産経さんはインフルエンザだったので今回はお休み。
道新さん。
今までの選挙も今回のと同様に公正で、時代を動かしてきてたはずです。
幕末の函館・五稜郭に、旧幕府軍による「箱館政府」ができた。蝦夷(えぞ)共和国とも呼ばれた政権だ。榎本武揚(たけあき)が総裁に選ばれる。幹部が「入れ札」をした結果だ。政治の指導者を決めた、最初の選挙との評価がある
▼現代、アフガニスタンは大統領選挙の結果発表を待っている段階だ。投票資材をロバの背中に積んで、深い山奥の投票所に運ぶ。また持ち帰って開票する。テロもある。時間はかかるが、公正に指導者を選ぶことは、社会の礎を刻むことだ
▼日本では、選挙はすっかり当たり前の風景である。それでも、さまざまに歴史をつくった。結果はどうあれ、首相が代わっても一向に審判を受けない異常が、今回の総選挙でようやく解消されるわけだ。それだけでも意義深い
▼いま、有権者の目の前には、一種の「未来図」が置かれている。民主党が大幅に優勢を保っているという、いくつもの世論調査の結果だ。もちろん、それは予測にすぎない
▼この図を前にして、うなずく方も、ためらう方もおられるに違いない。それも含め、よく考え、迷い、選ぶのが有権者の仕事だ。民主党に風を吹かせるか、自民党に巻き返しを期待するか、二大政党以外に目を向けるか。棄権ばかりはお勧めしない
▼選挙は時代を動かし得る。時代が動けば、有権者の責任は重くなる。マニフェスト選挙の後には、政治を監視する役割もより強まるのだろう。
朝日さん。
さて、どんな結果なら『誇れる』のか?
独裁国家でもないのに、ほぼ一貫して一党が政権の座にある日本は特別だ。それでうまくいった面もあれば、行き詰まった点もある。一切合切に審判が下る。一票にかける8月の言葉から
▼7月の失業率は過去最悪に。さいたま市で職業訓練を受ける石川均さん(39)は今春、自動車業界で「派遣切り」に遭った。訓練が終わる年末の状況を案じつつ、期日前投票に期待を込めた。「停滞していた空気が動き出すかもしれない」
▼住民の過半が高齢者の都営団地に暮らす宮嵜(みやざき)安代さん(68)。「戦後ずっとたまってきた澱(おり)のようなものをなくしてみたい。ご破算で願いましては、もいいのかな」
▼今回から小選挙区にも広がった在外投票。8カ国の仲間と裁判で国を動かした在ロサンゼルスの高瀬隼彦さん(79)は「天下分け目の選挙に投票できる」。上海の能多まり子さん(55)は「政権交代がかかった選挙で期待がある。働きながら子育てできる社会に」と一票
▼「国民は真に何を望んでいるのか。それは、働く意思を持つ者と家族が一定の水準で平穏に暮らせることに他ならない」。奈良県五條市の主婦三木栄子さん(61)は声欄で訴えた。「大金は得られずとも仕事に誇りを持ち、やり抜くことで安定した生活が営める国であってほしい」
▼「最大の夏政(まつ)りで日本という神輿(みこし)を担ごう」。大阪の繁華街で若者に投票を呼びかけた関西学院大生の市橋拓さん(21)。「年金も介護も実はヤバいんじゃないか。僕らが選挙に行って責任を持とうと思った」
▼きょうを、顧みて誇れる日にしたい。
読売さん。
今までは裏切られてきた、ってことでしょうか。
立原道造が〈Hに、手紙を書く〉と日記に綴(つづ)ったのは1930年(昭和5年)の6月、詩人は15歳である。〈Hから返事は来ないだらう。また、悲しみと、懐疑と、焦燥の種を播(ま)いた〉
◆思慕の情を寄せる少女か、ささいなことで仲たがいをした級友か、Hがどういう人かは分からない。いずれにせよ甘酸っぱく、ほろ苦く、青春期ならではの陰翳(いんえい)をもつ手紙であったろう
◆青春が遠い過去になった身にも何年かに一度、似た心境で鉛筆を握る時がめぐってくる。投票用紙は「あなたを信じています」と告げる手紙に違いない
