ままちゃんのアメリカ

結婚42年目のAZ生まれと東京生まれの空の巣夫婦の思い出/アメリカ事情と家族や社会について。

空よ

2022-07-07 | わたしの好きなもの

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先月北への旅の途中、3万5千フィートの上空で、生まれて初めて経験したことがあった。経験というよりも「見た」と言う方が正しいかもしれない。そのフライトはただの2時間ほどだが、通常通路側の席を取る私は、このフライトでは北に向かって西側の一人席の窓側を全くなんの意図もなく選んだ。

翼の前方だったが視界を遮るものはなく、北部カリフォルニア州からオレゴン州に入ると、機体は増えてきた雲の合間を縫うようにして飛行していた。読んでいた小説に飽いた目を休めようと私は窓外の雲を見遣った。すると左斜め下に、光る輪が見えた。

普通に見られるアーチ型や、二重、三重の虹、彩雲、環水平アーチ(横に一の字のようになっている虹)、ムーンボウ(月虹=げっこう)を見たことはあるが、輪になった虹は初めてだった。もしや、と思ってさらに目を凝らすと、思った通りやはり虹の輪の中に、小さなシルエットがあり、雲が近くなったりするとその輪も中のシルエットも大きくなるのだった。そのシルエットは、私の搭乗機である。

つまりブロッケン現象を見たのである。山上で見かけるブロッケン現象は、登山家には珍しくはないだろうし、飛行機からの現象は、飛行機搭乗員や頻繁な旅客にもさほど珍しいことではないだろう。けれど何十回と搭乗してきて、私が体験したのは、今回が初めてである。見ようと思って見れるものではないし、たとえ気象状態や高度や位置の条件が揃っていたとしても搭乗中居眠っていたり、仕事をしていたり、読書や映画を観て、窓外を忘れていれば、容易に見落とす可能性は大である。

これはウィキからのお手本写真。飛行中の飛行機の機体がシルエットになって虹の輪に投影されている。

これは「ど」のつく素人(わたし)の撮影した現象。エンジン上の小さな白い円は虹の輪でその中に小さな機体が投影されているのがおわかりだろうか。

続けて撮っているうちにこの一枚では機体は大きく投影されている。

 

北紀行ではいつもある航空会社の直行便で朝一番発を利用するが、今回は、座席位置も、時間帯も、気象条件も、太陽の照射条件、そしてなによりも私が気がついたタイミングが偶然にピタリとあっていたのだろう。最初はその偶然に驚き、次に今までこの人生で一度は見てみたいと思っていたことが叶い、笑みが浮かび、「さてこれで次は、オーロラボリアリス(極光)だ!」と独りごちた。

空で見たいことは実際あとそれだけである。UFO(あるいはUAP)さえ、数年前にマウイ島ハレアカラ山中腹にある知人の教授の別荘で目撃したことがある。(おそらく中国製の)宇宙塵が大気圏で燃え始め、中央カリフォルニアの砂漠地帯へと夜空に孤を描いて流れてきて燃え尽きたのも、スエーデンからやってきた次男夫婦を迎えにロサンジェルス空港から帰る夜半、グレイプヴァインを降り切ったフリーウエイの東側で目撃した。

大流星雨も、子供たちと一緒に北カリフォルニアの友人宅の庭のトランポリンの上で夜空を見上げて歓声をあげたことがある。今は亡い弟が自慢の天体望遠鏡で、土星の輪をしっかりと見せてくれた遠い冬の夜もあった。ISS国際宇宙ステイションのほのかな灯りを垣間見たこともある。1997年の大彗星と言われるヘール・ボップ彗星の青白い尾を飽きることなく8ヶ月にわたってほぼ毎晩肉眼で眺めたこともあった。母のお供で行ったオーストラリアで南十字星を見上げ、水が時計回りで排水溝へ流れていくのを見た時同様、ただ単純に喜んだ。

そうなれば、次に見たいのは極光(オーロラ・ボリアリス)である。暑熱よりも寒温を好む私だが、北欧やアラスカ州で極光を拝するには、8月末から4月までの間の極寒の地の雪氷の台地に佇まなければならない。と思ったら、実は去年10月の初め、合衆国のニューハンプシャー州からモンタナ州のグレイシャー国立公園までの広域にわたって極光が観察されたのを知った。

過去日本でも、古くは古事記には620年に「赤気」が見られたことが記されている。赤気とは、低緯度極光のことで、低緯度地帯ではオーロラは赤である。その後も赤気は1770年には北海道から鹿児島まで見られたり、1958年には北海道から広島や山口でも観察されたと記録にある。太陽の活発な活動周期は11年と言われているから、その時とその他の必要条件がそろえば2030年には北海道で見られるかもしれないそうだ。

次なる空への期待は北海道か高緯度の北米48州のどこかで叶えられるかもしれない。そしてブロッケン現象を見たことは、本当に偶然で、意図がなかったので、次なる偶然もワシントン州でさえあるかもしれない。2018年11月にはアラスカのみならず、高緯度の17州(メイン州、ミネソタ州、モンタナ州、ノースダコタ州、北部ニューヨーク州、サウスダコタ州、ウィスコンシン州そしてワシントン州など)で極光が見られたのだ。その次なる機会を心の端に留めて、まずは健康管理から始める準備をしようか。

これは今年2022年2月3日、ケヴィン・ロイランス氏が撮影したワシントン州モーゼス湖でのオーロラ

 

 


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