ハリス氏とトランプ氏の支持は拮抗が続く=ロイター
【ワシントン=坂口幸裕】
米大統領選を戦う民主党のハリス副大統領と共和党のトランプ前大統領が10日に対決したテレビ討論会後の世論調査で、支持率がなお拮抗している。討論会の評価はハリス氏が有利だったものの、投票行動への影響は限定的だった。残り50日となった戦いは接戦のまま終盤に入る。
討論会後に調査を実施した5社の支持率はいずれも3〜5ポイント以内の差にとどまる。
討論会を主催した米ABCテレビは11〜13日の調査を踏まえ「多くの米国人は討論会の勝者にハリス氏を選んだが、選挙の投票先という点でほとんど変化は見られなかった」と総括した。
全米の登録有権者(2772人)を対象にしたABCの調査ではハリス氏の支持は8月下旬の前回調査より1ポイント増の51%、トランプ氏も同1ポイント増の47%だった。
討論会でハリス氏が勝ったとの回答は58%、トランプ氏は36%。6月下旬の討論会の時は66%がトランプ氏が優勢だったと答え、28%にとどまった民主のバイデン氏は選挙戦から撤退に追い込まれた。
世界的人気歌手のテイラー・スウィフトさんは今月10日の討論会当日にハリス氏への支持を表明した。
ABCによると、スウィフトさんに追随してハリス氏に投票するとの回答は6%で、「ハリス氏支持を控える」が13%、「影響ない」が81%だった。同社は「ほぼ影響はない」と分析する。
トランプ氏は15日、自身のSNSでスウィフトさんについて「嫌いだ!」と投稿した。インスタグラムで2億8千万人のフォロワーを抱え、両陣営が動向を注視してきた。
トランプ氏の陣営は15日に起きた同氏の暗殺未遂事件を選挙戦の追い風にしようともくろむ。16日の声明で「民主党の攻撃的な言葉遣いが事件を誘発した」と非難した。7月に続く2度目の暗殺事件を受け、トランプ氏を「脅威」などと断定してきた民主に責任があると印象づける狙いがある。
18〜29歳の有権者はハリス氏が55%、トランプ氏が42%だったが、男女で割れた。男性はハリス氏が47%、トランプ氏が52%、女性はそれぞれ63%、34%で逆転する。
他の調査も傾向は似る。ロイター通信の調査(11〜12日)では、ハリス氏の支持率は前回8月下旬より2ポイント増の47%、トランプ氏は1ポイント増の42%だった。討論会の勝者を聞いたところ、53%がハリス氏、24%がトランプ氏だった。
共和支持層のうち5人に1人がトランプ氏は精彩を欠いたように見えたと答えた。「高い道徳的な誠実さを持っている印象を与えた」候補を尋ねると、52%がハリス氏、29%がトランプ氏だった。
どちらに威厳があるように見えたかとの質問は、ハリス氏が56%、トランプ氏が24%だった。
ヤフーニュースとユーガブの調査(11〜13日)ではハリス氏が8月下旬の調査より3ポイント増の50%、トランプ氏が前回と同じ46%だった。無党派層の支持はハリス氏が10ポイント多かった。
米調査会社モーニング・コンサルトの調査(11日)も横ばいだった。ハリス氏は前回調査より1ポイント増の50%、トランプ氏は1ポイント減の45%だった。無党派層の支持はハリス氏が46%、トランプ氏が40%だった。
100分ほどの討論会は激戦7州のひとつである東部ペンシルベニア州のフィラデルフィアで米ABCテレビが主催した。調査会社ニールセンによると討論会の視聴者は6710万人だった。
民主党のバイデン大統領とトランプ氏が戦った6月27日の討論会の5130万人を上回った。
米リアル・クリア・ポリティクスが集計した16日時点の世論調査の集計では、ハリス氏が49%、トランプ氏が47.3%で競る。
両候補は勝敗を左右する激戦7州での活動に力を注ぐ。7州に絞った調査はハリス氏が48%、トランプ氏が47.8%に差がさらに縮まる。
同じく接戦となった過去2回の大統領選の同時期でみると、16年は勝利したトランプ氏が敗れた民主のヒラリー・クリントン氏に全米で1.5ポイントのリードを許していた。
20年は選挙戦を制した民主のバイデン大統領がトランプ氏を5.9ポイント上回っていた。
2024年に実施されるアメリカ大統領選挙に向け、ハリス副大統領やトランプ氏などの候補者、各政党がどのような動きをしているかについてのニュースを一覧できます。データや分析に基づいて米国の政治、経済、社会などに走る分断の実相に迫りつつ、大統領選の行方を追いかけます。
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