
ストックホルムで孤独に生きる79歳の老教授が、名誉博士の称号を授与されることになった。式典の日の明け方、自分が葬式馬車の柩のなかに横たわっている夢を見る。車で式典に向かう途中、教授は昔住んでいた屋敷に立ち寄る。そこで野いちごを見つけた彼は、若き日の悲恋を回想する。そして車は式典会場へと向う。
老人の1日を通して死の予感や不安、人生のむなしさなどを、さまざまな夢や幻想を織り交ぜながら、閑静に美しく描きだした。やがてそれらの暗闇から光明を見いだすという、巨匠イングマル・ベルイマン監督のポリシーが全面に展開される、映画史上に残る名作である。
やっと、この作品を観ることができた。
この作品は、ベルイマンを僕に教えてくれた先生が
特に勧めてくれた作品だった。
主人公のイーサクが名誉博士の賞の授賞式に行く道中、
自分の過去の様々なことを振り返る。
名誉を手に入れたってクソだ、みたいなことを
イーサクは言っていた。
イーサクが学問に没頭した理由、
人と接するのを断っていた理由などを
過去を顧みることで、生々しく思い出していく。
エゴイズム、という言葉がでてきて、
夏目漱石の『こころ』を思い出した。
人間は誰しも、自分が生きていくのに必死だけれど
その中で、誰かに支えられたりしている。
孤独と思っていても、自分のことを想ってくれている人がいる。
妻を早くに亡くし、他人と関わりを断っていたイーサクも
人との関わりの中で、安らな気持ちになって眠りにつく。
人に傷つけられたりもするけど、
それを救ってくれるのもまた人であり、
そういう今現実に直面してることにまっすぐに
向き合え、と、ベルイマンは言っているのかな。
ああ、もうすでに、もっかい観たい。
★★★★★
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『野いちご』 1957年 スウェーデン
原題:SMULTRONSTALLET
監督:イングマール・ベルイマン
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