スペンサーリアン・スクリプト(スペンサー式書式)は、1850年から1925年頃に米国で使用された書体で、タイプライターが広く採用される前は、ビジネス通信の標準書体と見なされていた。
アメリカのプラット・ロジャース・スペンサーが1840年に開発した彼の名前が付けられた書式は、さまざまな既存の書式から啓発されてビジネス通信のみならず、私信に優雅さを与え、しかも読みやすさも備えている、楕円形を基本にしたを個性的な書体である。スペンサーは学校で教えていたが、その書体は卒業生によって海外で広められた。スペンサー自身は、その成功を喜ぶことなく1864年に亡くなった。その後彼の息子たちがスペンサーの書式をさらに広める使命を持った。
この使命は、1866年にスペンサーの未発表の本「SpencerianKey to Practical Penmanship」を配布することで果たされた。スペンサー書式は全米で標準となり、タイプライターの人気が広まり、ビジネスの主要な方法として使用されるようになる1920年代までその状態が続いた。
この書体を使ったフォードモーターカンパニーのロゴのテキストは、コカコーラのロゴと同様にスペンサー式書体で書かれている。
小学校では、オースティン・ノーマン・パーマーによって開発されたより単純なパーマー書式法に徐々に置き換えらた。スペンサー式書体から派生した書家の数名はその書体を芸術にまで向上させた。そうした素晴らしい書式やきちんとした文字を書かせるペンマンシップは、とうの昔に小学校のカリキュラムから消えて久しい。
上記のイラストは、1881年に出版された本「RealPen Work / Self Instructor in Penmanship(Knowles and Maxim、Pittsfield、MA)」に掲載されたインク画である。この本の著作権の日付が1884年である理由は、説明されていない。ある情報筋によると、アーティストは「熟練書家」と言われた共同出版者のアルデン・ノウエルズである。
文字通り「単一のストローク」(一筆絵)で作成されたのかという疑問もあるが、複数のストロークで構成される単一の線の可能性が高くなるという事であろうか。この絵に関しての疑問の理由の1つは、「ボールポイントペンは1889年まで特許出願がなかった」というも事である。別のある参考文献には、「1870年代、L・E・ウォーターマンは、彼を有名にしたペン先へのインクの流れ「3チャンネルフィード」を開発した。これは、書いている時にスムーズで制御されたインクの流れを提供し、ポータブルペンを実用的なものにした。」とある。いずれにせよ、これは素晴らしい芸術作品に違いはない。
Knowles and Maxim作品
こうした究極の「ワンライナー」(一筆)のような神に触発されたような芸術作品には圧倒される。神は、特に芸術を創造する目的で、この惑星に何人かの人々を配置したのかもしれず、ミケランジェロはそのおそらく最良の例であろう。彼はかつて「天使が大理石の中にいるのを見て、彼を解放するまで彫った」とさえ言った。