

皆様、こんにちは。
今月のラボ便りは、
「卵子の透明帯」についてお話し致します。
「透明体」← 写真で赤の矢印

透明帯とは、
卵子の周りにある、厚みがおよそ15~25μm程の薄い膜(写真の矢印)のことを言います。
受精卵(胚)は、
受精してから5~6日目にこの透明帯を破り、子宮内膜に着床し、妊娠に至ります。
透明帯には、主に二つの役割があります。
一つ目は、多精子受精を防ぐ役割です。
多精子受精とは、1個の卵子に2個以上の精子が入り、受精してしまうことです。
このような状態は異常受精であり、胚の成長は途中で止まってしまいます。
これを防ぐためのシステムが、卵子には元々備わっています。
精子が卵子の中に侵入すると、
卵子から表層粒という物質が分泌され、
透明帯は硬くなり他の精子が侵入しようとするのを防御します。
二つ目は、胚を保護する役割です。
胚は分裂を繰り返して2細胞、4細胞、、、と細胞数を徐々に増やしていきますが、
分裂を開始した直後の胚の細胞同士は結合が弱く、
透明帯のような覆う膜がなければ細胞同士がバラバラになってしまいます。
また、
胚は母体からすると半分は自分とは異なる遺伝子情報をもつ異物であるとも言えます。
ですので、
母体に存在する免疫細胞により攻撃を受け、着床にまで至れない恐れもあります。
そうした問題を防ぐために、透明帯は細胞を保護しています。
しかし、
凍結した胚は、融解後に透明帯が硬くなってしまうとも言われています。
すると、
細胞は透明帯を破りにくくなり、着床できる状態へ進み辛くなってしまいます。
ですので、当院では、
融解後の胚の透明帯に切れ込みを入れるアシステットハッチングという
胚の成長を手助けする処置を行ってから移植しています。
それが、
妊娠率をアップするひとつの手技ともなります。



