セブン―イレブン・ジャパンは「うれしい値」とシールに記載しお得感を出した低価格なおにぎりを発売した
セブン―イレブン・ジャパンが主力商品のおにぎりで従来の主力品より3割安い低価格品を発売した。
コメなど原料高が続く中、おにぎりの平均価格も上昇。選別消費がコンビニエンスストアにも及び、スーパーの総菜などとの競争も激しい。低価格で消費者をつなぎ留める。
セブンはこのほど、プライベートブランド(PB)商品として低価格のおにぎり2品を売り出した。
定番商品の「手巻おにぎり」シリーズの位置付けで、従来品より51円安くした「しゃけ」(138円)と、同13円安い「ツナマヨネーズ」をそろえた。ツナマヨネーズは既存品と入れ替えた。しゃけは既存の「炭火焼熟成紅しゃけ」(189円)と併売する。
セブンは6月、沖縄県の店舗で同2品を先行して取り扱い始めた。おにぎり全体の販売数を従来比2割押し上げる効果があったため、このほど全国に広げた。
おにぎりはコンビニの総菜・弁当の主力商品だ。同カテゴリーのうち約2割(金額ベース)に上るとされ、他の商品購入を促し客数に直結する。セブンなどは安いものから高い商品まで幅広くそろえる「松竹梅」戦略をとる中、低価格品の拡充によって顧客を取りこぼさない姿勢を強める。
「セブンイレブン」のおにぎりの棚は低価格品が目立つ一方で高単価品も置き消費者の幅広い需要をとらえる
(東京都内の店舗)
セブンの場合、京都のコメの老舗「八代目儀兵衛」と組んで販売する「熟成いくら醤油漬け」(259円)が松の位置付けだ。
「辛子明太子」(189円)は竹の看板商品。今回値下げしたツナマヨネーズが梅に相当する。23年12月からは梅の商品に専用シールを貼り、来店客の目に付きやすいようにする施策も始めた。
低価格品を増やしたのは、おにぎり全体の価格が上がっており対策を打たなければ節約志向を強める顧客が離れかねないとみているためだ。
コンビニおにぎり、4年で2割高
コンビニ商品の分析を手掛けるジーアイ・マーケティング・パートナーズ(東京・新宿)が大手3社の新商品の価格動向を分析したところ、24年4〜6月のおにぎりの平均価格は20年同期間と比べて24%高い176.5円だった。20年1〜3月の集計開始以来の最高値だ。
23年の猛暑でコメ価格が上がっている。インバウンド(訪日外国人)客でおにぎりを購入する人も増えており、コンビニでのコメ需給は引き締まっている。200円台の大台に乗る可能性もある。
ローソンによると現状コメは「必要量を調達できている」という。ただ今後はコメ収量減に加えて人件費や物流費高騰も見込まれるため、のりを付けない商品の拡充など値ごろ感を維持する対策の検討に入った。
セブンイレブンの既存店売上高、前年並み
セブンは足元で業績が低調という個別事情もある。既存店売上高は3〜5月にほぼ前年同期並みにとどまった。
セブン―イレブン・ジャパンの永松文彦社長は「顧客ニーズに対し低価格の訴求が半年遅れた。今後は『梅』に当たる商品にも力を入れる」としている。
6月までの既存店売上高でローソンは28カ月、ファミリーマートは34カ月連続のプラスと堅調さを維持するが、顧客離れを防ぎたいというのは同じだ。
ローソンは弁当のような具材の豊富さを売りにする300円台のおにぎりを発売した
ローソンは大容量で満足感を出せる商品の拡充に乗り出した。このほど「具!おにぎり まるで明太のり弁」(322円)を発売した。のり弁当をイメージした商品で、ちくわの磯辺揚げやコロッケ、白身魚フライ、タルタルソースをコメではさんだものだ。
300円超と単価は高いが、通常ののり弁当と比べると割安だ。片手で食べられるためタイムパフォーマンス(時間対効果)のニーズにも対応できると踏む。
ファミマは130円台のおにぎりを発売した
ファミマは「野沢菜めかぶおむすび」(135円)を北海道と沖縄を除く全国で発売した。ファミマのおにぎりの価格帯別の構成比は低価格帯が2割、中価格が5割、高価格が3割。低価格と高価格の品を増やすことを検討する。
実質賃金は足元でマイナスが続く。JPモルガン証券の村田大郎氏は「ドラッグストアが食品を、スーパーが総菜を強化する中、消費者の選択肢が増え、コンビニが食品の売り上げを伸ばしづらくなってきた」と指摘する。
節約志向がさらに強まれば、割高のイメージがあるコンビニは客数の減少につながりかねない。選別消費への対応と価格戦略は一段と難しいかじ取りが迫られる。
(平岡大輝)
日経記事2024.08.04より引用