米ウィスコンシン州で開いた選挙集会で演説するハリス副大統領=7月23日(ロイター=共同)
【ワシントン=坂口幸裕】
米民主党のハリス副大統領は11月の大統領選をともに戦う副大統領候補の最終選考に入った。
米メディアによると、勝敗を左右する激戦州の知事や上院議員ら有力候補と4日に面談する。個人の能力、相性、政治信条を重視するとみられ、6日までに決める。
4日に首都ワシントンのハリス氏の自宅で会うのは東部ペンシルベニア州のジョシュ・シャピロ知事、中西部ミネソタ州のティム・ウォルツ知事、西部アリゾナ州選出のマーク・ケリー上院議員で、3人が有力候補になっていると伝えられる。
AP通信などによると、2〜4日にかけて計6人の候補と面会する。
南部ケンタッキー州のアンディ・ベシア知事、中西部イリノイ州のJ・B・プリツカー知事、ピート・ブティジェッジ運輸長官も対象になったもようだ。
オバマ政権時代に司法長官だったエリック・ホルダー氏がトップを務める選考チームが候補者の財政状況や家族構成など身辺調査を実施し、3日にハリス氏に各候補について説明した。
ハリス氏は5日夜か6日朝に候補者本人に副大統領候補を正式に打診する見通しだ。
米CNNテレビは民主党幹部の話として、ハリス氏は
①能力
②自身との相性
③核となる価値観――を重視していると伝えた。面談を踏まえて最終判断するとみられる。
候補に挙がるのは白人男性で、非白人や女性の支持に強みを持つハリス氏の弱みを補完する狙いがにじむ。
シャピロ氏の強みは選挙のたびに勝利政党が変わる「スイングステート(揺れる州)」とされるペンシルベニアでの人気だ。
事前予想を覆し、22年11月の州知事選で共和党候補に15ポイント差をつけて圧勝した。
ユダヤ系米国人で、パレスチナ自治区ガザでの人道危機でイスラエルに厳しい姿勢で臨むハリス氏とバランスを取れる面もある。
一方、民主リベラル派にはイスラエルに批判的な若年層が離れるとの不安もある。
ケリー氏を起用すれば、共和が大統領選の争点に位置づける国境警備対策への取り組みを誇示できる利点がある。
同氏はメキシコとの南部国境を接するアリゾナ選出。不法移民の急増による治安悪化を受け、バイデン氏に「国境の差し迫った危機」への対処を迫ってきた。
ハリス氏が寛容な移民政策をとってきた責任だと追及する共和の批判をかわせるとの読みがある。
アリゾナがスイングステートである要因だ。ただ、ケリー氏が転出すれば、劣勢が伝えられる上院選で民主が多数派を維持できないリスクが高まるとの懸念が民主内にある。
ウォルツ氏が知事を務めるミネソタは民主優位の「ブルーステート(青い州)」だが、隣接する激戦州の中西部ウィスコンシン州などでの支持拡大を見込む。
下院議員時代はミネソタ南部の農村地域が選挙区で、都市部に強い民主の弱点を補えるとの見立てだ。
候補に急浮上した背景にはトランプ氏やその支持者を「 奇妙な(weird)やつら」と呼んでSNSを通じて一気に広がったことも大きい。
民主支持層を中心に浸透した。ハリス陣営もトランプ氏や副大統領候補のJ・D・バンス氏を攻撃する際に多用し始めた。
ハリス氏は副大統領候補とともに、6日に訪れるペンシルベニアを皮切りに、4日間で激戦7州を回る。
残り3カ月となった選挙戦の勝負どころと位置づけ、選挙活動を本格化させる。
2024年に実施されるアメリカ大統領選挙に向け、現職のバイデン大統領やトランプ氏などの候補者、各政党がどのような動きをしているかについてのニュースを一覧できます。データや分析に基づいて米国の政治、経済、社会などに走る分断の実相に迫りつつ、大統領選の行方を追いかけます。
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日経記事2024.08.04より引用