◆「期待しては裏切られてきたな」という悲しみと、「公約は大丈夫?」という懐疑と、「暮らしは待ったなしだよ」という焦燥と、投函(とうかん)する人の気持ちはさまざまだろう。それでも今度はきっと心が通じると信じて、人は投票所に足を運ぶ。手紙を受け取る側のH氏やA氏には、忘れずにいてほしいものである
◆幕末、坂本龍馬が姉にあてた手紙に、有権者の心を代弁したような一節がある。〈日本を今一度せんたく(洗濯)いたし…〉。日本という国の丸洗いを、さあ誰の手にゆだねよう。
毎日さん。
予測、世論調査でどちらが優位かわかっているけれど…というところでしょうか。
「庄屋不帰依」とは何か。今の言葉でいえば庄屋(村の長)のリコール運動という。江戸時代後期に河内の古市村で年貢割り当てや村費の使い方をめぐる農民の不満が高まり、騒動に発展する。そんな騒ぎのしばらく後、文化年間には庄屋の選挙が行われた
▲その選挙の投票用紙が今に残っている。大小さまざまな紙を使った票には投じた者の署名捺印(なついん)のある記名投票で、「庄屋入札(いれふだ)」と書いたものもある。選挙はそう呼ばれていたらしい。票の多くは紙に包まれ、「〆」と捺印で封じられていた(津田秀夫著「近世民衆運動の研究」)
▲入札では190人が在地投票し、19人の他行者のうち11人が追って不在者投票をした。投票数は同地の家の数と符合し、貧富にかかわりなく各戸に投票権があったのがうかがえる。また13票は女性名で、婦人も家を代表して投票できたのだ
▲結果は源左衛門という人物が各集落からまんべんなく計160票以上を集めた。次いで政次郎という人の票が30票以上あったが、年少のためか年寄りを後見につけるという条件つきの票である。その他には年番制を提案している票もあった
▲見れば事前に結果は予想できた庄屋選びだ。しかしあえて入札=選挙を行うことで村内の対立を収拾し、選ばれた者にその役割に応じた威信を与える。そんな知恵を私たちの祖先は身につけていたようである。むしろ貧者や女性の“選挙権”は明治の欧化で奪われるはめになった
▲誰に命じられたのでもない。選挙の意味も、原則も、不在者投票のアイデアも、自前で考え出したご先祖を持つ日本人だ。どうして2009年の国の命運を自ら選ばずにいられようか。
日経さん。
今でも『経済政策をうまく運営してくれる政権』でいいんですけどね。
昔の本紙縮刷版をめくっていたら、こんな見出しが躍っていた。「1人当たり国民所得、20年後は世界一」。1969年に大蔵省が試算した推計だ。当時の日本は20位。推計通りなら欧米諸国を抜き、90年前後に1位になるはずだった。
▼無理もない。ちょうど40年前の日本は「いざなぎ景気」と呼ばれた高度経済成長の真っただ中。この年、経済企画庁は前年68年の国民総生産が西独を抜き、自由世界で第2位の経済大国になったと公表した。経済白書も「豊かさへの挑戦」が副題に。21世紀は日本の世紀と、誰もが右肩上がりの成長を信じていた。
▼「政治は三流、経済一流」でいい。知日派の政治学者、ジェラルド・カーティスさんは当時の世相をこう振り返る。「高度成長を続ける経済政策をうまく運営してくれる政権であれば十分だという意識が日本国民に支配的」だったと、著書「政治と秋刀魚」にある。だが、40年間で日本の風景はがらりと変わった。
▼1人当たり国民所得は相変わらず、欧米などの後じんを拝したまま。40年間あぐらをかいてきた世界第2位の経済大国の座も、間もなく中国に譲る。「経済一流」から転落する日本は、新たな国のかたちをどう築いていくか。政治三流では済まされまい。きょうは衆院選の投票日。国の将来を託す重要な日である。
正直、結果はわかっていると思います。
夜が楽しみです。
