オイラのブログですと
とても読みづらいのですが
載せますので、是非読んで
みて下さいね。
被 告 国
原 告 脇本 征男 ほか79名
平成19年(行ウ)第413号 損害賠償等請求事件
準備書面 (2)
平成19年12月17日
東京地方裁判所民事第2部 御 中
原告訴訟代理人弁護士 工 藤 勇 治
同 川 上 詩 朗
原告訴訟復代理人弁護士 岩 﨑 泰 一
第1 はじめに
1 本書面は、準備書面(1)のうち、具体的事件争訟性及び確認の利益について補充するものである。
2 本書面では、第1に、歯科技工士は、歯科医療チームの一員として、歯科医師らと相互に連携を取り合いながら、歯科技工の専門家としての役割と責任を果たすことが期待されているが、海外委託問題はこのチーム医療の理念に真っ向から反するものであること、第2に、歯科技工士は歯科医療チームの一員としてふさわしい地位が保障されて然るべきであるが、実態は低価格・長時間労働等の厳しい環境に置かれていること、第3に、海外委託問題は、歯科技工士の地位を具体的かつ現実的に脅かしていることを論じ、原告らに具体的事件争訟性及び確認の利益が存在することを明らかにするものである。
第2 歯科医療の中で歯科技工士の果たすべき役割
1 歯の人の健康に与える影響に関する特徴
(1) 歯は、人が健康な生活を送る上で極めて重要な役割をはたしている。
食物を噛むことは、消化酵素の働きを活発化し、食物の十分な消化、吸収及び健康の増進に寄与し、脳への血液の流れを良くするなど、人間の体全体に影響を与える。咬合と顎骨、筋、関節、筋神経、脳との生理的なつながりなども解明されている。歯は話す際の発音にも影響する。
このように、人にとって、歯は、人の体全体の健康や、社会生活などにも影響を与えている。
(2) 歯は、一度損なわれると人体の他の部分と異なり再生力がない。したがって、失われた歯を回復するには人工的な方法、すなわち歯科技工しかないという特徴がある。
2 歯科医療チーム全体で歯科医療行為を担うことの重要性
(1) 歯科技工は、本来一連の歯科医療行為の中に含まれているものとして、歯科医師自らが行っていた。しかし、歯科医療の需要の高まりにより、歯科医療を効率よく実施し、かつ、高い診療効果を上げるために、歯科技工を歯科医療行為から分離し、歯科技工士に担わせることになった。したがって、歯科技工士は、歯科医療行為の一部を担っているのである。
(2) 歯科医療行為から歯科技工が分離した理由について、林都志夫氏(東京医科歯科大学教授)は、1976年に開催された第1回国際歯科技工学会の「特別講演」の中で、次のように述べている。
同氏は、まず、歯科技工法制定に関し「本来歯科技工は一連の歯科医療行為の中に含まれているものであるが、適正な材料で正しい技術によって技工物が作製されるならば、これを切り離して専門技術者の手にゆだねても生体に直接の危険はない。」との解説を紹介したうえで、同解説が歯科医療「行為」と、あえて「行為」と述べている点に着目して、次のように説明している。
「歯科医療というと、その内容は概念的、包括的というか、いわば人の生命を尊重してこれを守るという一種の使命、あるいは漠然としたサービスを意味しているが、そのようなフィロソフィーを実際に医療に生かすということになると、個々の医療行為に別れて診査、診断、それから投薬、注射、手術、これを歯科でいうと、抜髄とか形成とか印象とかあるいは咬合採得、また技工などというものになる。これを歯科医療チーム全体で、フィロソフィーが生きるように遺漏なく賄わねばならない。このように個々の行為に分けたから歯科技工士に分ける部分ができたのであり、その部分だけの責任を歯科技工士に期待している。…したがって歯科技工を行うためには、歯科医療行為全般における技工部分の位置づけを認識して、歯科医療全般が効果的に、かつ、支障なく行われることを保証するようでなければならない。技工士は手が器用だとか、細工がうまいとかいうだけではなく、ほんとうに歯科技工の責任を果たすために歯科医療全般にわたる基礎的な知識がなくてはならない。そういうことを期待し歯科技工法ができ、また歯科技工法によって保護されている。逆にその責任が歯科技工法によってとわれるということになる。」(林都志夫「歯科医額の進歩と歯科技工士の果たす役割」第1回国際歯科技工学会講演・記録集18頁乃至19頁。甲9号証)。
すなわち、本来歯科技工は一連の歯科医療行為の中に含まれるものとしてとらえた上で、その歯科医療行為に関与する歯科医師、歯科衛生士及び歯科技工士などは、「歯科医療チーム」として「人の生命を尊重してこれを守る」という「フィロソフィー」が生きるように、「歯科医療行為全般における技工部分の位置づけを認識し、歯科医療全般が効果的に、かつ、支障なく」行われなければならないこと、そのためには、歯科技工士自らが「歯科医療全般にわたる基礎的な知識」を備えなければならないということを指摘している。
(3) 歯科技工士の責任
林氏は、このように、歯科技工士が歯科医療行為の一端を担っていることを前提に、歯科技工(士)法が期待している歯科技工士の責任について、つぎのように述べている。
「 この制度(歯科技工士制度)のもとに、歯科技工の責任はどうか、次に挙げる三つのことが考えられる。
①適正な材料を選んで正しい材料を使う。
②正しい技術を適用して技工物を作る。
③技工上の疑問がでたら、時を移さず指示をした歯科医に確かめる。
専門家としての技術をもち、抱負をもっているのであるから、その技術は尊重される。歯科医よりの指示書を見た時、その指示書の記載、つまり技工そのものの指示に何か疑問が出来た時は、時を移さず歯科医に連絡して、適切な歯科技工が出来るよう、正しい歯科技工物が患者の口に装着されるようにする責任がある。」(前掲書19頁。甲9号証)。
歯科技工士は、歯科医療行為の一端を担う者として、歯科医師と相互に連携しながら、「適正な材料」を使い、「正しい技術」で「適切な歯科技工」を行う責任を負わされているのである。
(4) 歯科技工士養成教育の充実-4年生大学での専門課程新設
歯科技工士が歯科技工士としての前記の責任を果たすことができるためには、それにふさわしい能力を養成することが期待されている。
これまでは、歯科技工士の養成機関として専門学校や歯学部附属の歯科技工士学校などがあったが、平成17年4月から、広島大学歯学部が、歯科技工士を養成する専門課程として「口腔保健学科口腔保健講学専攻」を新設し、日本で初めて4年生大学における歯科技工教育を始動することになった。