13日、イスラエル軍による空爆で破壊されたパレスチナ自治区ガザの建物=ロイター
【ドバイ=福冨隼太郎】
イスラエル軍がパレスチナ自治区ガザ北部の住民に24時間以内の避難を勧告したことについて、イスラエルを支持する欧米を含む国際社会から批判が噴出している
。対象は110万人に及び、短時間の移動は事実上不可能との見方が広がる。
ガザを実効支配するイスラム組織ハマスと戦うイスラエル軍は13日、ガザ北部に住む民間人に対して南部に退避するよう求めた。
同軍は声明で「(ガザ北部の)ガザ市で大規模な作戦を継続する。民間人に被害を与えぬよう努力する」と強調した。
国連によると、現地時間12日深夜(日本時間13日朝)にイスラエル軍から、住民が24時間以内にガザ北部から退避する必要があると通告を受けたという。
ロイター通信によると、欧州連合(EU)の外相にあたるボレル外交安全保障上級代表は13日、「100万人が24時間で移動するというのはまったく非現実的だ」とした。中国の王毅(ワン・イー)共産党政治局員兼外相との会談後の記者会見で語った。
米国家安全保障会議(NSC)のカービー戦略広報調整官は「彼らは市民を危険から遠ざけようとしている。しかし、それは無理難題だ」と語った。米CNNが報じた。
トルコ外務省は勧告について「決して容認できるものではない。イスラエルが重大な過ちをただちに撤回することを期待する」とする声明を出した。パレスチナ自治政府のアッバス議長は13日、ブリンケン米国務長官に勧告を拒否する考えを伝えた。
国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)は声明で「イスラエルの要求は恐ろしいものだ」と表現したうえで「ガザは崩壊の瀬戸際にある」と訴えた。国連事務総長報道官は「このような移動は人道的に壊滅的な結果を招く」と指摘した。
赤十字国際委員会も「ただちに家を出るように求めるのは国際人道法に適合しない」と、イスラエルを批判した。
イスラエル軍はイスラエルを攻撃したハマスへの報復としてガザへの空爆を繰り返している。地上侵攻も視野に入れており、ガザの住民に向けた避難の勧告は地上戦や大規模な空爆を念頭に置いた動きだとみられる。
英BBCによると、イスラエル軍報道官は13日、住民の避難には時間がかかることを「理解している」と語った。
ハマスは勧告がイスラエルによる「心理戦だ」などと批判し、ガザの住民に自宅を離れないよう求めているという。ロイター通信などが伝えた。
一方、イスラエルのネタニヤフ首相は13日、ハマスの民間人への行為について「ホロコーストの最悪の時代を想起させる」と改めて非難した。
「ハマスが思いどおりにできるなら、ナチスとまったく同じことを私たちにするだろう」と述べた。
ハマスを「野蛮人」とも呼んだ。イスラエルを訪れたフォンデアライエン欧州委員長との共同記者会見で語った。
ハマスが7日にイスラエルを大規模攻撃してイスラエルが報復攻撃を始めて以降、双方の死者数は増加している。イスラエルメディアによると同国側の死者は1300人に達し、ロイター通信はパレスチナ側の死者が1799人になったと伝えた。
ガザには200万人以上が暮らしており、イスラエルが地上侵攻に踏み切れば民間人の犠牲者がさらに拡大しかねない
日経記事 2023.10.14より引用