選挙速報、大好きなんです…。
道新さん。
今までの選挙も今回のと同様に公正で、時代を動かしてきてたはずです。
幕末の函館・五稜郭に、旧幕府軍による「箱館政府」ができた。蝦夷(えぞ)共和国とも呼ばれた政権だ。榎本武揚(たけあき)が総裁に選ばれる。幹部が「入れ札」をした結果だ。政治の指導者を決めた、最初の選挙との評価がある
▼現代、アフガニスタンは大統領選挙の結果発表を待っている段階だ。投票資材をロバの背中に積んで、深い山奥の投票所に運ぶ。また持ち帰って開票する。テロもある。時間はかかるが、公正に指導者を選ぶことは、社会の礎を刻むことだ
▼日本では、選挙はすっかり当たり前の風景である。それでも、さまざまに歴史をつくった。結果はどうあれ、首相が代わっても一向に審判を受けない異常が、今回の総選挙でようやく解消されるわけだ。それだけでも意義深い
▼いま、有権者の目の前には、一種の「未来図」が置かれている。民主党が大幅に優勢を保っているという、いくつもの世論調査の結果だ。もちろん、それは予測にすぎない
▼この図を前にして、うなずく方も、ためらう方もおられるに違いない。それも含め、よく考え、迷い、選ぶのが有権者の仕事だ。民主党に風を吹かせるか、自民党に巻き返しを期待するか、二大政党以外に目を向けるか。棄権ばかりはお勧めしない
▼選挙は時代を動かし得る。時代が動けば、有権者の責任は重くなる。マニフェスト選挙の後には、政治を監視する役割もより強まるのだろう。
朝日さん。
さて、どんな結果なら『誇れる』のか?
独裁国家でもないのに、ほぼ一貫して一党が政権の座にある日本は特別だ。それでうまくいった面もあれば、行き詰まった点もある。一切合切に審判が下る。一票にかける8月の言葉から
▼7月の失業率は過去最悪に。さいたま市で職業訓練を受ける石川均さん(39)は今春、自動車業界で「派遣切り」に遭った。訓練が終わる年末の状況を案じつつ、期日前投票に期待を込めた。「停滞していた空気が動き出すかもしれない」
▼住民の過半が高齢者の都営団地に暮らす宮嵜(みやざき)安代さん(68)。「戦後ずっとたまってきた澱(おり)のようなものをなくしてみたい。ご破算で願いましては、もいいのかな」
▼今回から小選挙区にも広がった在外投票。8カ国の仲間と裁判で国を動かした在ロサンゼルスの高瀬隼彦さん(79)は「天下分け目の選挙に投票できる」。上海の能多まり子さん(55)は「政権交代がかかった選挙で期待がある。働きながら子育てできる社会に」と一票
▼「国民は真に何を望んでいるのか。それは、働く意思を持つ者と家族が一定の水準で平穏に暮らせることに他ならない」。奈良県五條市の主婦三木栄子さん(61)は声欄で訴えた。「大金は得られずとも仕事に誇りを持ち、やり抜くことで安定した生活が営める国であってほしい」
▼「最大の夏政(まつ)りで日本という神輿(みこし)を担ごう」。大阪の繁華街で若者に投票を呼びかけた関西学院大生の市橋拓さん(21)。「年金も介護も実はヤバいんじゃないか。僕らが選挙に行って責任を持とうと思った」
▼きょうを、顧みて誇れる日にしたい。
読売さん。
今までは裏切られてきた、ってことでしょうか。
立原道造が〈Hに、手紙を書く〉と日記に綴(つづ)ったのは1930年(昭和5年)の6月、詩人は15歳である。〈Hから返事は来ないだらう。また、悲しみと、懐疑と、焦燥の種を播(ま)いた〉
◆思慕の情を寄せる少女か、ささいなことで仲たがいをした級友か、Hがどういう人かは分からない。いずれにせよ甘酸っぱく、ほろ苦く、青春期ならではの陰翳(いんえい)をもつ手紙であったろう
◆青春が遠い過去になった身にも何年かに一度、似た心境で鉛筆を握る時がめぐってくる。投票用紙は「あなたを信じています」と告げる手紙に違いない
