rock_et_nothing

アートやねこ、本に映画に星と花たち、気の赴くままに日々書き連ねていきます。

入江長八

2010-11-01 23:03:18 | アート
一昨日の夜、NHK「ミューズの微笑み」を何の気なしに見た。
なまこ壁が画面に映し出され、左官職人が漆喰を練り、補修作業をしていた。
麻の繊維の混じった、ねっとりとした漆喰は、盛り付けるのに手強そうな相手に見えた。
それから、レリーフのような美人画が画面に現れた。
『鏝絵』と呼ばれる、漆喰を盛り上げて描かれたものだという。
また、断崖に打ち寄せる波向こうに松原と、その遠景に富士山があり、絵を囲む青竹の額縁すべてが、やはり漆喰で描かれ、彩色された作品も紹介された。
作者は、入江長八。
用途に応じた多種多様な絵筆があるように、鏝の形状もさまざまあるのだろうが、あの的確で精緻な造形を成すには、神業と思わずにはいられないくらい完成された技があった。

たしか、国会議事堂のエントランスホール天井に、漆喰のレリーフでデコレーションが施されていたのを、やはりテレビで見た覚えがある。
前もって型取りをした装飾パーツを固定して作ったものか?と思ったが、鏝師の伝統があるからには、漆喰と鏝で作り上げたものかもしれない。

いまは、職人が技を磨く環境にあるのか?極めた技を遺憾なく発揮する場、それを保存してくれるところを得られるのか?とても心配で、不安だ。
天災や、場合によっては戦争で、すばらしいものが失われることもある。
街並みが、10年となくめまぐるしく変わるこのごろ。
消費社会の尖兵、ビルト・アンド・クラッシュ。
こんなことをやっていたら、エコなんかではないし、職人たちが精魂込めて作ったものたちが、簡単に壊されていたら、職人が絶えてしまうのでは・・・と、考えてしまう。
杞憂だろうか?