rock_et_nothing

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夏の夜の寝苦しさは、フュースリ”夢魔”

2011-08-25 23:04:54 | アート
 夢魔

幼い頃に、小さな図版で見たフュースリの”夢魔”は、夏の夜の寝苦しさを連想させた。
体温で暑くなった布団から、畳に半身を落として、それが頭の場合には、この絵の女性のよう反り返って、なんとも辛いものだ。
そのイメージか重なるからなのだろう、夏の夜の寝苦しさと”夢魔”はセットになって、感覚に結びついてしまった。
おまけに、何の弾みでか、片手が胸の辺りに乗っているときには、さらにリアルな感じになる。

フュースリは、200点以上も油絵を描いたらしいのだが、知っている作品は、この”夢魔”2点のみ。
スケッチやデッサンは800点にも上り、油彩画よりも優れているらしいのだが、残念にも見る機会をまだ得ていない。

フュースリも、ウィリアム・ブレイクやアーノルド・ベックリンに通じる、幻想、しかも暗い神秘性に満ちている。
目に見えないものに重きを置いているとでも言おうか。
しかも、ルドンやモローより、もう少し暗いところを好んでいる。

最近は、”夢魔”の状態にならないけれど、夏の夜には、いつそうなるか分からない。
いや、先日、実に嫌な夢を見てうなされたことがあった。
体の状態ではなく、心に刻み込まれた嫌な記憶が悪さをしたのだ。
子供の頃の、無邪気な”夢魔”には、もう出会えないのかもしれないと、少し寂しい気持ちになる。
”夢魔”ではなくて、”悪夢”となって。

 夢魔