
私のPDA履歴書 第10回
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R430からSig3へ
モバイルギアII R430に触った私は、すっかりHandheld PCの虜になった。もちろんe550GXとUSBキーボードの組み合わせもよかったけれど、見た目が異様だしとにかく設置に手間がかかる。それに比べてR430なら、蓋を開けて電源ボタンを押せばすぐさまテキスト打ちができる。これは大きなアドバンテージだった。とくに当時駆け出しの、いや書き出しのブロガーだった私にとって他と無いパートナーとなった。しかしモバイラーの欲というのは天井知らずで、R430をしばらく使っているうちにもっと高機能のHandheld PCを欲しくなった。そうは言ってもR430より上位のHandheld PCはあまり多くない。hpのJornada720/728、NECのMobile Gear II R550/450、そしてNTTドコモのSigmarionシリーズである。その中で特に私が着目したのはSigmarionシリーズの最終モデル、Sigmarion3だった。
最後のハンドヘルドCE機
Sigmarion3は2003年5月にNTTドコモが発売したハンドヘルドタイプのWindowsCE 4.1搭載PDAである。Handheld PCではなくハンドヘルド「タイプ」という妙な言い回しをしているのは、Windows CE 4.xではマイクロソフトはHandheld PCパッケージを提供しておらず、厳密にはHandheld PCでは無いからである。しかし製造したのが名機モバイルギアシリーズを生み出したNECであり、Handheld PCとしての特徴を色濃く受け継いでいるということで、モバイルギア2の、そしてHandheld PCの最終進化形とも言えるデバイスである。
Sigmarion3の底面のラベル。
「製造者 日本電気株式会社」の文字がプリントされている
スペック
Sigmarion3のスペックは以下の通り。
CPU Intel XScale PXA255 400MHz OS WindowsCE.NET Ver.4.10 RAM 64MB(プログラム実行・データ領域共用) サイズ 189(W)×117(D)×21(H) mm 重量 485g ディスプレイ 5インチ半透過型TFT液晶 65536色、800×480(WVGA) 拡張スロット Compact Flash TypeII、SDIO Now!
Handheld PCの最終進化形ということで、そのスペックはそれ以前のHandheld PCとは一線を画するものである。漫画本と同じサイズで485gの小型軽量ボディに、800×480と高精細5.3型WVGA液晶は、当時のモバイルデバイスとしては脅威的な解像度だった。
キーボードも記号やファンクションキーなどかなり変則配列ではあるがQWERTYキーボードを搭載していて、キーピッチも14.1mmとギリギリブラインドタッチができるサイズでテキストエディタとして最小かつ最高のデバイス。さらにInternet Explorer 5.5 for CEも内蔵されているのでWeb閲覧も文書作成もこれ一台でできるスグレモノである。
また発売当時の価格が5万円程度と、上位機種が軒並み10万円以上の価格をつけていたHandheld PCとしては破格であり、値段の上でも他のHandheld PCの追随を許さなかった。これはもともとドコモがカード型PHS通信機P-inや@FreeDの販売促進の為に売り出したデバイスだったからである。それゆえDDIポケット(現ウィルコム)のAirH"などは使えないようにロックがかかっていた。今のケータイでいうところのSIMロックと同じことが処されていたのだ。しかし3phsというハックソフトによりこのロックが開放されてしまい、NTTドコモの思惑とは違う形でユーザーに使われるようになってしまった。その結果、販売開始から1年も経たないうちにほとんどの店舗から姿を消してしまった。
発売から4年が経った現在では新品を手に入れることは不可能。しかしもとの出荷数が多かったため中古市場にはかなりの量が出回っている。アキバでの現在の中古相場としては、箱付き欠品無しで2万8000円程度。W-ZERO3の発売により手放したユーザーが多いのか、中古市場での流通量も多くまだまだ手に入れやすいデバイスである。