★
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『野いちご』 1957年 スウェーデン
原題:SMULTRONSTALLET
監督:イングマール・ベルイマン

処女の泉

2010-06-24 18:03:27 | Ingmar Bergman


世紀のスウェーデン、片田舎の豪農の一人娘がある日曜日、遠方の教会にロウソクを捧げにいくが、森で三人組の無法者に会い殺されてしまう。それを知った豪農は彼らに復讐の刃を向けていく。しかし自分の仕出かした罪深さに悩み、償いとしてこの地に教会を建設すると神に誓う。すると……。この上なく美しいバラッドの世界。復讐という概念を乗り越えてこそのキリスト教信仰を、ベルイマンが静謐な映像で問いただす。


ベルイマンの作品にはいつも、心臓をつかまれるような
そんな気持ちになる作品が多いです。

裕福な農家の娘であるカーリンに嫉妬をする雇われている身重の女、
インゲルはオーディーンの神にカーリンのことを呪う。

教会へ向かう道中、カーリンが羊飼いと名乗る男に
レイプされて、殺されてしまう。

美を破壊する暴力。
それに対する報復という名の制裁。

神に祈ることで救われるのか。
ベルイマンがいつも問う神の存在とは。
人間の罪とそれを見ている神の答えとは。
最後に神は奇跡を起こす。

キリスト教をもっと知っていれば
わかったかもしれない。
信仰とは?
罪を赦してもらうためにするもの?
人間と信仰は切り離せないもの?
難しいな。

シンプルなストーリーの中に、人間の過ち、罪、
赦し、信仰、そして神の存在を問うている。


衝撃的な作品。

★★★★
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『処女の泉』 1960年 スウェーデン
原題:Jungfrukallan
監督:イングマール・ベルイマン

ある結婚の風景

2009-10-20 19:38:59 | Ingmar Bergman


弁護士である妻マリアンヌと、大学教授の夫ヨハン。結婚10年目の満ち足りた生活を送っていた彼らに、あるとき模範的な結婚生活についての取材が行われる。数日後、活字になった記事を読んだ2人は、そのあまりのつまらなさにがく然となる。やがて夫婦の間に、次第に亀裂が生じていく。夫婦ディスカッションドラマともとれる本作は、もともとは5時間に及ぶTVシリーズだったが、好評につき再編集され劇場公開された。


夫婦生活のドキュメンタリーみたいな作品。
何の問題もないような夫婦が
実は今までお互いがお互いに言えない
もやもやを抱えていた。

結婚したらこういう問題には直面するものなのか
それはどうかはわかりませんが
誰かと一緒に共同生活を続けていくのは
もの凄く大変なことというのが
この映画を通して伝わってくる。

お互いが相手に対して持っていた不満を
ぶつけ合う。
それを聞いてお互い愕然とする。
今までこんなに解り合えてると
思っていたのに…

ビデオテープ2本にわたって延々と
この夫婦の会話のやりとりです。

会話だけなのに
最初の取材を受ける二人の空気
思いをぶつけ合う二人の空気
離れて再び会った時の二人の空気

それぞれがじわじわ伝わってくる。


近すぎても見えなくなるものなのか。

愛がなくなった夫婦はどうすべきか。


★★☆☆
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『ある結婚の風景』 1974年 スウェーデン
原題:Scenes from a Marriage
監督:イングマール・ベルイマン

第七の封印

2009-10-03 22:37:42 | Ingmar Bergman


小羊が第七の封印を
解いてから

約半ときの間にわたり
天国は静かになった


私は見た
神の前に7人の天使が立ち


7本の角笛を与えられるのを




土着信仰とキリスト教信仰が混在する中世の北欧を舞台に、十字軍の遠征から帰途についた騎士と死神の対決を通して神の存在を問い掛けた作品。



神は存在について

私を苦しめながら
神が心に残るのはなぜか

私が神を呪うのに
なぜ神は私にとって
振り切られぬ存在なのか



恐怖の中にあって
描くものを私たちは神と呼ぶ




死神⇔神

黒⇔白

神⇔悪魔

生⇔死

天国⇔地獄

白い服⇔黒い服


死神とチェスをして勝てば命を助けてもらえる。
神は存在するのか。
僕たちは死神とはいつも一緒にいる。

死神とチェスをしているシーンが凄く好き。





★☆★☆★
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『第七の封印』 1957年 スウェーデン
原題:Det sjunde inseglet
監督:イングマール・ベルイマン

