Risa’s 音楽雑記

ピアニスト 山形リサのブログです。
音楽の話を中心に、日常の出来事などを気ままに綴っています。

Ensemble Bois Ⅱ

2006-12-30 12:42:25 | Weblog
私はあまり現代音楽に詳しくありません。

今回のコンサートは作曲家 川島素晴氏とEnsemble Boisの代表 星谷丈生氏とのトークでコンサートが進行していきました。
それによりますと、作曲家 川島氏は「演じる音楽」というものを提唱していらっしゃるそうです。

※「演じる音楽」とは、そもそも音楽とは「音」の連接である以前に、「演奏行為」の連接である、という観点から作曲する手法で、「演奏行為の共有体験化」を実現するためのメソッドである。また、この手法の前提には、真に知的な文化体験の本質としての「笑いの構造」がある。他に、「視覚と聴覚の関係」、「transcription(編曲)の問題」、「発話と演奏行為の関係」などの、現代音楽の諸問題を独自で探求している。     ~コンサートプログラムより引用~


これがなかなか面白い経験でしたので、曲名とあわせていろいろご紹介したいと思います。
難しいことはわかりませんので、あくまでも私的感想です。


◆Adieu〔Vla.pf〕(1992/世界初演)

歌花さんが登場するので、楽しみです。
・・・と。
暗い舞台上にピアニストが待機、ライトが点くと演奏が始まります。しばらくすると舞台袖からヴィオラが登場。
きました、きました!
素敵な音色に感動です。
明るくない舞台の上で、バレリーナのようにやわらかく動く白い腕と、せつない音楽がとても感傷的。
この曲は「愛別離苦」という仏教の八苦のひとつが題材になっているそうです。ピアノが感傷的な楽想を展開していると、ヴィオラが登場。しかしそれは全く相容れない存在。二人はやがて互いに歩み寄り、理解を深め、愛し合う。それもつかの間、二人はまた離れ離れになってしまう。
プログラムにある解説どおり、最後は歩きながら反対側の舞台袖に消えていきました。
こんな演出も素敵ですね。
作品のイメージがよりわかりやすいものになります。
音楽的にも私の想像の範囲内でした。

◆篠田桃紅の絵と言葉による8つのエスキス『時のかたち』より(2005/東京初演)

つい先日、深夜番組「タモリ倶楽部」でやっていたポール・モーリアの音楽をカタカナで表現しよう・・・というコーナーを思い出してしまいました。
どなたか見ていた人はいるでしょうか?
個人的にかなり面白かったんですが・・・・。

◆ 3×3奏者のための協奏曲「Let's Tri___!」(Version B)(2005/日本初演)

これがずば抜けて面白い作品で、今回のプログラムの中で一番気になりました。

曲目解説によると、
ともかく「Tri」にこだわった作品。3群のトリオ(Trinal Trio)が「Tri]で始まる単語にちなむ楽想を3種ずつ3週して27個の楽想がまず一巡(1st Trial)。
これらが互いに侵食、最終的には三位一体(Trinity)となり、「トリ」は「Triangle]で。
とあります。

Triumphantly Triad(勝ち誇った三和音)、Triple Tonguing(トリプルタンギング)、Triple Stops(三重弦)などなど、Triにちなんだ演奏がずーーっと続いていくのですけれど、その中に、Triple Axel(トリプルアクセル)チェロなどの対弦楽器が演奏しながら回転するものがあったり、Triceratops(トリケラトプス)恐竜の鳴き声があったり、Tri(トリ=鳥)があったり、なかなか笑えるんです。

フレーズにあわせて、それぞれTriの説明書きを舞台上でめくってくれる係りの人がいるのですが、途中でごちゃごちゃになって行方不明になるは、紙はバラバラと落ちるは、いろいろ笑えました。
どこまでが演出なのでしょうか。
凝りに凝って馬鹿をしているような、そんな印象です。

作曲者の川島氏が指揮をしているのですが、これもなかなかすごいです。
彼は役者志望なのかな・・・と思えるほどに、芸達者に笑わせてくれます。

ここらへんから、どこかの劇団の作品を見に行っているような気分になりました。