歴タビ日記~風に吹かれて~

歴タビ、歴史をめぐる旅。旅先で知った、気になる歴史のエピソードを備忘録も兼ね、まとめています。

今よみがえる・・・!?

2023-06-21 09:00:46 | 神奈川県
山田朗(明治大学文学部教授)氏のお話を聞く機会があった。

以前、某旅行社主催のツアーで、先生ご自身から、
資料館やキャンパスに残る戦争遺跡をご案内いただいたが、
これほど身にしみはしなかった・・・

ここで、備忘録として、ちょこっとだけ、まとめておきたい。



明治大学生田キャンパス(川崎市多摩区)内にある、
軍事施設の跡地だ。

ここは、1937(昭和12)年以来、
日本陸軍における<秘密戦>兵器の開発機関だった。

「秘密戦」とは、防諜・諜報・謀略・宣伝活動を指す。
戦争には付きものだが、事柄が事柄なので
歴史の表側には、ほとんど記録されていない。

登戸研究所資料館は、この「秘密戦」に焦点を当てた、
国内唯一の資料館であることが、おそらく最大の特徴だろう。

当時のままの施設を保存・活用し、概要を「実証的かつ視覚的」に
表現している。


また、一般市民によって、この史実が発掘されたことも見逃せない。
以前、訪ねたときは、展示内容に心痛みながらも、
この点に感動すらしている。

というのは、これらの史実は、関係者が長らく口を閉ざし、
ずっと公にならなかったことばかりだからだ。

全ては、ごく普通の高校生が、文化祭の演し物の取材として、
関係者を訪ねたことに始まる。
彼らの若さと「戦争を何も知らないこと」がきっかけとなり、
長年閉じていた、その重い口を開かせ・・・
やがて、それは市民運動へと広がり、
現在の保存・活用につながったという。



本記事で、書き留めたいのは、2点。


まず帝銀事件。
昨年、NHK「松本清張と帝銀事件」でも放送されたが・・・
犯人が使った毒物は、登戸研究所で開発された「青酸ニトリル」の
可能性が高いという。

素人が毒殺を実行すると、致死量以上の毒物を与えてしまう。
スパイは、致死量ギリギリを狙う。
その違いがあるのだそうだ。

帝銀事件では、服毒させられた16人中13人が亡くなっている。
助かった人がいるということは、致死量ギリギリを与えたためで、
体質によっては生存も可能な量とのこと。
素人が、なかなかできることはない。

平沢死刑囚が実行できたのかどうかは、
誰しもが疑問に思うところ・・・
ただいま第20次(?)再審請求中だそうだ。

GHQなども絡む、昭和・戦後史の大きな闇だろう。


もうひとつが、
「く号」兵器と、符牒で呼ばれた電波兵器。

これが陸軍の電波兵器研究の本命だった。
「怪力光線」「怪力電波」と読むが、当時は旧仮名遣いで
「くわいりき」。
それで「く号」と呼んだわけ。
(他には、登戸研究所の有名な「風船爆弾」は「ふ号」兵器となる。)

結局は実用に至らず、後にその技術が「電子レンジ」となったのは
よく知られた話だが・・・

先生によると、最近、防衛予算を見る機会がおありで、
その中に、ドローン兵器対策のための予算があったそうだ。

ドローン兵器とは、つまりはドローンに爆弾を積んだものだろう。
それが、たくさん飛来してきた場合に
打ち落とすとための対策・・・

先生は「蘇る『く号兵器』のようですね」と、苦笑なさる・・・

・・・ドローンで運ばれた爆弾が大量に飛んでくる??
そんなことは考えたこともなかった・・・
でも、現実にその対策費が予算化されていると言うことは・・・

そらおそろしくてならない。



先生のお話から、戦争と平和は表裏一体であること。
戦争が始まってしまえば、大義名分のうえに、人は理性を失い、
手段を選ばなくなってしまうということ、
そんなことを痛感させられる。

登戸研究所に関し、今、身に染みるのは、
以前と比べ、世の中の変化が大きすぎるからだろう。

ウクライナの戦争は言わずもがな、ご近所のお国の動向も焦臭い・・・
一方で、パンデミックでの価値観の違いによる対立も
この数年間、否が応でも、目の当たりにしてきたからだろう。


秋になって、次の企画展が始まる頃、
またゆっくりと「登戸」を訪ねようと思っている。

**************************

おつきあいいただき、どうもありがとうございます。

山田先生のレジュメや、わたしのメモを基に
本記事をまとめましたが、間違いや勘違いは、多々あるかと存じます。
どうぞ、歴史の素人のことと、お許し下さいませ。

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2 コメント

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Unknown (pukutaromama)
2023-06-23 18:20:00
大学時代に国際法のゼミを履修しており、そこでは有事の法律などについても学んでいたのですが(そして今ではすっかり頭から拔けてますが)、尊敬している先生が
『もう前線に出向いて戦う時代ではなくなっている。
操作室でボタンを押して、扉をあけて日常に戻れる戦争がすぐに行われるよ』
という話がすごく印象的でした。大学時代、12.13年前ですがもうその頃にはそういう戦争が一部では起こっていたのでしょうし、現在のウクライナでも実際に起こっていますよね。
なんとも言えない気持ちになるし、本当に恐ろしい時代です。
返信する
pukutaromamaさま (ぴあ野)
2023-06-24 06:05:45
こちらにもコメントをどうもありがとうございます。
学生さんに、そういった話をなさった先生のお気持ちは
いかばかりだったのでしょう。
国際法の先生とのこと、若い世代への想いも並々ならぬものがおありだったのでしょうね。
pukutaromamaさんが尊敬なさる先生ですものね、
良い先生だったのがうかがわれます。

実際、私が子どもの頃、おそらくキューバ危機頃には、
そういった戦いが新しい戦争だろうとは言われていたんですよね。(良心の呵責無く殺戮できる)
それがついに具現化しているのだと、ウクライナでぼんやりと感じは居ました。
さらにドローンとなると・・・
大阪万博で有人飛行をすると聞いてから、
ちょっと怖いなぁと思っていた矢先だったのでなおさらでした。
新しい技術を戦争に転用したくなるのは、
有史以来、ずっと繰り返されてきたことですよね、哀しいですね。
長々と失礼しました。
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