不良少女モニカ

2009-09-21 22:35:50 | Ingmar Bergman


孤独な青年ハリーは、モニカという少女と出会い恋に落ちる。やがて二人の間には子供が出来るが、モニカはハリーと子供を捨てて立ち去ってしまう……。


温かい家庭を築きたかったハリー
何にも縛られずに自由に生きたかったモニカ

前半の二人でモーターボートに乗って
自由気ままに旅をするシーンと
モニカが妊娠がわかり、食料も尽き
後半の街に戻ってからの二人の価値観の違いや
すれ違いによる破滅への道のりへの対比が凄い。

理想と現実の差?
実際に生きるために生活していくといことは
お互いの思うようにはなかなかならないものなのか。

ベルイマンはそういった二人の人間模様を
冷静に見つめていると思った。

モニカには家庭は必要なかった?
モニカは昔から兄弟も多く、大勢の中で
生活することにうんざりしていた。

ハリーと結婚することで、そのような息の詰まるような
生活から解放されようとしていたのに
結局貧しく平凡な生活に耐えられなくなった。
彼女は、これじゃ昔と変わらないじゃないかと思った。

昔の男とよりを戻し、服を買い、遊び回るモニカ。
ショックを受けるハリー。

結局、子どもはハリーが引き取り
モニカは家庭を捨てた。

最後にハリーが楽しかった水の旅を
思い出すシーンで終わる。

原題は「モニカと過ごした夏」
日本じゃこういうの不良少女なんやな。

理想的な旅では上手くいっていた二人。
現実に生活しようと街に帰ると上手くいかなくなる二人。

お互いが求めるものが違った。



☆★★☆
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『不良少女モニカ』 1953年 スウェーデン
原題:Sommaren Med Monika
監督:イングマール・ベルイマン

鏡の中にある如く

2009-09-20 13:15:53 | Ingmar Bergman


医者から精神分裂症と宣告された姉、彼女に童貞を奪われる17歳の弟、彼らの運命を冷静に見つめようとする作家である父の3人を主人公とし、近親相姦というショッキングな題材のうちに人間の存在や神について鋭く考察したベルイマンの代表作。「神の沈黙」三部作の第1作(第2作は「冬の光」、第3作は「沈黙」)



パパ
恐いよ

カリンにしがみついたら
現実になった

意味がわかる?


もちろん


現実になって僕は飛び出したんだ

夢心地だったよ

だけど何も起こりはしない


分ってる


もういやだよ


大丈夫だ
耐えなけりゃいかん


それは何だろう 神かい?

神を証明できる?


できるさ

よく聞いておくれ


聞く必要がありますね


僕の希望のヒントだが
それは愛が真実として存在することだ


特殊な愛ですか


すべてのだ

最高から最低
美醜を問わない

あらゆる愛だ


愛への願望だね


願望も否定もだ
信頼も不信もだ


それでは愛が神の証明?


愛が神の存在の証明なのか
神自身かは分らん


神も愛も同一なのですか


その思想は
僕の空しさを救うよ


もっと話して


死刑執行が
猶予になったみたいに

空虚さが豊かさに
変っていく


パパの言う通りなら
カリンは神に取り巻かれているんだ


そうだ


彼女救われる?


そう思う


パパ
ひと走りしてくる


僕は昼食にする あとで


パパの言うとおりだ







★☆★★
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『鏡の中にある如く』 1961年 スウェーデン
原題:SASOMI I EM SPEGEL
監督:イングマール・ベルイマン