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スリットが導く無限の空間、ルーチョ・フォンタナ

2014-02-06 17:10:28 | アート


フォンタナは、20世紀のイタリアおよびアルゼンチンの芸術家。
「空間主義運動」の創始者ともいわれている。
絵画とも彫刻とも判別のつかない彼の作品は、キャンバスを切り裂いてできたスリットが唯一の作品の手がかりだ。
スリットはキャンバスのどこといわず置かれ、こちらとどこかを結んでいる。
リズムがある場合静止している場合、スリットの切り口が奥へ向かっているものこちらに突き出ているもの、これらが生み出す空間は無限であり時空をも超越しているかと思われる。

フォンタナの芸術を小さな図版で観た子供の頃、あまりの手がかりのなさに哀しくなった。
でも、冷たく突き放されたという感覚はなく、芸術というものへの大きな疑問と底知れなさを感じたのであった。

普通理解するには手がかりが必要だ。
感じ取るにはセンサーが必要だ。
人は何に寄らず、自分だけで物事を判断するのをためらう傾向にある。
だから、ある権威のお墨付きを拠りどころにしたくなり、または背後にあるであろう物語が欲しくなる。
物語によって人の心を動かし、権威によって補足してこそ、やっと芸術は認められるのか。
侘しい気もするが、鑑賞者に多くを求めるのも気が引ける。
また、芸術家というものは厳しいもので、皆が霊感に導かれて優れた技術で具現化できるとは限らない。
どちらかしか持ち得ない場合も多いのだ。
崇高な幻想を背負っている芸術家には、両方を求められるのが民意であるからたいへんなのだ。
今ある騒動については、こんな世の中の背景が彼らをそうさせたと思えなくもないのである。







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