◆「期待しては裏切られてきたな」という悲しみと、「公約は大丈夫?」という懐疑と、「暮らしは待ったなしだよ」という焦燥と、投函(とうかん)する人の気持ちはさまざまだろう。それでも今度はきっと心が通じると信じて、人は投票所に足を運ぶ。手紙を受け取る側のH氏やA氏には、忘れずにいてほしいものである
◆幕末、坂本龍馬が姉にあてた手紙に、有権者の心を代弁したような一節がある。〈日本を今一度せんたく(洗濯)いたし…〉。日本という国の丸洗いを、さあ誰の手にゆだねよう。
毎日さん。
予測、世論調査でどちらが優位かわかっているけれど…というところでしょうか。
「庄屋不帰依」とは何か。今の言葉でいえば庄屋(村の長)のリコール運動という。江戸時代後期に河内の古市村で年貢割り当てや村費の使い方をめぐる農民の不満が高まり、騒動に発展する。そんな騒ぎのしばらく後、文化年間には庄屋の選挙が行われた
▲その選挙の投票用紙が今に残っている。大小さまざまな紙を使った票には投じた者の署名捺印(なついん)のある記名投票で、「庄屋入札(いれふだ)」と書いたものもある。選挙はそう呼ばれていたらしい。票の多くは紙に包まれ、「〆」と捺印で封じられていた(津田秀夫著「近世民衆運動の研究」)
▲入札では190人が在地投票し、19人の他行者のうち11人が追って不在者投票をした。投票数は同地の家の数と符合し、貧富にかかわりなく各戸に投票権があったのがうかがえる。また13票は女性名で、婦人も家を代表して投票できたのだ
▲結果は源左衛門という人物が各集落からまんべんなく計160票以上を集めた。次いで政次郎という人の票が30票以上あったが、年少のためか年寄りを後見につけるという条件つきの票である。その他には年番制を提案している票もあった
▲見れば事前に結果は予想できた庄屋選びだ。しかしあえて入札=選挙を行うことで村内の対立を収拾し、選ばれた者にその役割に応じた威信を与える。そんな知恵を私たちの祖先は身につけていたようである。むしろ貧者や女性の“選挙権”は明治の欧化で奪われるはめになった
▲誰に命じられたのでもない。選挙の意味も、原則も、不在者投票のアイデアも、自前で考え出したご先祖を持つ日本人だ。どうして2009年の国の命運を自ら選ばずにいられようか。
日経さん。
今でも『経済政策をうまく運営してくれる政権』でいいんですけどね。
昔の本紙縮刷版をめくっていたら、こんな見出しが躍っていた。「1人当たり国民所得、20年後は世界一」。1969年に大蔵省が試算した推計だ。当時の日本は20位。推計通りなら欧米諸国を抜き、90年前後に1位になるはずだった。
▼無理もない。ちょうど40年前の日本は「いざなぎ景気」と呼ばれた高度経済成長の真っただ中。この年、経済企画庁は前年68年の国民総生産が西独を抜き、自由世界で第2位の経済大国になったと公表した。経済白書も「豊かさへの挑戦」が副題に。21世紀は日本の世紀と、誰もが右肩上がりの成長を信じていた。
▼「政治は三流、経済一流」でいい。知日派の政治学者、ジェラルド・カーティスさんは当時の世相をこう振り返る。「高度成長を続ける経済政策をうまく運営してくれる政権であれば十分だという意識が日本国民に支配的」だったと、著書「政治と秋刀魚」にある。だが、40年間で日本の風景はがらりと変わった。
▼1人当たり国民所得は相変わらず、欧米などの後じんを拝したまま。40年間あぐらをかいてきた世界第2位の経済大国の座も、間もなく中国に譲る。「経済一流」から転落する日本は、新たな国のかたちをどう築いていくか。政治三流では済まされまい。きょうは衆院選の投票日。国の将来を託す重要な日である。
正直、結果はわかっていると思います。
夜が楽しみです。
選挙速報、大好きなんです…。