ままちゃんのアメリカ

結婚42年目のAZ生まれと東京生まれの空の巣夫婦の思い出/アメリカ事情と家族や社会について。

ペンマンシップと芸術

2021-02-01 | アメリカ事情

 

 

 

まだ子供たちが幼かった頃、アリゾナ州に住んでいて、一週間のうち三日は子供連れで、そこの市立図書館へ足繁く通ったものだった。州境を超えてカリフォルニア州へ越してから子供も五人になっていたが、その町の図書館通いは続いていた。子供たちは絵本目当てで、朗読の時間も楽しみにしていた。
 
そんな子供達を視界に入れながら、私は、アメリカ料理の学部長というあだ名のジェイムス・ベアード氏のパン作りの本、ホワイトハウスの料理長による料理本や古い家庭雑誌をめくってレセピを書き写したり、手芸や裁縫に関しての本もよく借り出した。大抵どこの図書館に行っても、まず探すのは、タッテイング(シャトルで編むレース)の古い本か、カリグラフィーに関する本であった。カリグラフィーは、今や日本でも盛んだと聞くが、つまり英習字、能書、書道の一つである。これは大学でもクラスを取り、付けペンと様々なペン先で習った。
 
カリグラフィーには多くの書体スタイルがあり、又英語だけに限らず、ラテン語、ヘブライ語、アラビア語、などと色々あり、それぞれがユニークで美しい。末娘が隣人のイスラエル人家族と共にイスラエルを訪問した折、そのお礼状をヘブライ語で書き、イルミネイション(金・銀・様々な色で彩色すること)を真似て、イスラエル国旗の白と青で彩色したカードを作って、送ったところ大変に喜んでいただけた。英語のカリグラフィーは、すでに40年以上続けているが、クリスマスカードや結婚式の招待状の宛名書きの度に重宝し、時折友人・知人からの頼まれ仕事をしたりする。
 
 
ヘブライ語のイルミネイションのある書式
 
 
書道がどの言語においてでも好きなのだ。仏教徒ではないが、写経という作業も魅力的である。能書の書籍や写真集を見ることも大好きで、25年ほど前に、やはり図書館でSpencerian Script(スペンサーの文字・書式)に気が付いた。

スペンサーリアン・スクリプト(スペンサー式書式)は、1850年から1925年頃に米国で使用された書体で、タイプライターが広く採用される前は、ビジネス通信の標準書体と見なされていた。

アメリカのプラット・ロジャース・スペンサーが1840年に開発した彼の名前が付けられた書式は、さまざまな既存の書式から啓発されてビジネス通信のみならず、私信に優雅さを与え、しかも読みやすさも備えている、楕円形を基本にしたを個性的な書体である。スペンサーは学校で教えていたが、その書体は卒業生によって海外で広められた。スペンサー自身は、その成功を喜ぶことなく1864年に亡くなった。その後彼の息子たちがスペンサーの書式をさらに広める使命を持った。

この使命は、1866年にスペンサーの未発表の本「SpencerianKey to Practical Penmanship」を配布することで果たされた。スペンサー書式は全米で標準となり、タイプライターの人気が広まり、ビジネスの主要な方法として使用されるようになる1920年代までその状態が続いた。

この書体を使ったフォードモーターカンパニーのロゴのテキストは、コカコーラのロゴと同様にスペンサー式書体で書かれている。

小学校では、オースティン・ノーマン・パーマーによって開発されたより単純なパーマー書式法に徐々に置き換えらた。スペンサー式書体から派生した書家の数名はその書体を芸術にまで向上させた。そうした素晴らしい書式やきちんとした文字を書かせるペンマンシップは、とうの昔に小学校のカリキュラムから消えて久しい。

 
 
スペンサー式書式のワークブック

 

 

上記のイラストは、1881年に出版された本「RealPen Work / Self Instructor in Penmanship(Knowles and Maxim、Pittsfield、MA)」に掲載されたインク画である。この本の著作権の日付が1884年である理由は、説明されていない。ある情報筋によると、アーティストは「熟練書家」と言われた共同出版者のアルデン・ノウエルズである。

文字通り「単一のストローク」(一筆絵)で作成されたのかという疑問もあるが、複数のストロークで構成される単一の線の可能性が高くなるという事であろうか。この絵に関しての疑問の理由の1つは、「ボールポイントペンは1889年まで特許出願がなかった」というも事である。別のある参考文献には、「1870年代、L・E・ウォーターマンは、彼を有名にしたペン先へのインクの流れ「3チャンネルフィード」を開発した。これは、書いている時にスムーズで制御されたインクの流れを提供し、ポータブルペンを実用的なものにした。」とある。いずれにせよ、これは素晴らしい芸術作品に違いはない。

 

Knowles and Maxim作品

 


こうした究極の「ワンライナー」(一筆)のような神に触発されたような芸術作品には圧倒される。神は、特に芸術を創造する目的で、この惑星に何人かの人々を配置したのかもしれず、ミケランジェロはそのおそらく最良の例であろう。彼はかつて「天使が大理石の中にいるのを見て、彼を解放するまで彫った」とさえ言った。

 

 


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